中国弁護士 陳 傑
北京魏啓学法律事務所
 
はじめに
 
中国における特許の侵害認定は、従来から「オール・エレメント・ルール」の司法理念に厳格に従っており、被疑侵害発明が特許請求の範囲に記載された全ての技術的特徴を完全に再現して初めて、侵害が成立すると認められる。しかし、現在、産業分業が細分化かつ専門化するに伴い、製品構造を分解して、部品ごとに供給することは、製造業の発展を支える一般的なビジネスモデルとなっている。このような背景において、権利侵害の発生源や主導者は、必ずしも最終製品の製造業者とは限らず、むしろ特許のコア部品の専門メーカーである場合も少なくない。幇助型の特許間接侵害制度は、まさにこのような新たな産業チェーン型の分業モデルの権利侵害形態に対応するために、司法が用意した重要な法的ツールであり、従来の特許保護体系の不備を補完し、特許権に対してより包括的な保護を実現する点に制度的な価値を見出すことができる。

『特許権侵害紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高裁判所の解釈(二)』第21条によれば、幇助侵害の成立には以下の3つの要件を同時に満たすことが求められる。①行為者が提供する関連製品は、特許の実施に専ら用いられる材料、設備、部品などであり、他に実質的な非侵害用途を有しないこと。②行為者は、他人が当該専用品を利用して特許権侵害行為を実施することを明らかに知っていること。③他人によって実際に特許の直接侵害行為が実施されていること。司法実務において、間接侵害事件は、上記3つの要件について立証及び説明が必要となるため、一般的な特許権侵害事件と比較して極めて複雑になり、間接侵害の成立認定のハードルも相対的に高いため、権利者の中には提訴を断念するものも少なくない。

最高裁判所知的財産法廷が2025年に結審したクラッチ発明特許権侵害事件(二審案件番号:(2025)最高法知民終570号)は、典型的な幇助型の間接侵害事件である。本件において、係争特許は自動車用クラッチアセンブリに関するものであり、部品Aと部品Bによって構成されていた。被告1は部品A(被疑侵害品)のみを製造しており、部品Bは製造していなかった。市場において、被疑侵害品と適合するのは、権利者が製造している部品Bしかなかった。被告1が製造した被疑侵害品と、権利者が製造した部品Bとを組み合わせた部品アセンブリは、本件特許の保護範囲に属していた。弊所は本件において、権利者の代理人として、事件の全過程に関与し、被告による専用部品Aの製造販売行為は特許権侵害を幇助する行為に該当すると主張した。一審と二審裁判所はいずれも弊所の主張を認め、権利侵害が成立すると認定した。さらに、二審裁判所である最高裁判所は、本件を同裁判所知的財産法廷の2025年度裁判要旨に選出し、本件の裁判ルールは、同種の部品に関する特許権侵害、幇助侵害の認定に関する事件の審理において、重要な参考及び指導的価値を有すると位置付けられた。本稿は、当該事件を分析対象として取り上げ、法律規定、司法政策及び関連判例を踏まえつつ、幇助侵害の成立要件に関する司法認定基準を掘り下げて検討することにより、権利者の特許権利行使の実務に資する参考を提供することを目的とするものである。
 
要件1.「専用品」の認定基準及びその司法実務
 
1.要件の内容に関する解釈

「専用品」要件は、幇助型の間接侵害の客観的な構成要件に該当するものであり、その核心的な要求は、行為者が提供する部品、中間製品又は原材料が発明を実施するために専ら用いられるものであり、量産かつ商業的な利用のための非侵害用途を有しないことである。この要件の制度的機能は、特許権の保護範囲を合理的に画定し、特許権の不当な範囲拡大による汎用製品の市場における自由な流通を妨げることを防止するとともに、知的財産権の保護と公共利益との関係を調和させることにある。

最高裁判所は、(2021)最高法知民終1258号判決において、「専用品」の認定基準を明確に示し、「一般的に、専用品とは、係争発明の実施に不可欠であり、かつ実質的な非侵害用途を有しないもの、つまり、発明の実施以外のその他の合理的な用途を有しないもののことを言う。」と指摘した。この定義には、専用品の認定について、二段階の判断基準が含まれている。一つ目は、当該製品は汎用品や通常用いられる製品であってはならず、係争特許の発明を実施する目的以外には、経済的又は商業的価値を有する合理的な用途を有しないことが求められる。二つ目は、当該製品は特許の発明の実施に対して、実質的な役割を有するものでなければならず、すなわち、必要不可欠であり、重要な構成要素であることが必要である。この2つの基準が相まって「専用品」の認定基準となっており、そのいずれも欠くことは許されない。

多くの幇助侵害事件において、専用品に該当するか否かは、侵害認定における重要な争点となる。この要件の認定には前述した二段階の判断基準が含まれることを考慮すると、権利者が被疑侵害品について専用品に該当すると主張する場合には、当該侵害品の専用性をこの2つの側面から十分に立証し、説明しなければならない。つまり、一方では、特許請求の範囲及び明細書の記載に基づき、被疑侵害品が特許の技術的解決手段を実現する上において、重要な構成部分であることを説明する必要があり、他方では、被疑侵害品が特許の技術的解決手段を実現する以外に、合理的な用途を有しないことを立証し、説明する必要がある。もちろん、権利者が実質的な非侵害用途がないことは消極的事実であることについて、初歩的な立証・説明をした後に、被疑侵害者がこれを否認する場合、当該被疑侵害者は、他の経済的又はビジネス的な価値を有する合理的な用途が存在することを示す証拠を提出すべきである。

2.クラッチ事件に関する裁判所の認定

クラッチ事件において、弊所は、部品Aが発明の実施に専ら用いられる部品に該当することを主張し、前述した要件に基づき、以下の二点を強調した。まず、係争特許の明細書の記載から分かるように、当該特許が解決しようとする主要な技術的課題及びその解決手段は部品Aに関連しており、部品Aは当該特許の技術的効果を実現するための核心的な部分であって、当該特許の技術的解決手段の実質的な部分を構成していることを指摘した。次に、技術的観点から見ても、部品Aはクラッチアセンブリを構成する部品であり、部品Bと組み合わされてクラッチアセンブリとして使用される以外に、他の合理的な用途がないことを指摘した。被告2(被疑侵害品の販売業者)は、販売に際しても一貫して、このようにセット販売を行っており、当該部品と組み合わせられる他の部品は存在しないことを何度も明らかにした。被告は、被疑侵害品である部品Aが他の製品に組み込まれる可能性を排除できないと主張したものの、その裏付けとなる証拠を全く提出できなかった。このことから、被告は、部品Aの製造・販売に当たり、部品Aに他のビジネス用途が存在することすら考慮していなかったことが分かる上に、被告は、本件においても、部品Aが本件発明を実施する以外の他の用途を有することを示す反証を提出していなかった。したがって、部品Aは、本件発明を実施するための専用品であると認定すべきである。

一審裁判所は弊所の主張を認め、次のように判示した。被告は、被疑侵害品である部品Aが一般的なクラッチアセンブリの構成部品であり、本件特許製品以外の製品に組み込まれ、本件発明の保護範囲に属さないクラッチアセンブリに組み込まれる可能性を排除できないと主張したが、その主張を裏付ける関連証拠を一切提出しなかった。また、提出証拠によれば、被告2が被疑侵害品を販売する際、その担当者は部品Aと原告の部品Bとセットで使用されるものであると供述していたため、反証がない状況下において、一審裁判所は、被疑侵害品は本件発明を実施するための専用品に該当すると認定した。

被告は上訴審においても、他の用途が存在する可能性を排除できないと主張したが、依然として相応する証拠を提出することができなかった。したがって、二審裁判所は、被疑侵害品が一般的な汎用部品ではなく、特許請求の範囲に限定された2つの構成ユニットの1つであり、権利者のクラッチと専らセットで使用される専用部品であると認定した。被告は、被疑侵害品について、権利者のクラッチ製品以外の他のクラッチ製品と組み込まれる可能性があり、他の用途を有していると反論したが、この点について何ら証拠を提出していなかった。したがって、当該上訴主張は認められなかった。
 
要件2.「明らかに知っている」の認定基準
 
1.要件の内容に関する解釈

主観的過失とは、幇助侵害の責任追及の前提であり、行為者が自ら提供する部品が特許侵害に利用されることを明らかに知りながら、なおも当該提供行為を実施することを意味する。この要件も2つの意味合いを含むと言える。まず、自ら提供する製品が専用品であることを明らかに知っていること、次に、当該専用品を利用して行われる行為が他人の特許権を侵害することを明らかに知っていることである。

一般的に、行為者が関連製品に他の用途が存在することを立証できない場合には、通常、当該製品が専用品に該当することについて、行為者は明らかに知っていたものと推定できる。一方、当該専用品を利用して行われる行為が他人の特許権を侵害することを明らかに知っていたか否かについては、行為者は通常、関連技術分野又は関連業界に属していることから、業界においてすでに公開されている特許技術については知っているものと推定できる。もちろん、特許公報によって公開されているというだけで、直ちに他人の特許権を侵害していることを明らかに知っていたと推定すべきではなく、行為者の認知能力、業界の特性、取引関係などの具体的な状況を総合的に判断すべきだとする見解もある。

司法実務において、「明らかに知っている」という要件を満たさないことを理由に、幇助侵害が否定された事例は多くはないものの、権利者としてもこの要件を完全に度外視することはできない。行為者による対外的な宣伝やその内容又は権利者との接触の有無など、できる限り関連する証拠を収集しておくべきである。もし、権利者が行為者に対して侵害警告書を送付していたり、関連する交渉や調停手続きを行っていたりした場合には、相手方が「明らかに知っている」ということをより容易に証明できる。もちろん、警告書の送付は「明らかに知っている」ことを立証するための必要条件でもなければ、必ずしなければならない手続きでもない。
 
2.クラッチ事件に関する裁判所の認定

本クラッチ事件において、弊所は次のように主張した。被告1は自動車部品業に従事する企業であり、設立から比較的長い時間が経過し、一定の規模を有していることから、部品Aの機能について明らかに知っていたと思われる。しかも、当該部品Aが原告の部品Bとセットで使用されているため、意図的に設計・製造されたものであることは明らかであり、製造した部品Aが部品Bとセットでクラッチアセンブリを構成することについて、明らかに知っていたと言える。被告1は部品Bを熟知している以上、そのメーカーである原告会社及び原告の特許製品であるクラッチアセンブリの存在も当然知り得たはずであるにもかかわらず、依然として当該特許製品専用の部品を供給し続けているのであり、主観的に明らかに知っているか、又は当然のこととして知っているはずであったことは自明である。

これに対して、一審裁判所は、次のように判示した。被告1は、自動車部品の取引を行う会社であり、被疑侵害品が本件特許を実施するために用いられる製品であることを知っていたはずである。また、被告2も、被疑侵害品を販売する際に、当該製品が原告の部品Bとセットで使用されるものであることを明らかに知っていたはずである。したがって、両被告はいずれも主観的に明らかに知っていたと認定できる。

二審裁判所も同様に、次のように認定した。被告2は、その販売する被疑侵害品は現在、原告の部品Bとセットで使用されているもので、かつ個々の自動車所有者が自ら組み立てることはできないと述べている。被告1は、自動車部品の製造・販売を専門とする会社であるため、両被告は被疑侵害品が部品Bとセットで使用するために専ら用いられたことを、主観的に明らかに知っていたと言える。

以上のことから、明らかに知っているか否かの判断については、被疑侵害者の専門的バックグラウンド、取引状況及び関連証拠から合理的に推定できることが分かる。本件の証拠面の戦略から見れば、被疑侵害品が原告の部品Bとしかセットで使用されないことに関する販売業者の供述に関する証拠を入手することに成功したことが、裁判所が「明らかに知っている」という要件を認定する上で、極めて大きな役割を果たしたと言える。
 
要件3.直接侵害行為が実際に行われていることを必要とするか
 
1.法解釈上の争点と「従属説・独立説」の対立

この要件は、幇助侵害理論において最も議論が集中する内容であり、特許の間接侵害分野においては、従来から「従属説」と「独立説」の対立が存在してきた。従属説は、特許の間接侵害は直接侵害に従属するものであり、直接侵害の存在を前提とするというものである。これに対して独立説は、特許の間接侵害は直接侵害とは別の独立した侵害類型であり、直接侵害の成立を要件としないとするものである。さらに、「折衷説」と呼ばれる立場も提起されており、この立場によれば、通常は直接侵害の成立を前提とすべきであるが、特定の条件下においては間接侵害者の責任を直接追及し得るとするものである。

特許の幇助侵害に関する法的根拠である『特許権侵害紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高裁判所の解釈(二)』は、その条文の文言において「従属説」に立つ傾向があり、幇助侵害を「直接侵害に従属する幇助行為」として位置付けている。しかし、司法実務においては折衷的な傾向も見られ、個別事件における公平性と法律適用の統一とのバランスを図る裁判所の姿勢をも反映している。

例えば、北京市高等裁判所の『特許権侵害判定ガイドライン(2017)』第119条は、「行為者が、関連製品が本件発明の実施に専ら用いられる原材料、中間製品、部品又は設備などの専用製品であることを明らかに知りながら、特許権者の許諾を得ずに、生産営業を目的として、当該専用製品を他人に提供し、かつ当該他人が特許権侵害行為を実施した場合、行為者の当該専用製品を提供する行為は、本ガイドライン第118条に規定されている『他人による特許権侵害行為の実施を幇助する行為』に該当する。ただし、当該他人が本ガイドライン第130条又は特許法第69条第3、4、5項に規定する状況に該当する場合には、当該行為者が民事責任を負うものとする。」と規定している。

2018年7月に開催された第4回全国知的財産権審判業務会議において、最高裁判所の陶凱元副院長は、「特許分野における幇助侵害は、被幇助者が侵害専用品を利用して、特許請求の範囲における全ての技術的特徴を包含する行為を行ったことを条件とする。被幇助者の行為が法律上の意味で直接侵害に該当することまでは要求されず、また被幇助者と幇助者を共同被告として提訴することまでは要求されない。」と指摘した。この司法方針によれば、特許間接侵害の成立要件は、直接侵害行為の成立ではなく、被幇助者による侵害専用品の利用行為が発明の全ての技術的特徴を完全に包含していることに置かれている。もっとも、この観点は近年の裁判例においては、さほど言及されなくなっているようである。

しかし、仮に直接侵害行為の成立を要件とする立場をとるにしても、直接侵害者を必ずしも被告にしなければならないわけではない。『民法典』第178条第1項には、「2人以上の者が法律に基づき連帯責任を負う場合、権利者は一部又は全部の連帯責任者に対して責任の履行を請求する権利を有する。」と規定されている。したがって、連帯責任の法的性質に基づき、特許権者は権利者として完全な訴訟選択権を有し、直接侵害者と幇助侵害者とを共同被告として一括提訴することもできるし、直接侵害者又は幇助侵害者の一方のみを被告として提訴することもできる。これには幇助侵害者又は直接侵害者の同意を得る必要はなく、裁判所も直接侵害者又は幇助侵害者を共同被告として、強制的に追加すべきではない。

司法実務においては、直接侵害者を同時に被告として提訴しなければ、直接侵害者の弁論権などの訴訟上の権利を損害することになる、と判断した裁判例も見られる。例えば、(2023)最高法知民終360号判決において、最高裁判所は「幇助侵害が成立するには、『他人が権利侵害行為を行っていること』を前提とする」と指摘した。本件において、会社1は、会社2及び会社3が某技術会社による本件特許の実施を幇助したとして、幇助侵害に該当すると主張したが、会社1は某技術会社を被告として提訴しておらず、某技術会社は、本件特許権を侵害したという確定判決も存在しない。このような状況において、一審裁判所は、本来なら職権に基づいて某技術会社を第三者として訴訟に追加すべきであったにもかかわらず、追加をせずに、某技術会社の係争行為について、侵害が成立するか否かについて直接審理を行い、某技術会社の弁論権などの訴訟上の権利を著しく損なった。対比技術となる技術的解決手段が本件特許権の保護範囲に属するか否かは、単なる技術的事実の問題に過ぎず、仮に対比技術が本件特許権の保護範囲に属するとしても、それだけで直ちに某技術会社が本件特許権を侵害したと認定することはできない。本件訴訟に未だ参加していない某技術会社は、本来ならば、アマゾンサイトの販売ページのスクリーンショットに示された対比技術の技術的解決手段について、自らが使用している技術的解決手段ではないと抗弁すること、また、自らが使用している技術的解決手段が現有技術であると抗弁することができたはずである。さらには、過去の協力関係において会社1が某技術会社に対して本件特許の使用を許諾していたと抗弁したり、ひいては会社1が某技術会社の技術をもって本件特許出願を行ったものであり、本件特許権は某技術会社に帰属すべきであると反訴したりするなど、様々な対応ができる可能性があり得たのである。しかし、某技術会社は、本件訴訟に参加していなかったため、一審裁判所が審理した「某技術会社が本件特許権侵害したか否か」という争点について意見を述べる機会が与えられなかった。したがって、一審判決には、当事者を欠くという法定手続違反が存在した。本件において、一審裁判所は、被疑侵害品を使用する某技術会社の最終製品が特許の保護範囲に属しないと判断し、幇助侵害は成立しないと認定した。二審裁判所は一審判決に法定手続違反が存在すると認めながらも、判決の結論自体に不当な点はないとして、一審判決を取り消さなかった。しかし、その後の本件二審判決における「職権に基づいて直接行為者を第三者として追加すべきである」とする考え方は、司法実務における他の事件の取扱いとはなお相違が見られた。

以上のことから、司法実務における直接侵害行為の成立要件については、具体的な判断基準に依然として一定の相違があり、ケースバイケースで判断すべきであることが分かる。

2.クラッチ事件に関する裁判所の認定

クラッチ事件において、直接侵害行為の存在を証明する証拠がないことが被告の主な抗弁理由の一つであり、特許製品は自動車メーカーに販売された段階で、特許権が消尽しており、自動車所有者が修理の際に部品を交換する行為は、合理的な使用に該当するため、直接侵害は成立せず、したがって、幇助侵害も成立しないと、被告は主張した。

これに対し、弊所は次のように主張した。すなわち、被疑侵害品である部品A及びこれとセットで組み立てられるクラッチ製品は自動車部品であり、被疑侵害品である部品Aと適合する部品Bとを組み合わせてクラッチアセンブリとして、これを車両に装着する自動車メーカーやアフターサービス拠点の整備工場などは、いずれも特許権者の許諾を得ずに特許製品を無断で使用し、販売する行為に該当するものであり、さらに、販売店が被疑侵害品である部品A及びこれと適合するクラッチを販売する行為も、対象製品を販売する行為に該当し、いずれも直接侵害を構成する。当該製品は一定期間にわたり、ある程度の規模で販売されてきた実績が存在することから、常識的に考えれば、直接侵害行為は既に実際に発生していると言える。

本件の一審判決は、幇助行為を認定する際、専用品要件及び「明らかに知っている」という要件の判断に重点を置き、直接侵害が実際に成立するか否かについては詳細な分析をしなかった。このような裁判の進め方は、訴訟経済への配慮に基づく可能性もあれば、一審裁判所が直接侵害の事実を当たり前の事として認定していたことを反映しているとも考えらえる。これに対して、二審判決において、最高裁判所もまた、被告が上訴理由として主張した直接侵害の成立可否について、直接応答しなかった。しかしながら、侵害認定の部分において、「被疑侵害品が本件特許請求の範囲に限定された他の部品とセットで使用された結果、客観的にみて、本件特許請求の範囲に記載の全ての技術的特徴を充足する状況が再現された」とはっきり指摘した。この表現は、技術的特徴の充足に重点を置いたものであり、行為の客観的側面に着目した判断姿勢を示している。

終わりに

2025年に結審されたクラッチ発明特許権侵害事件では、専用部品メーカーに対する幇助侵害責任の追及に成功しただけではなく、より重要なのは、最高裁判所が本件を年度裁判要旨に選出したことにより、司法機関が特許権の間接侵害問題を高度に重視していることを示し、知的財産権の保護理念が深化し続けていることを反映した点において大きな意義を有した。権利者にとって、間接侵害事件は、通常の特許権侵害事件と比較して複雑ではあるものの、なお確固たる権利行使への自信を持つことができる。すなわち、核心的な専用部品や中間製品を提供する被疑侵害者に対し、その侵害責任を十分に追及することができ、侵害問題を源流から解決することができる。

しかし、幇助侵害制度の整備には、なお一層の発展の余地があることも認識すべきであろう。また、新技術や新業態が続々と台頭するにつれ、幇助型の間接侵害制度も新たな課題に直面している。たとえば、ネットワーク環境における間接侵害問題やグローバル・サプライチェーンにおける責任認定などについては、司法実務による積極的な対応が期待される。さらに、権利者に対しては、特許出願の段階で、より包括的な出願戦略を採用することも検討すべきであり、例えば、分解可能な部品や中間製品については、単独で特許出願を行うことにより、より直接的な保護を得られるだけでなく、関連製品が専用品に該当しないことで、権利行使が困難となる事態を回避することができる。