中国弁護士 方 善姫
北京魏啓学法律事務所
北京魏啓学法律事務所
初めに
AI創作技術の発展と普及に伴い、AI生成コンテンツは文学、芸術、ニュースなど多くの分野で広く見られるようになっており、それに関する著作権保護の問題が日増しに顕在化している。しかし、AI創作によって多くのイノベーションと利便性がもたらされる一方で、一連の紛争も引き起こされている。北京インターネット裁判所が2024年に発表した『デジタル著作権司法保護白書』によると、2021年に3.7%であったAIに関連する権利侵害事件の割合は、2023年には28.6%に急激に上昇した。AI創作プロセスの特殊性により、従来の著作権認定基準を直接適用することが困難であるため、実務において多くの論争と不確実性が生じている。本稿は関連する法的理論と司法事例の分析によって、権利者がAIを利用して著作物を創作し、権利を主張する際の証拠保全に関する提案を行い、AI生成コンテンツの著作権立証という難題を解決するために有益な参考を提供することを目的とするものである
I.AI生成コンテンツが著作物に該当するか否かの判断基準
中国『著作権法』によれば、「著作物」とは、文学、芸術と科学分野において独創性を有し、且つ一定の形式により複製可能な知的成果のことをいう。そのうち、著作物のコンテンツは、「文学、芸術及び科学分野」に属するか否か、並びに「複製の可能性」を有するか否かについては、通常その外在的な表現形式から直接判断することができるため、実務において、この2つの要件をめぐる論争は多くない。しかし、著作物のコンテンツが「独創性」を有しているか否か、及び「作者の知的成果」を体現しているか否かを判断する際、特にAI生成コンテンツが著作物に該当するか否かの問題について、従来の著作権事件に比べて、より具体的な判断基準を適用することが必要になることが多い。
1. 独創性を有する
あるコンテンツが著作物に該当するか否かを判断する際、「独創性」の有無は中核的な基準であり、この基準は、コンテンツが人による創作か、又はAIによる生成かによって異なるものではない。AI生成コンテンツが著作権法の意義における著作物に該当するか否かを判断するには、まず客観的な独創性要件を満たしているか否かを検討することが必要である。この前提を満たして初めて、後続の判断に進むことが必要である。次に、AI創作の状況において、独創性の判断は、著作物そのものの独創性だけでなく、より複雑な要素を考慮する必要がある。AI生成プロセスはアルゴリズム、データ、ユーザー介入が融合されているため、多方面の要素を総合的に考慮しなければならない。生成コンテンツ自体の独自性はむろん重要であるが、ユーザーの創作プロセスにおける知的投入も同様にポイントとなる。ユーザーはプロンプトの入力やパラメータの設定などの方法によって、AIを特定のコンテンツ生成に導き、その個性的な選択と創造的な配置が著作物の最終形態と独創性の程度に直接影響を与えるのである。例えば、AI絵画ソフトを使用する際、ユーザーはプロンプトを入念にデザインし、画面要素を詳細に描写するとともに、色彩や光影などのパラメータを繰り返し調整することで、生成画像を徐々に自身のクリエイティブ構想に合致させるのである。このプロセスにおけるユーザーの知的貢献と美的判断によって、最終的に生成された絵画が独創性を有する著作物として認定される可能性がもたらされるのである。
また、AI生成コンテンツが元の画像や動画に対する部分的な色彩や形状の調整だけを行い、元の著作物との実質的な差異が形成されていない場合、その独創性が否定されるだけでなく、元の著作物の権利に対する侵害を構成する可能性があることに留意しなければならない。例えば、(2024)浙01民終10332号事件において、権利者は「被告はAIプラットフォームにおいて、AI生成のウルトラマン画像及び関連LoRAモデルを伝播させ、 ユーザーが当該モデルを共有する際、AI生成のウルトラマン画像を表紙と参考例として使用し、他のユーザーがプロンプトを入力して当該モデルを重ねることによって、ウルトラマンのイメージと実質的に類似している画像を生成したことは、その著作物の情報ネットワーク伝播権を侵害している。」と主張した。裁判所は審理を経て、AIプラットフォームが幇助侵害を構成すると認定した。当該事件は主にプラットフォームの責任をめぐって展開されたが、ユーザーがAI生成プロセスにおいて、創造的な知的労働を投入しても、生成コンテンツが元の著作物と実質的な差異がない場合、その成果の独創性は認められず、ひいては権利侵害に該当するリスクに直面する可能性があることを示唆している。したがって、権利者はAI生成コンテンツに対して著作権を主張する際に、そのコンテンツが先行著作物と実質的に類似しているか否かを慎重に検証しなければならない。
2. 知的成果に属する
一般的な著作権侵害紛争事件において、「主張する者が立証する」という立証責任の分配原則に従い、権利者は、その主張するコンテンツに対して権利を有すること、且つ当該コンテンツが著作権法で定める著作物の要件を満たしていることを証明しなければならない。伝統的な創作シーンでは、作者は通常、紙とペン、カメラ又は一般的な画像処理ソフトウェアを用いて直接創作するため、作者が創造的な知的労働を行ったか否かについて、一般的には特に立証する必要はない。つまり、著作物に独創性さえあれば、その知的投入は通常認められるのである。
しかし、AI創作の背景において、AIが生成プロセスで重要な役割を果たしているにもかかわらず、人間の知的投入は、著作物の属性を認定するポイントになっている。AIは、本質的にツールであり、プリセットアルゴリズムとユーザーコマンドに基づいて、データ処理とコンテンツ生成を行う。創作プロセスにおけるユーザーの構想、創意、選択と判断などの知的活動こそが、著作物に独創性と法的価値があるか否かを決定する核心となるのである。司法実務において、裁判所が、AI生成コンテンツが著作権保護の対象となるか否かを判断する際、通常そのコンテンツが「機械的生成」に属するか、それとも「人」による独創的表現に由来するかを審査する。権利者は、その知的投入について十分な立証ができない場合、立証できないことによる不利な結果の責任を引き受けなければならない。例えば、猫のクリスタルダイヤモンドペンダント画像の著作権侵害事件において、裁判所は「使用者がプロンプトの追加やパラメータの調整などの方法によって、初期に生成された画像を選択、修正、潤色したことを証明することで、画像の構図、視点、色彩、線などの表現要素に対して個性的な選択と実質的に有益なことをしたことを示すために、創作プロセスのオリジナルの記録を提供すべきである。原告である豊氏が創作プロセスに関連するフローチャートなどのオリジナルの記録を提出できなかったため、その知的投入に関する主張は証拠によって裏付けられず、当裁判所は認めることができない。」と指摘した。
したがって、AI生成コンテンツに対して著作権を主張するには、権利者は、独創的な知的成果を投入したことを証明する証拠をさらに提示しなければならない。これは、プロンプト作成に具体的な視覚的、叙述的、構造的要素を組み込んだり、ユーザーが創造的な方向性を提示したりするだけでなく、具体的な表現形式を選択し、プロンプト自体に個性的な表現特性を持たせることを意味する。ユーザーが著作物生成後もプロンプトの修正、パラメータの調整、又は生成コンテンツの編集、合成、仕上げなどの後処理を継続した場合、このようなコンテンツは、著作権法上の著作物に該当すると認定されることで、法的保護を受けられる可能性がより高くなる。
II. AI生成コンテンツに対する著作権に関する立証の提言
前述の通り、権利者がAI生成コンテンツに対して権利を主張する場合、独創性と知的成果の要件に関して説明、立証することが特に重要である。これは、これらの要素が著作権保護を受ける著作物を構成する基礎であるだけでなく、AI創作の状況において、これらの要素の証明がより複雑で難しいからである。独創性の認定においては、AI生成コンテンツ自体が「既存著作物と区別される独自の表現」を具備しているか否かに加え、権利者のその創作に対する考え方、入力コマンドの内容、生成コンテンツの選択及び修正プロセスなどに対して、作者が著作物に投入した独創的な知的労力を効果的に示すことができる。これらの証拠は、裁判所が「AIの自律的創作」という合理的な疑いを排除し、当該著作物が独創性という法定要件を満たすか否かをより正確に認定するために役立つ。したがって、権利者は、AI創作著作物のプロセスに関する証拠を保存することが特に重要である。
しかし、権利者は関連証拠を保存すれば万全というわけではない。証拠保全が遅れるか、又は証拠の内容が「創造的な知的投入」を反映できない場合、その著作権の主張が裁判所に認められないリスクが依然として存在する。また、証拠保全を適時に実施しなかったり、創造的投入を証明する証拠が不十分だったりする場合も、同様に認められないリスクがある。筆者は、裁判例の状況と結びつけて、権利者がAIを利用して創作した著作物の権利を主張する際の証拠保全問題について、以下のように具体的に提案する。
1.証拠保全は迅速且つ完全に-事後描写による独創性の投入プロセスの証明が難しいため
権利者はAIを利用して創作を行う際に、「プロセスに痕跡を残す」という意識を確立し、創作プロセスにおける各重要段階と情報を迅速且つ正確に保存すべきであり、権利者は著作物創作プロセスにおいて、使用するソフトウェアのバージョン、入力した具体的なコマンド、修正プロセス及びステップごとの生成結果を含む各操作を即時に記録しなければならない。これは著作物の独創性、時間性及び権利者の身分を証明するだけでなく、紛争が発生した時に有力な証拠を提示することができ、権利者が自身の合法的権益を守る重要な保障となるからである。
実務において、一部の権利者は、AI生成コンテンツの証拠保全に対する重視が不十分で、著作権を主張する時に創作プロセスの記録を提出しておらず、裁判において「事後再現描写」の方法によって、AI創作プロセスを説明しようとするものの、司法実務において、通常裁判所に認められず、且つ多くの場合、権利者はその主張するオリジナルの著作物を完全に再現できない。例えば、猫のクリスタルペンダント画像の著作権侵害訴訟事件において、裁判所は以下のように、はっきりと指摘している。「まず、原告は、当該画像のAIソフトウェアにおける創作プロセスの記録を提出しておらず、当該ツールを用いて係争画像を生成した具体的なプロセスを示すことができない。創作プロセスの記録は、作者が著作物生成時に投入した知的労力と創造的選択を直観的に示すことができるため、この点は極めて重要である。次に、原告が提出した係争画像における『describe(描写)』コマンド項目の具体的な結果は、AIソフトウェアの描写語の生成機能を用いて事後的に係争画像を描写したものであり、オリジナルのプロンプトや生成コマンドを復元させたものではない。これは、これらの描写は、原告がオリジナルの生成プロセスで入力したコマンド及びプロンプトの内容を説明できず、その創作思考や知的投入を反映できないことを意味する。さらに、原告が提出した「再現描写」の入力状況は、係争画像のオリジナルの生成プロセスを客観的に復元できない。再現の経過からみれば、関連するプロセスは、原告が係争画像を対照にした事後的なシミュレーションに過ぎず、ソフトウェア・ハードウェア設備、ネットワーク環境、入力コマンド、操作手順などの面で、係争画像のオリジナルの生成プロセスとの同一性や比較可能性が不足しており、上記の事後シミュレーション操作から、原告が係争画像のオリジナルの生成プロセスにおいて対応する選択、手配と判断を行い、創造的労働を費やしたと推定することはできない。再現の結果から見ると、事後シミュレーションの結果は、係争画像とスタイル、様式、構図などの面で一定の相違がある。したがって、提出された証拠は、係争画像に独創性があることを認定するには不十分であり、係争画像は著作権法上の意義における著作物に該当せず、原告の訴訟請求は事実及び法的根拠に欠けているため、裁判所はこれを支持しない。」
上記事例から、権利者がAI創作プロセスに対して適時に証拠保全を行っておらず、紛争発生後に「事後描写」によって元の創作プロセスを再現する方法は、本質的にオリジナルの創作プロセスを証明できないことが分かる。AIの生成メカニズムには明らかな「非確定性」を有するからである。同一のプロンプトでも、異なる時間、異なるソフト・ハード環境(AIモデルのバージョン更新、デバイスの演算能力の差異など)、ひいては異なるネットワーク状態下では、生成結果に明らかな差異が生じる可能性がある。これは、従来の創作における「作者が同一のツール、同一の手順で著作物を安定的に再現できる」という特性とは根本的に異なり、事後再現によって技術的観点からオリジナルの著作物を復元することは困難である。
また、事後再現は本質的に「逆算的シミュレーション」に属し、権利者は既存の完成品に基づいて描写コンテンツを調整する傾向があるため、その提出される「再現コマンド」は、オリジナルの創作時のランダム性や創造性を失い、完成品の「文字通りの複製」に近く、真の創作思考を反映させたものではない。
証拠効力の観点から見ると、このような事後証拠は「オリジナル性」と「関連性」に欠けており、著作物生成時の知的投入プロセスを証明する完全な証拠チェーンを形成できないため、裁判所にその証明効力を認められるのは難しい。これは創作プロセスにおけるリアルタイムの痕跡の記録と証拠保全に代わるものはないことを示しており、操作発生時に同時に記録を行うことでしか、創作の真実性と完全性を最大限に保持することはできない。
2. AI創作プロセスにおける作者の独創的な知的投入の反映
著作物の独創性を証明する観点から、詳細且つ正確な証拠は「プロセスを完全に記録する」だけでなく、「知的投入を際立たせる」ことが必要である。すなわち、AI創作プロセスにおいて、権利者の独立した思考、個性的な選択によって、著作物の最終的な表現がどのように導かれるかということが、証拠によって明確に示されるのである。例えば、AI絵画創作において、入力したプロンプト、設定したパラメータ及び複数回の修正調整の記録を保存することで、これらの証拠は、権利者の独自の構想と個性的な操作によって、独特なスタイルと表現を有する著作物をAIに生成させるように直観的に反映させることができる。簡単で概括的なプロンプトのみでAIをトリガしてコンテンツを生成した場合、著作物の具体的表現をデザインしたものではなく、本質的に「創作テーマ」を提供したに過ぎないため、実務において、通常、このようなコンテンツは、著作権法で保護される著作物とは認められない。例えば、桂林市疊彩区裁判所が審理した事件において、裁判所は、「係争画像はAIソフトの自律的な生成によるもので、使用者は概括的なプロンプトを入力しただけである。使用者が入力したプロンプト『二十四節気の大雪がタイトルであり、この節気は“小雪に野菜を漬け、大雪に肉を漬ける”という諺であり、各家庭で塩漬け肉を作る』は、主題概念を提供しているだけで、物品の具体的な形態、色の組み合わせ、空間の配置、光影効果などの画像の実質的な表現の詳細などのような、画像内で識別できる独創的な視覚的要素を直接的、具体的にデザイン又は創作していない。」と「概括的なプロンプト」に基づく著作権主張をはっきりと否定した。
本事件において、裁判所はさらに、「本件において、使用者がプロンプトの構想に投入した労力は、AIソフトウェアの操作と利用、及び出力効果の選別に近いものである。このような投入は、使用者の思考を反映することはできるものの、その核心的な役割は、画像の具体的な表現を自ら『創作』したり、『描画』したりするのではなく、AI自動生成メカニズムを起動したり、導いたりすることであり、生成されたコンテンツに対して実質的で、識別可能な創造的な判断、選択又は編成を行っていない。使用者が上記プロンプトを入力する行為は、著作権法で保護される『表現の創作』ではなく、『コマンド的操作』に該当する。また、AI画像生成プロセスは『ランダム性』を有し、同一プロンプトで毎回異なる画像が生成されることによって、使用者の最終的な表現に対する制御が不足しており、独創的な知的投入を体現しにくいことが示されている。」と指摘している。
上記事例と対照的に、(2023)京0491民初11279号事件において、裁判所は、権利者の著作権の主張を支持した。その主な理由は、証拠が「独創的な知的投入」を十分に示していることにあった。裁判所は審理を経て、「係争画像の生成プロセスから見れば、一方では、原告が人物及びその表現方法などの画面要素をプロンプトによってデザインし、画面のレイアウトや構図などをパラメータによって設定することで、原告の選択と配置が反映されている。もう一方では、原告は、プロンプトを入力し、関連パラメータを設定することで、最初の画像を取得してから、さらにプロンプトを追加し、パラメータを修正することによって、継続的に調整・修正を重ねた上で、最終的に係争画像を得た。この調整・修正プロセスは原告の美的選択と個性的な判断を体現している。法廷審理において、原告は、個別のプロンプトを変更したり、個別のパラメータを変更したりすることで、異なる画像を生成した。そのため、当該モデルを利用して創作を行い、異なる人が各自で新たなプロンプトを入力し、新たなパラメータを設定することで、異なるコンテンツが生成されていることが分かる。したがって、係争画像は『機械的な知的成果物』ではない。反証がない限り、係争画像は原告が独自に完成させたものであり、原告の個性的な表現を体現しており、『独創性』の要件を満たしていると認定できる。」と判定した。
上記の2つの事例の対比によって、著作物の独創性を証明するために、権利者は、AI創作プロセスにおいて、単なる「コマンド的操作」を行うのではなく、「実質的な知的投入」を体現しなければならないことが明らかにされている。簡単なプロンプトではユーザーは、著作物のコンテンツに対して実質的な介入を行うことはできず、AIが出力するコンテンツは、本質的にAIによる「テーマ概念」の自律的演繹であり、ユーザーはこのような「演繹結果」に対して作者の身分を主張できない。つまり、異なるAIシステムは、同一のプロンプトに基づいて異なる画面を出力でき、同一のAIシステムであっても、同一のプロンプトから無数のバージョンを生成し得る。単にテーマを入力することだけで、著作権の属性を有すると認定すると、「独創性」基準が過度に低下し、ひいては「同一テーマにおいて複数のユーザーが著作権を主張する」という混乱を招く恐れがある。したがって、権利者がAI生成コンテンツに対して著作権を主張する際には、「創造的な知的投入」の証明に立証の重点を置くべきである。例えば、生成されたコンテンツを詳細に修正、選択することで、個人の創意や審美を著作物に反映させることができる。また、特定のコマンドを選択したり、要素を修正したりする理由のような創作プロセスにおける思考や意思決定を記録することで、著作物の独創性が権利者の知的投入に由来することをより強力に立証できるのである。
3. 信頼性の高い証拠保全手段の採用
『最高裁判所によるインターネット裁判所の事件審理に係る若干の問題に関する規定』第11条は、電子証拠の認定基準を以下のように明確に規定している。権利者は証拠を保存する際に、「スクリーンショット、文書をローカルに保存する」などの改ざんされやすい方法に依存するだけでなく、法定基準に適合した信頼性の高い証拠保全手段を採用することで、証拠の真実性、完全性及び採用可能性を確保すべきである。実務において、ブロックチェーン技術と第三者証拠保全プラットフォームは、司法で認められている比較的成熟した方法であり、電子証拠の「改ざんされやすく、出所が追跡しにくい」という問題を効果的に解決できる。
具体的には、権利者は創作プロセスにおいて、定期的に創作データと操作記録をブロックチェーン又は第三者証拠保全プラットフォームにアップロードできる。これらのプラットフォームは、タイムスタンプとデジタル署名を提供することで、データの完全性と真実性を保証できる。紛争発生時には、権利者はこれらのプラットフォームが提供する証拠によって、その創作プロセスと知的投入を証明することで、より効果的に権利を保護できる。創作者はAIソフトウェアを利用して創作する時、プラットフォームは、コマンドの入力、パラメータの調整、生成結果の選択などのステップを含む創作者の操作プロセスをリアルタイムに録画し、且つこれらの動画と関連データを暗号化保存する。録画プロセスでは、プラットフォームは法律規定を厳守し、録画行為の合法性を確保するとともに、録画した動画とデータにタイムスタンプ認証を施すことによって、証拠の真実性と完全性を保証するものである。
第三者証拠保全プラットフォームは専門的な証拠管理、発行サービスも提供している。著作権紛争が発生した場合、プラットフォームは権利者の要求に基づいて、認証された証拠書類と関連証明資料を提供することができる。これらの証拠書類と証明資料は、専門機関の認証を受け、高い法的効力と信頼性を有しており、訴訟において裁判所に認可され、採用してもらうことができる。
4. 著作権登録による権利保護の立証コストの低減
著作権登録の主要な役割は、発行される登録証明書が公的認証効力を有する証拠である点にある。著作権紛争において、登録証明書は、権利者が著作物に対して著作権を有することを直接証明でき、権利者の立証負担を大幅に軽減できる。関連法律の規定及び司法実務によれば、反証がなければ、著作権登録証に記載されている権利者が著作物の著作権者であると推定される。これは、権利者が著作権登録証を提出する時、相手方が権利者の著作権の主張に反論するには、登録証に誤りや虚偽があることを証明するための立証責任を負わなければならないことを意味している。
著作権登録は、著作物の創作時期と権利者情報を明確にすることもできる。著作権紛争において、創作時期は重要なポイントであり、著作物の独創性や先行権利の有無などの判断について極めて重要である。著作権登録によって、著作物の創作時期が登録証書に明確に記録されることで、権利者が権利保護を行う際に正確な時間的根拠を供するものである。
また、著作権登録機関は、AI創作プロセスを審査しないため、著作権登録証は著作権を証明する初歩的な証拠に過ぎないことに注意しなければならない。さらに「作者の独創的な知的投入の詳細」に関する証拠と組み合わせて、完全な証拠体系を構築することで、著作物の独創性と権利者の創作貢献をより全面的且つ強力に立証することができる。
III. 結び
このように、権利者はAIを利用して著作物を創作し、且つ権利を主張する際、証拠の保全を重要視しなければならない。創作プロセスのタイムリーな記録、独創的な知的投入の反映、信頼性の高い証拠保全手段の採用及び著作権登録の実施などの措置によって、権利者は権利保護の立証コストを効果的に低減させ、自身の合法的権益をより良く守ることができるのである。
I.AI生成コンテンツが著作物に該当するか否かの判断基準
中国『著作権法』によれば、「著作物」とは、文学、芸術と科学分野において独創性を有し、且つ一定の形式により複製可能な知的成果のことをいう。そのうち、著作物のコンテンツは、「文学、芸術及び科学分野」に属するか否か、並びに「複製の可能性」を有するか否かについては、通常その外在的な表現形式から直接判断することができるため、実務において、この2つの要件をめぐる論争は多くない。しかし、著作物のコンテンツが「独創性」を有しているか否か、及び「作者の知的成果」を体現しているか否かを判断する際、特にAI生成コンテンツが著作物に該当するか否かの問題について、従来の著作権事件に比べて、より具体的な判断基準を適用することが必要になることが多い。
1. 独創性を有する
あるコンテンツが著作物に該当するか否かを判断する際、「独創性」の有無は中核的な基準であり、この基準は、コンテンツが人による創作か、又はAIによる生成かによって異なるものではない。AI生成コンテンツが著作権法の意義における著作物に該当するか否かを判断するには、まず客観的な独創性要件を満たしているか否かを検討することが必要である。この前提を満たして初めて、後続の判断に進むことが必要である。次に、AI創作の状況において、独創性の判断は、著作物そのものの独創性だけでなく、より複雑な要素を考慮する必要がある。AI生成プロセスはアルゴリズム、データ、ユーザー介入が融合されているため、多方面の要素を総合的に考慮しなければならない。生成コンテンツ自体の独自性はむろん重要であるが、ユーザーの創作プロセスにおける知的投入も同様にポイントとなる。ユーザーはプロンプトの入力やパラメータの設定などの方法によって、AIを特定のコンテンツ生成に導き、その個性的な選択と創造的な配置が著作物の最終形態と独創性の程度に直接影響を与えるのである。例えば、AI絵画ソフトを使用する際、ユーザーはプロンプトを入念にデザインし、画面要素を詳細に描写するとともに、色彩や光影などのパラメータを繰り返し調整することで、生成画像を徐々に自身のクリエイティブ構想に合致させるのである。このプロセスにおけるユーザーの知的貢献と美的判断によって、最終的に生成された絵画が独創性を有する著作物として認定される可能性がもたらされるのである。
また、AI生成コンテンツが元の画像や動画に対する部分的な色彩や形状の調整だけを行い、元の著作物との実質的な差異が形成されていない場合、その独創性が否定されるだけでなく、元の著作物の権利に対する侵害を構成する可能性があることに留意しなければならない。例えば、(2024)浙01民終10332号事件において、権利者は「被告はAIプラットフォームにおいて、AI生成のウルトラマン画像及び関連LoRAモデルを伝播させ、 ユーザーが当該モデルを共有する際、AI生成のウルトラマン画像を表紙と参考例として使用し、他のユーザーがプロンプトを入力して当該モデルを重ねることによって、ウルトラマンのイメージと実質的に類似している画像を生成したことは、その著作物の情報ネットワーク伝播権を侵害している。」と主張した。裁判所は審理を経て、AIプラットフォームが幇助侵害を構成すると認定した。当該事件は主にプラットフォームの責任をめぐって展開されたが、ユーザーがAI生成プロセスにおいて、創造的な知的労働を投入しても、生成コンテンツが元の著作物と実質的な差異がない場合、その成果の独創性は認められず、ひいては権利侵害に該当するリスクに直面する可能性があることを示唆している。したがって、権利者はAI生成コンテンツに対して著作権を主張する際に、そのコンテンツが先行著作物と実質的に類似しているか否かを慎重に検証しなければならない。
2. 知的成果に属する
一般的な著作権侵害紛争事件において、「主張する者が立証する」という立証責任の分配原則に従い、権利者は、その主張するコンテンツに対して権利を有すること、且つ当該コンテンツが著作権法で定める著作物の要件を満たしていることを証明しなければならない。伝統的な創作シーンでは、作者は通常、紙とペン、カメラ又は一般的な画像処理ソフトウェアを用いて直接創作するため、作者が創造的な知的労働を行ったか否かについて、一般的には特に立証する必要はない。つまり、著作物に独創性さえあれば、その知的投入は通常認められるのである。
しかし、AI創作の背景において、AIが生成プロセスで重要な役割を果たしているにもかかわらず、人間の知的投入は、著作物の属性を認定するポイントになっている。AIは、本質的にツールであり、プリセットアルゴリズムとユーザーコマンドに基づいて、データ処理とコンテンツ生成を行う。創作プロセスにおけるユーザーの構想、創意、選択と判断などの知的活動こそが、著作物に独創性と法的価値があるか否かを決定する核心となるのである。司法実務において、裁判所が、AI生成コンテンツが著作権保護の対象となるか否かを判断する際、通常そのコンテンツが「機械的生成」に属するか、それとも「人」による独創的表現に由来するかを審査する。権利者は、その知的投入について十分な立証ができない場合、立証できないことによる不利な結果の責任を引き受けなければならない。例えば、猫のクリスタルダイヤモンドペンダント画像の著作権侵害事件において、裁判所は「使用者がプロンプトの追加やパラメータの調整などの方法によって、初期に生成された画像を選択、修正、潤色したことを証明することで、画像の構図、視点、色彩、線などの表現要素に対して個性的な選択と実質的に有益なことをしたことを示すために、創作プロセスのオリジナルの記録を提供すべきである。原告である豊氏が創作プロセスに関連するフローチャートなどのオリジナルの記録を提出できなかったため、その知的投入に関する主張は証拠によって裏付けられず、当裁判所は認めることができない。」と指摘した。
したがって、AI生成コンテンツに対して著作権を主張するには、権利者は、独創的な知的成果を投入したことを証明する証拠をさらに提示しなければならない。これは、プロンプト作成に具体的な視覚的、叙述的、構造的要素を組み込んだり、ユーザーが創造的な方向性を提示したりするだけでなく、具体的な表現形式を選択し、プロンプト自体に個性的な表現特性を持たせることを意味する。ユーザーが著作物生成後もプロンプトの修正、パラメータの調整、又は生成コンテンツの編集、合成、仕上げなどの後処理を継続した場合、このようなコンテンツは、著作権法上の著作物に該当すると認定されることで、法的保護を受けられる可能性がより高くなる。
II. AI生成コンテンツに対する著作権に関する立証の提言
前述の通り、権利者がAI生成コンテンツに対して権利を主張する場合、独創性と知的成果の要件に関して説明、立証することが特に重要である。これは、これらの要素が著作権保護を受ける著作物を構成する基礎であるだけでなく、AI創作の状況において、これらの要素の証明がより複雑で難しいからである。独創性の認定においては、AI生成コンテンツ自体が「既存著作物と区別される独自の表現」を具備しているか否かに加え、権利者のその創作に対する考え方、入力コマンドの内容、生成コンテンツの選択及び修正プロセスなどに対して、作者が著作物に投入した独創的な知的労力を効果的に示すことができる。これらの証拠は、裁判所が「AIの自律的創作」という合理的な疑いを排除し、当該著作物が独創性という法定要件を満たすか否かをより正確に認定するために役立つ。したがって、権利者は、AI創作著作物のプロセスに関する証拠を保存することが特に重要である。
しかし、権利者は関連証拠を保存すれば万全というわけではない。証拠保全が遅れるか、又は証拠の内容が「創造的な知的投入」を反映できない場合、その著作権の主張が裁判所に認められないリスクが依然として存在する。また、証拠保全を適時に実施しなかったり、創造的投入を証明する証拠が不十分だったりする場合も、同様に認められないリスクがある。筆者は、裁判例の状況と結びつけて、権利者がAIを利用して創作した著作物の権利を主張する際の証拠保全問題について、以下のように具体的に提案する。
1.証拠保全は迅速且つ完全に-事後描写による独創性の投入プロセスの証明が難しいため
権利者はAIを利用して創作を行う際に、「プロセスに痕跡を残す」という意識を確立し、創作プロセスにおける各重要段階と情報を迅速且つ正確に保存すべきであり、権利者は著作物創作プロセスにおいて、使用するソフトウェアのバージョン、入力した具体的なコマンド、修正プロセス及びステップごとの生成結果を含む各操作を即時に記録しなければならない。これは著作物の独創性、時間性及び権利者の身分を証明するだけでなく、紛争が発生した時に有力な証拠を提示することができ、権利者が自身の合法的権益を守る重要な保障となるからである。
実務において、一部の権利者は、AI生成コンテンツの証拠保全に対する重視が不十分で、著作権を主張する時に創作プロセスの記録を提出しておらず、裁判において「事後再現描写」の方法によって、AI創作プロセスを説明しようとするものの、司法実務において、通常裁判所に認められず、且つ多くの場合、権利者はその主張するオリジナルの著作物を完全に再現できない。例えば、猫のクリスタルペンダント画像の著作権侵害訴訟事件において、裁判所は以下のように、はっきりと指摘している。「まず、原告は、当該画像のAIソフトウェアにおける創作プロセスの記録を提出しておらず、当該ツールを用いて係争画像を生成した具体的なプロセスを示すことができない。創作プロセスの記録は、作者が著作物生成時に投入した知的労力と創造的選択を直観的に示すことができるため、この点は極めて重要である。次に、原告が提出した係争画像における『describe(描写)』コマンド項目の具体的な結果は、AIソフトウェアの描写語の生成機能を用いて事後的に係争画像を描写したものであり、オリジナルのプロンプトや生成コマンドを復元させたものではない。これは、これらの描写は、原告がオリジナルの生成プロセスで入力したコマンド及びプロンプトの内容を説明できず、その創作思考や知的投入を反映できないことを意味する。さらに、原告が提出した「再現描写」の入力状況は、係争画像のオリジナルの生成プロセスを客観的に復元できない。再現の経過からみれば、関連するプロセスは、原告が係争画像を対照にした事後的なシミュレーションに過ぎず、ソフトウェア・ハードウェア設備、ネットワーク環境、入力コマンド、操作手順などの面で、係争画像のオリジナルの生成プロセスとの同一性や比較可能性が不足しており、上記の事後シミュレーション操作から、原告が係争画像のオリジナルの生成プロセスにおいて対応する選択、手配と判断を行い、創造的労働を費やしたと推定することはできない。再現の結果から見ると、事後シミュレーションの結果は、係争画像とスタイル、様式、構図などの面で一定の相違がある。したがって、提出された証拠は、係争画像に独創性があることを認定するには不十分であり、係争画像は著作権法上の意義における著作物に該当せず、原告の訴訟請求は事実及び法的根拠に欠けているため、裁判所はこれを支持しない。」
上記事例から、権利者がAI創作プロセスに対して適時に証拠保全を行っておらず、紛争発生後に「事後描写」によって元の創作プロセスを再現する方法は、本質的にオリジナルの創作プロセスを証明できないことが分かる。AIの生成メカニズムには明らかな「非確定性」を有するからである。同一のプロンプトでも、異なる時間、異なるソフト・ハード環境(AIモデルのバージョン更新、デバイスの演算能力の差異など)、ひいては異なるネットワーク状態下では、生成結果に明らかな差異が生じる可能性がある。これは、従来の創作における「作者が同一のツール、同一の手順で著作物を安定的に再現できる」という特性とは根本的に異なり、事後再現によって技術的観点からオリジナルの著作物を復元することは困難である。
また、事後再現は本質的に「逆算的シミュレーション」に属し、権利者は既存の完成品に基づいて描写コンテンツを調整する傾向があるため、その提出される「再現コマンド」は、オリジナルの創作時のランダム性や創造性を失い、完成品の「文字通りの複製」に近く、真の創作思考を反映させたものではない。
証拠効力の観点から見ると、このような事後証拠は「オリジナル性」と「関連性」に欠けており、著作物生成時の知的投入プロセスを証明する完全な証拠チェーンを形成できないため、裁判所にその証明効力を認められるのは難しい。これは創作プロセスにおけるリアルタイムの痕跡の記録と証拠保全に代わるものはないことを示しており、操作発生時に同時に記録を行うことでしか、創作の真実性と完全性を最大限に保持することはできない。
2. AI創作プロセスにおける作者の独創的な知的投入の反映
著作物の独創性を証明する観点から、詳細且つ正確な証拠は「プロセスを完全に記録する」だけでなく、「知的投入を際立たせる」ことが必要である。すなわち、AI創作プロセスにおいて、権利者の独立した思考、個性的な選択によって、著作物の最終的な表現がどのように導かれるかということが、証拠によって明確に示されるのである。例えば、AI絵画創作において、入力したプロンプト、設定したパラメータ及び複数回の修正調整の記録を保存することで、これらの証拠は、権利者の独自の構想と個性的な操作によって、独特なスタイルと表現を有する著作物をAIに生成させるように直観的に反映させることができる。簡単で概括的なプロンプトのみでAIをトリガしてコンテンツを生成した場合、著作物の具体的表現をデザインしたものではなく、本質的に「創作テーマ」を提供したに過ぎないため、実務において、通常、このようなコンテンツは、著作権法で保護される著作物とは認められない。例えば、桂林市疊彩区裁判所が審理した事件において、裁判所は、「係争画像はAIソフトの自律的な生成によるもので、使用者は概括的なプロンプトを入力しただけである。使用者が入力したプロンプト『二十四節気の大雪がタイトルであり、この節気は“小雪に野菜を漬け、大雪に肉を漬ける”という諺であり、各家庭で塩漬け肉を作る』は、主題概念を提供しているだけで、物品の具体的な形態、色の組み合わせ、空間の配置、光影効果などの画像の実質的な表現の詳細などのような、画像内で識別できる独創的な視覚的要素を直接的、具体的にデザイン又は創作していない。」と「概括的なプロンプト」に基づく著作権主張をはっきりと否定した。
本事件において、裁判所はさらに、「本件において、使用者がプロンプトの構想に投入した労力は、AIソフトウェアの操作と利用、及び出力効果の選別に近いものである。このような投入は、使用者の思考を反映することはできるものの、その核心的な役割は、画像の具体的な表現を自ら『創作』したり、『描画』したりするのではなく、AI自動生成メカニズムを起動したり、導いたりすることであり、生成されたコンテンツに対して実質的で、識別可能な創造的な判断、選択又は編成を行っていない。使用者が上記プロンプトを入力する行為は、著作権法で保護される『表現の創作』ではなく、『コマンド的操作』に該当する。また、AI画像生成プロセスは『ランダム性』を有し、同一プロンプトで毎回異なる画像が生成されることによって、使用者の最終的な表現に対する制御が不足しており、独創的な知的投入を体現しにくいことが示されている。」と指摘している。
上記事例と対照的に、(2023)京0491民初11279号事件において、裁判所は、権利者の著作権の主張を支持した。その主な理由は、証拠が「独創的な知的投入」を十分に示していることにあった。裁判所は審理を経て、「係争画像の生成プロセスから見れば、一方では、原告が人物及びその表現方法などの画面要素をプロンプトによってデザインし、画面のレイアウトや構図などをパラメータによって設定することで、原告の選択と配置が反映されている。もう一方では、原告は、プロンプトを入力し、関連パラメータを設定することで、最初の画像を取得してから、さらにプロンプトを追加し、パラメータを修正することによって、継続的に調整・修正を重ねた上で、最終的に係争画像を得た。この調整・修正プロセスは原告の美的選択と個性的な判断を体現している。法廷審理において、原告は、個別のプロンプトを変更したり、個別のパラメータを変更したりすることで、異なる画像を生成した。そのため、当該モデルを利用して創作を行い、異なる人が各自で新たなプロンプトを入力し、新たなパラメータを設定することで、異なるコンテンツが生成されていることが分かる。したがって、係争画像は『機械的な知的成果物』ではない。反証がない限り、係争画像は原告が独自に完成させたものであり、原告の個性的な表現を体現しており、『独創性』の要件を満たしていると認定できる。」と判定した。
上記の2つの事例の対比によって、著作物の独創性を証明するために、権利者は、AI創作プロセスにおいて、単なる「コマンド的操作」を行うのではなく、「実質的な知的投入」を体現しなければならないことが明らかにされている。簡単なプロンプトではユーザーは、著作物のコンテンツに対して実質的な介入を行うことはできず、AIが出力するコンテンツは、本質的にAIによる「テーマ概念」の自律的演繹であり、ユーザーはこのような「演繹結果」に対して作者の身分を主張できない。つまり、異なるAIシステムは、同一のプロンプトに基づいて異なる画面を出力でき、同一のAIシステムであっても、同一のプロンプトから無数のバージョンを生成し得る。単にテーマを入力することだけで、著作権の属性を有すると認定すると、「独創性」基準が過度に低下し、ひいては「同一テーマにおいて複数のユーザーが著作権を主張する」という混乱を招く恐れがある。したがって、権利者がAI生成コンテンツに対して著作権を主張する際には、「創造的な知的投入」の証明に立証の重点を置くべきである。例えば、生成されたコンテンツを詳細に修正、選択することで、個人の創意や審美を著作物に反映させることができる。また、特定のコマンドを選択したり、要素を修正したりする理由のような創作プロセスにおける思考や意思決定を記録することで、著作物の独創性が権利者の知的投入に由来することをより強力に立証できるのである。
3. 信頼性の高い証拠保全手段の採用
『最高裁判所によるインターネット裁判所の事件審理に係る若干の問題に関する規定』第11条は、電子証拠の認定基準を以下のように明確に規定している。権利者は証拠を保存する際に、「スクリーンショット、文書をローカルに保存する」などの改ざんされやすい方法に依存するだけでなく、法定基準に適合した信頼性の高い証拠保全手段を採用することで、証拠の真実性、完全性及び採用可能性を確保すべきである。実務において、ブロックチェーン技術と第三者証拠保全プラットフォームは、司法で認められている比較的成熟した方法であり、電子証拠の「改ざんされやすく、出所が追跡しにくい」という問題を効果的に解決できる。
具体的には、権利者は創作プロセスにおいて、定期的に創作データと操作記録をブロックチェーン又は第三者証拠保全プラットフォームにアップロードできる。これらのプラットフォームは、タイムスタンプとデジタル署名を提供することで、データの完全性と真実性を保証できる。紛争発生時には、権利者はこれらのプラットフォームが提供する証拠によって、その創作プロセスと知的投入を証明することで、より効果的に権利を保護できる。創作者はAIソフトウェアを利用して創作する時、プラットフォームは、コマンドの入力、パラメータの調整、生成結果の選択などのステップを含む創作者の操作プロセスをリアルタイムに録画し、且つこれらの動画と関連データを暗号化保存する。録画プロセスでは、プラットフォームは法律規定を厳守し、録画行為の合法性を確保するとともに、録画した動画とデータにタイムスタンプ認証を施すことによって、証拠の真実性と完全性を保証するものである。
第三者証拠保全プラットフォームは専門的な証拠管理、発行サービスも提供している。著作権紛争が発生した場合、プラットフォームは権利者の要求に基づいて、認証された証拠書類と関連証明資料を提供することができる。これらの証拠書類と証明資料は、専門機関の認証を受け、高い法的効力と信頼性を有しており、訴訟において裁判所に認可され、採用してもらうことができる。
4. 著作権登録による権利保護の立証コストの低減
著作権登録の主要な役割は、発行される登録証明書が公的認証効力を有する証拠である点にある。著作権紛争において、登録証明書は、権利者が著作物に対して著作権を有することを直接証明でき、権利者の立証負担を大幅に軽減できる。関連法律の規定及び司法実務によれば、反証がなければ、著作権登録証に記載されている権利者が著作物の著作権者であると推定される。これは、権利者が著作権登録証を提出する時、相手方が権利者の著作権の主張に反論するには、登録証に誤りや虚偽があることを証明するための立証責任を負わなければならないことを意味している。
著作権登録は、著作物の創作時期と権利者情報を明確にすることもできる。著作権紛争において、創作時期は重要なポイントであり、著作物の独創性や先行権利の有無などの判断について極めて重要である。著作権登録によって、著作物の創作時期が登録証書に明確に記録されることで、権利者が権利保護を行う際に正確な時間的根拠を供するものである。
また、著作権登録機関は、AI創作プロセスを審査しないため、著作権登録証は著作権を証明する初歩的な証拠に過ぎないことに注意しなければならない。さらに「作者の独創的な知的投入の詳細」に関する証拠と組み合わせて、完全な証拠体系を構築することで、著作物の独創性と権利者の創作貢献をより全面的且つ強力に立証することができる。
III. 結び
このように、権利者はAIを利用して著作物を創作し、且つ権利を主張する際、証拠の保全を重要視しなければならない。創作プロセスのタイムリーな記録、独創的な知的投入の反映、信頼性の高い証拠保全手段の採用及び著作権登録の実施などの措置によって、権利者は権利保護の立証コストを効果的に低減させ、自身の合法的権益をより良く守ることができるのである。

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