中国弁護士 邢 博
北京魏啓学法律事務所
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弊所は先般、あるソフトウェア著作権侵害訴訟において、被告側代理人を担当した。この事件において、ソフトウェア著作権者は、弊所クライアント(被告)が、そのソフトウェアを許可を得ずに使用していることが著作権侵害にあたるとして、訴訟を提起した。弊所は当該訴訟において、「合法的出所の抗弁」を行った。
本稿では、被疑侵害者の視点から、ソフトウェア著作権侵害事件における合法的出所の抗弁を立証するためのポイントを分析する。
1.関連法律規定
『コンピュータソフトウェア保護条例(2013年改正)』第30条は、「ソフトウェアの複製品の所有者は、当該ソフトウェアが権利侵害複製品であることを知らず、かつ知るべき合理的な理由がない場合には、賠償責任を負わない。但し、その使用を停止し、当該侵害複製品を廃棄しなければならない。当該侵害複製品の使用停止及び廃棄が複製品の使用者に重大な損失を及ぼす場合には、複製品の使用者はソフトウェア著作権者に合理的な費用を支払った後、引き続き使用することができる。」と規定している。
上記規定によれば、被疑侵害者は関連ソフトウェアが第三者から提供されたものであり、且つ「当該ソフトウェアが権利侵害複製品であることを知らず、かつ知るべき合理的な理由がない」ことを証明できれば、合法的出所の抗弁を主張できる。ただ、合法的出所の抗弁が認められた場合、被疑侵害者は賠償責任を負わなくてもよいが、権利者が侵害行為を差止めるために支払った合理的な支出の一部を負担することを、裁判所から命じられる可能性がある。
司法実務において、合法的出所の抗弁を主張する場合、被疑侵害者は以下の点について立証しなければならない。
(1)係争ソフトウェアが第三者から提供されたものであり、被疑侵害者は、当該ソフトウェアが権利侵害複製品であることを知らず、主観的に悪意がなく、且つ当該ソフトウェアについて第三者に合理的な対価を支払ったこと。
(2)被疑侵害者は権利者の警告状又は訴状を受領した後、係争ソフトウェアの使用をすでに停止したこと。
2.ソフトウェア著作権侵害事件における合法的出所の抗弁の立証ポイント
(1)係争ソフトウェアが第三者から提供されたものであり、被疑侵害者は、当該ソフトウェアが権利侵害複製品であることを知らず、主観的に悪意がなく、且つ当該ソフトウェアについて第三者に合理的な対価を支払ったこと。
訴訟において、被疑侵害者は第三者と締結した契約を提出し、係争ソフトウェアが第三者から提供されたものであることを立証しなければならない。また、契約だけでなく、契約がすでに実際に履行されていることを証明するために、被疑侵害者は合理的な対価を支払った支払証憑を提出する必要がある。仮に、被疑侵害者が契約のみを提出し、支払証憑を提出できない場合、合法的出所の抗弁の主張は、裁判所から認められないことがある。
(2024)陝民終49号事件において、一審裁判所は以下のように認定した。亮点社(一審被告)は、被疑侵害ソフトウェアが索尚社(一審被告)によって導入・設置されたものであると抗弁し、「ミニプログラムソースコード契約書」と索尚社へのサービス料金の支払証憑を提出することで、亮点社は被疑侵害ソフトウェア複製品の所有者且つ使用者であるに過ぎないことが証明されている。本件において、亮点社と索尚社との間に、被疑侵害ウェブサイトにおける被疑侵害ソフトウェア複製品の使用について、明らかな意思疎通があったことを示す十分な証拠はなく、また亮点社が被疑侵害ウェブサイト内に係争ソフトウェアのソースコードを含む被疑侵害ソフトウェアの複製品が存在することを知っているか、又は知っているはずであることを証明する証拠もない。亮点社は、被疑侵害ミニプログラムの実際の作成者が索尚社であることをすでに立証し、且つ索尚社に対して合理的な対価を支払った状況において、関連法律規定に基づいて、一審裁判所は、原告による亮点社に対する経済的損失の賠償及び謝罪を求める訴訟請求を支持しなかった。二審裁判所は、亮点社の合法的出所の抗弁を認めた一審判決は不当ではないという判断を下した。
(2023)遼02民初982号事件において、被告であるHT社は、裁判所に『HQシステムソフトウェア販売契約書』及びそれに関連する支払証憑を提出した。裁判所は、HT社がウェブ制作会社にサイト構築を依頼して、合理的な対価を支払ったことから、ウェブ制作会社には合法的な手段でサイトを単独で構築する能力があると信じるに足る相当な理由があると認定した。また、本件において、HT社が当時、当該制作公司が係争ソフトウェアを実際に使用して被疑侵害ウェブサイトを構築したことを知っているか、又は知っているはずであったことを示す証拠もない。したがって、MT社(原告)がHT社に要求していた損害賠償及び謝罪の訴訟請求について、裁判所は支持しなかった。
(2021)京73民初511号事件において、被告である北京北婦社は、係争ウェブサイトが第三者によって制作されたもので、自社は善意の使用者に過ぎないため、損害賠償責任を負う必要はないと主張するとともに、裁判所に購入契約などの証拠を提出した。しかし、北京北婦社は支払証憑や納品状況といった契約履行に関する証拠を提出しなかったため、裁判所は同社の合法的出所の抗弁の主張を認めず、同社に対して、権利侵害行為の差止め及び損害賠償責任を負うことを命じる判決を下した。
(2)被疑侵害者は権利者の警告状又は訴状を受領した後、係争ソフトウェアの使用をすでに停止したこと。
前述の『コンピュータソフトウェア保護条例(2013年改正)』の第30条において、合法的出所の抗弁が成立する場合、被疑侵害者は賠償責任を負わないものの、被疑侵害複製品の使用停止及び廃棄が義務付けられている。
実務において、ソフトウェアの著作権者は、まず侵害警告状を送付することが多く、双方が侵害について和解に至らない場合、権利者は裁判所にソフトウェア著作権侵害訴訟を提起することもある。
被疑侵害者は、権利者から侵害警告状を受領した後も、被疑侵害ソフトウェアを継続して使用した場合、警告状受領後の使用行為は、主観的悪意があるとみなされる。これについて、被疑侵害者は合法的出所の抗弁を主張しても、裁判所から支持を得ることは困難である。したがって、被疑侵害者は警告状を受領し次第、直ちに当該ソフトウェアの使用を停止することを提案する。
(2020)京73民初876号事件において、裁判所は以下のとおり認定した。
ファイザー社(被告)は、本件起訴書類及び証拠保全決定書を2020年12月2日に受領してから、係争ソフトウェアに著作権侵害の可能性があることを認識していたはずであり、係争ソフトウェア複製品の保有者として、奥龍信社が係争ソフトウェアの正規代理店としての資格を有しているか否かを迅速且つ慎重に再審査すべきで、合理的な期間内に係争ソフトウェアの使用停止の要否を判断すべきであった。しかし、ファイザー社は、奥龍信社が提出した代理権付与の法的根拠である「証明書」がコピーであったにもかかわらず、奥龍信社が提示した係争ソフトウェアが合法且つ各種規程に適合している商品であり、証明書も真実且つ有効であるという一方的な保証のみを根拠にして、その後も事業活動において当該ソフトウェアを使用し続け、2022年5月になってようやくシステムから当該ソフトウェアを削除した。こうした行為は、善意とはいえない。したがって、ファイザー社が本件訴訟書類を受領した後も係争ソフトウェアを直ちに削除せず、その後の事業活動において使用し続けた行為は、奥龍信社、張某と共同で権利侵害を行ったという主観的な過失があり、ファイザー社が奥龍信社と張某とともに行ったこの段階における行為は、愛創社(原告)が享有する係争ソフトウェア複製権に対する共同侵害に該当すると認定された。
本件において、ファイザー社は本件起訴書類の受領前、係争ソフトウェアを使用していたが、当該ソフトウェアが権利侵害複製品であることを知らず、かつ知るべき合理的な理由もなかったため、その使用行為について過失は認められなかった。したがって、ファイザー社は本件起訴書類受領前に当該ソフトウェアを使用した行為について、権利侵害に基づく損害賠償責任を負う必要はなかった。そして、ファイザー社が本件訴訟書類を受領した後に、係争ソフトウェアを直ちに削除せずに、その後の事業活動において当該ソフトウェアを使用し続けた侵害行為については、ファイザー社が奥龍信社、張某とともに、愛創社が有する当該ソフトウェア複製権に対して行った共同侵害行為に該当し、ファイザー社は、当該段階における侵害行為により生じた損失について、奥龍信社及び張某と連帯して賠償責任を負わなければならなかった。
この事件において、ファイザー社は自社工場内で稼働しているコンピュータソフトウェアの現状について、スクリーンショットの取得、録画及び写真撮影に関する公証を行い、公証書を裁判所に提出することで、係争ソフトウェアを自社のコンピュータシステムからすでに削除し、ソフトウェアを取り換えたことを証明した。ソフトウェア著作権者からの侵害警告状を受領した後に、被疑侵害者が当該侵害ソフトウェアの使用を停止した場合には、このような方法を参考にし、現在使用しているソフトウェアの状況についてスクリーンショット、録画及び写真撮影による公証を行うことができる。権利者がその後訴訟を提起した場合、被疑侵害者は関連する公証書を裁判所に提出することで、権利者からの侵害警告状を受領した後、当該ソフトウェアの使用を直ちに停止したことを証明することができる。
まとめ
被疑侵害者がソフトウェア著作権者から侵害警告状を受領した後、当該ソフトウェアが第三者から提供されたものである場合、合法的出所の抗弁を検討できる。具体的には、①当該ソフトウェアの使用を直ちに停止し、可能であれば、そのコンピュータシステムからソフトウェアをすでに削除し、且つソフトウェアを取り替えた状況で公証を行うことで、将来の訴訟に備えること。②ソフトウェアを提供した第三者に連絡し、関連状況についてソフトウェア著作権者に説明及び協議することを求めること。③当該第三者がソフトウェア著作権者との関連問題についての協議を疎かにする場合、その連絡先を権利者に告知し、権利者が当該第三者と直接連絡して協議して解決できるようにすること。
その後、権利者が権利侵害訴訟を提起した場合、被疑侵害者は、第三者との契約書、合理的な対価が支払済みであることを示す支払証憑、被疑侵害ソフトウェアの使用をすでに停止したことを示す証拠、第三者と権利者との間のコミュニケーションを積極的に調整したことを示す証拠などを裁判所に提出し、合法的出所の抗弁を主張することができる。
