中国弁理士・弁護士 陳 濤
北京魏啓学法律事務所
北京魏啓学法律事務所
一. はじめに
近年、中国特許庁へのAI特許出願件数は急増しており、AIアルゴリズムの改良や応用に関するものを含め、2025年のAI特許出願件数は20万件を超えた。中国特許庁は、これだけ膨大な数のAI特許出願を審査している中で、AI特許出願に関する審査のルールを整理し、明確化してきた。本稿では、中国の特許審査指南(以下、審査指南という。)及び審判事例を踏まえ、中国におけるAI特許出願の審査運用について説明する。
二. 知的活動の法則や方法
1.審査指南の規定
審査指南第2部第9章第6.1.1節は次のように規定している。
「請求項が、抽象的アルゴリズム又は単純のビジネスルール・方法に関するものであり、技術的な構成を一切含まない場合に、この請求項は、中国特許法第25条第1項第(2)号に規定する知的活動の法則や方法に該当し、特許を受けることができない。
請求項が、アルゴリズムの構成又はビジネスルール・方法の構成に加えて、技術的な構成も含む場合、この請求項は、全体的に言えば、知的活動の法則や方法ではないため、中国特許法第25条第1項第(2)号によりその特許可能性を否定することができない。」
知的活動の法則や方法の判断は比較的容易である。請求項が純粋な抽象的アルゴリズムに関するものであり、適用場面がなく、確実な技術的意味を有するデータの処理を伴わない場合、それは知的活動の法則や方法に該当する。一方、請求項が単なる知的活動の法則や方法に該当しない場合は、それが技術的なソリューションに該当するか否かをさらに判断する必要がある。
2.事例解説
事例1は、数理モデルの構築方法に関するものであり、トレーニングサンプルの数を増やすことで、モデル構築の精度を高める。その請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】
第一クラシフィケーションタスクのトレーニングサンプル中の特徴値と、少なくとも1つの第二クラシフィケーションタスクのトレーニングサンプル中の特徴値に基づいて、初期特徴抽出モデルをトレーニングし、目標特徴抽出モデルを得て、前記第二クラシフィケーションタスクは、前記第一クラシフィケーションタスクに関連するその他クラシフィケーションタスクであるステップと、
前記目標特徴抽出モデルにより、前記第一クラシフィケーションタスクのそれぞれのトレーニングサンプル中の特徴値をそれぞれ処理し、前記それぞれのトレーニングサンプルに対応する抽出特徴値を得るステップと、
前記それぞれのトレーニングサンプルに対応する抽出特徴値とラベル値で抽出トレーニングサンプルを構成し、初期クラシフィケーションモデルをトレーニングし、目標クラシフィケーションモデルを得るステップと、
前記目標クラシフィケーションモデルと前記目標特徴抽出モデルで前記第一クラシフィケーションタスクの数理モデルを構成するステップと、を含むことを特徴とする方法。」
事例1の方法は、トレーニングサンプルが少ないことでオーバーフィットとなり、モデリングの正確性が低いという欠点を解消でき、モデル構築の精度を高め、有利な効果を奏し得るが、その処理対象、プロセス及び結果はいずれも具体的な応用分野を反映しておらず、抽象的な数学的方法の最適化であり、技術的な構成も一切含まないため、知的活動の法則や方法に該当し、特許を受けることができない。
三.技術的なソリューション
1.審査指南の規定
審査指南第2部第9章第6.1.2節は次のように規定している。
「アルゴリズムの構成又はビジネスルール・方法の構成を含む請求項が技術的なソリューションに該当するか否かを審査する際には、請求項に記載のすべての構成を全体的に考慮する必要がある。当該請求項に、解決しようとする課題に対して自然法則を用いた技術的手段を採用する旨が記載されており、かつそれにより自然法則に適合する効果を得られる場合、当該請求項に係る発明は、中国特許法第2条第2項に記載の技術的なソリューションに該当する。」
AI特許出願において、技術的なソリューションとして認められるための要件は、一般的な特許出願と同様であり、すなわち、技術的課題、技術的手段、技術的効果という3要件である。具体的な判断方法については、審査指南において、実務上の運用を容易にするため、3つの典型的な場合が示されている。
具体的には、審査指南第2部第9章第6.1.2節は次のように規定している。
「請求項に記載のアルゴリズムの各ステップが、解決しようとする技術的課題との密接な関係を反映している(例えば、アルゴリズムの処理対象となるデータが、技術分野で確実な技術的意味を有するデータであること、アルゴリズムの実行が自然法則を利用して何らかの技術的課題を解決するプロセスを直接反映し、かつ技術的効果を得たこと等)。この場合、通常、当該請求項に係る発明は中国特許法第2条第2項に記載の技術的なソリューションに該当する。(場合①)
請求項のソリューションがディープラーニング、クラシフィケーション、クラスタリングなどの人工知能、ビッグデータアルゴリズムの改良に関し、当該アルゴリズムがコンピュータシステムの内部構造と特定の技術的関連性を有するものであり、データ保存量の低減、データ伝送量の低減、ハードウェアの処理速度向上などの、ハードウェアの演算効率や実行効果の向上に係る技術的課題を解決でき、これにより自然法則に適合するコンピュータシステム内部性能の改良に係る技術的効果を取得する。この場合、当該請求項に係る発明は中国特許法第2条第2項に記載の技術的なソリューションに該当する。(場合②)
請求項のソリューションの処理対象が具体的な応用分野のビッグデータであり、クラシフィケーション、クラスタリング、回帰分析、ニューラルネットワークなどにより、データの自然法則に適合する内的相関関係を発掘し、これに基づいて具体的な応用分野のビッグデータ分析の信頼性や精度の向上に係る技術的課題を解決し、然るべき技術的効果を取得する。この場合、当該請求項に係る発明は中国特許法第2条第2項に記載の技術的なソリューションに該当する。(場合③)」
場合①は、アルゴリズムと適用場面との結び付けに関するものである。このような結び付けを反映するためには、少なくとも以下の2つの要件を満たす必要がある。(1)アルゴリズムの処理対象となるデータが、技術分野で確実な技術的意味を有するデータであること。(2)アルゴリズムの実行が自然法則に則ること。
場合②は、アルゴリズムとコンピュータシステムの内部構造との結び付けに関するものである。この場合、技術的なソリューションとして認められるには、以下の3つの要件を満たす必要がある。(1)アルゴリズムがコンピュータシステムの内部構造と技術的関連性を有すること。(2)ハードウェアの演算効率や実行効果に係る技術的課題を解決すること。(3)コンピュータ内部性能の改良に係る技術的効果を取得すること。
場合③は、具体的な応用分野におけるビッグデータのデータ発掘に関するものである。この場合、アルゴリズムと具体的な適用場面は結びつけられているが、技術的なソリューションとして認められるには、発掘された相関関係が自然法則に適合することがポイントである。
2.事例解説
(1)場面①について
事例2の請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】
畳み込みニューラルネットワークCNNモデルのトレーニング方法であって、
トレーニング対象のCNNモデルの初期モデルパラメータを取得し、・・・ことと、
複数のトレーニング画像を取得することと、
・・・各トレーニング画像の前記各レベルの畳み込み層における第一特徴画像を取得することと、
・・・水平プーリング操作を行い、各トレーニング画像の各レベルの畳み込み層における第二特徴画像を取得することと、
各トレーニング画像の各レベルの畳み込み層における第二特徴画像に基づいて各トレーニング画像の特徴ベクトルを決定することと、
・・・各特徴ベクトルに対して処理を行い、各トレーニング画像のクラス確率ベクトルを取得することと、
前記各トレーニング画像のクラス確率ベクトル及び各トレーニング画像の初期クラスに基づいて、クラス誤差を計算することと、
前記クラス誤差に基づいて、前記トレーニング対象CNNモデルのモデルパラメータに対して調整を行うことと、
調整後のモデルパラメータ及び前記複数のトレーニング画像に基づいて、モデルパラメータの調整を行うプロセスを継続し、イテレーション数が所定回数に達するまで行うことと、
イテレーション数が所定回数に達した時に得られたモデルパラメータをトレーニング済みのCNNモデルのモデルパラメータとすることと
を含むことを特徴とする、畳み込みニューラルネットワークCNNモデルのトレーニング方法。」
事例2は、技術分野で確実な技術的意味を有するデータ、すなわち画像を処理対象とするものである。畳み込み層によって異なる処理を画像に施してトレーニングするという手段は、自然法則に則った技術的手段に該当し、任意のサイズの認識対象画像を認識できるという技術的効果を得る。したがって、事例2のアルゴリズムは適用場面と密接に結びつけられており、技術的なソリューションに該当する。
反例として、事例3の請求項1は以下のようなものである。
「【請求項1】
以下のステップを含むことを特徴とする、Transformerに基づくサンプルベースの効率的な世界モデルを構築する方法。
S0.過去のインタラクションデータを読み込み、過去のインタラクションデータを過去のアクションシーケンスデータと過去の生状態データに分離する;ここで、過去のインタラクションデータは、オブジェクトの状態情報、オブジェクトの相対位置、及び離散運動空間を含む;
S1.現在時点の生状態データを取得し、・・・マルチスケール特徴データに変換する;・・・状態拡張データを生成する;現在の離散潜在変数データと過去の離散潜在変数データをそれぞれ取得する;
S2.・・・因果構造データを構築する;・・・因果拡張表現データを生成する;・・・状態予測データを出力する;
S3.・・・時間相関データを構築する;・・・不確実性データを計算する;・・・多段階予測シーケンスデータを生成する;
S4.・・・階層的価値データを取得する;・・・方策勾配データを計算する;・・・方策最適化データを取得する;
S5.・・・新しいインタラクションデータを生成する;・・・高品質のサンプルデータを取得する;・・・モデル更新データを生成する;・・・モデル調整データを出力する;
産業用ロボットの場面では、過去のインタラクションデータは、・・・ロボットの状態情報、・・・相対位置情報、・・・離散運動空間、・・・プロセスパラメータデータ、・・・システム状態データを含む;
生状態データは、・・・センサーデータ、・・・環境データを含む。」
事例3においても、技術分野で確実な技術的意味を有するデータを処理対象としており、例えば、請求項1におけるセンサーデータには「トルクセンサーの測定値、視覚センサーの画像」などが含まれるが、事例3は技術的なソリューションとは認められなかった。拒絶査定不服審決において、「請求項1に記載された産業用ロボットの場面における過去のインタラクションデータ及び生状態データは、単にモデルの入力データに過ぎず、世界モデルを構築するために選別されたサンプルデータであり、『高品質のサンプルデータ』の選別条件及びそのプロセスが産業用ロボットの場面とどのように密接に関連しているかについては、一切言及されていない」と指摘されている。
したがって、事例3は適用場面と確実な技術的意味を有するデータを規定しているものの、適用場面とアルゴリズムとの間は乖離しており、明細書の記載によれば、アルゴリズムは産業用ロボットの適用場面におけるいかなる具体的な技術的課題を解決しておらず、単にモデルアルゴリズムの最適化に関するものにすぎない。
(2)場合②について
事例4はディープニューラルネットワークモデルのトレーニング方法に関するものである。その請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】
トレーニングデータのサイズが変更されると、変更後のトレーニングデータについて、所定の候補トレーニングプランによる前記変更後のトレーニングデータのトレーニング所要時間を算出すること、
シングルプロセッサによるトレーニングプランと、データ並行に基づくマルチプロセッサによるトレーニングプランを含む所定の候補トレーニングプランから、トレーニング所要時間が最短となるトレーニングプランを前記変更後のトレーニングデータの最適なトレーニングプランとして選択すること、
前記変更後のトレーニングデータを前記最適なトレーニングプランでモデルトレーニングを行うことと、を含むディープニューラルネットワークモデルのトレーニング方法。」
事例4のアルゴリズムは、コンピュータシステムの内部構造と関連しており、すなわち、シングルプロセッサによるトレーニングプランとマルチプロセッサによるトレーニングプランの中から最適なトレーニングプランを選択するものである。これは、モデルトレーニング方法とコンピュータシステムの内部構造との間に技術的な関連性があることを十分に証明しており、かつ、この技術的な関連性によってトレーニング時のハードウェアの実行効果が向上するため、技術的なソリューションに該当する。
(3)場合③について
事例5は電子クーポンの使用傾向を分析する方法に関するものである。その請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】
電子クーポンの情報に基づいて電子クーポンのクラシフィケーションを行って電子クーポンの種類を取得することと、
電子クーポンの応用シーンに基づいてユーザサンプルデータを取得することと、
ウェブページの閲覧、キーワード検索、フォロー、カートに追加、購入及び電子クーポンの使用を含むユーザーの行動に基づいて、ユーザサンプルデータからユーザ行動特徴を抽出することと、
ユーザサンプルデータをトレーニングサンプルとして、ユーザ行動特徴を属性ラベルとして使用し、各種類の電子クーポンに対して電子クーポンの使用傾向の識別モデルをトレーニングすることと、
トレーニングされた電子クーポンの使用傾向の識別モデルによって、電子クーポンが使用される確率を予測し、各種類の電子クーポンに対するユーザーの使用傾向を取得することと、
を含むことを特徴とする電子クーポンの使用傾向の分析方法。」
事例5が技術的なソリューションとして認められるか否かのポイントは、「ウェブページの閲覧、キーワード検索、フォロー、カートに追加、購入及び電子クーポンの使用」といったユーザーの行動特性と、ユーザーの電子クーポンに対する使用傾向との間に自然法則に適合する相関関係が存在するか否かにある。閲覧時間が長い、検索回数が多い、電子クーポンの使用が頻繁であるなどの行動特徴は、ユーザーの電子クーポンに対する使用傾向が高いことを示している。したがって、当該解決手段により発掘された相関関係は自然法則に適合しており、当該相関関係に基づくソリューションは技術的なソリューションに該当する。
一方、反例として、金融商品の価格予測方法が、金融商品の過去の価格と将来の価格との間の相関関係を発掘し、当該相関関係に基づいて金融商品の価格予測を行う場合、当該相関関係は自然法則に適合しないため、当該価格予測方法は技術的なソリューションには該当しない。
四. 進歩性
1.審査指南の規定
周知のとおり、中国では進歩性の判断に「3ステップ法」が用いられており、AI特許出願の進歩性の判断も例外ではない。AI特許出願の請求項には多数のアルゴリズムの構成が含まれており、これらのアルゴリズムの構成をどのように捉えるべきかは、解決すべき課題となっている。
審査指南第2部第9章第6.1.3節は次のように規定している。
「技術的な構成と、アルゴリズムの構成又はビジネスルール・方法の構成との両方を含む発明特許出願について、進歩性の審査を行う際には、技術的な構成と機能上支え合い、相互作用関係にあるアルゴリズムの構成又はビジネスルール・方法の構成と、前記技術的な構成とを一つの統一体として考慮すべきである。『機能上支え合い、相互作用関係にある』とは、アルゴリズムの構成又はビジネスルール・方法の構成と、技術的な構成が密接に絡み合い、ある技術的課題を解決するための技術的手段を共同で構成し、かつ然るべき技術的効果を奏し得ることを意味する。」
上記の規定に基づき、請求項におけるアルゴリズムの構成と技術的な構成が機能上支え合い、相互作用関係にある場合には、当該アルゴリズムの構成と技術的な構成を一つの統一体として考慮した上で、当該統一体としての構成が開示又は示唆されているか、技術常識であるかを判断すべきである。一方、アルゴリズムの構成と技術的な構成が「機能上支え合い、相互作用関係にある」ことを満たさない場合には、進歩性の判断にあたっては、当該アルゴリズムの構成を考慮する必要はない。
アルゴリズムの構成と技術的な構成が「機能上支え合い、相互作用関係にある」か否かを判断する方法については、審査指南において2つの具体的な場合が示されている。
審査指南第2部第9章第6.1.3節はさらに以下のことを規定している。
「請求項のアルゴリズムを具体的な技術分野に適用して、具体的な課題を解決できる場合、当該アルゴリズムの構成が、技術的な構成と機能上支え合い、相互作用関係にあると認めることができる。このようなアルゴリズムの構成は、採用される技術的手段の構成部分となり、進歩性の審査において、発明に対するアルゴリズムの構成による貢献を考慮すべきである。(場合①)
請求項のアルゴリズムが、コンピュータシステムの内部構造と特定の技術的関連性を有するものであり、コンピュータシステムの内部性能の改善を実現し、データ保存量の低減、データ伝送量の低減、ハードウェアの処理速度向上などのハードウェアの演算効率や実行効果の向上につながる場合、当該アルゴリズムの構成と技術的な構成が機能上互いに支え合い、相互作用関係にあると判断することができ、進歩性の審査に際して、そのアルゴリズムの構成による発明への貢献を考慮しなければならない。(場合②)」
場合①はアルゴリズムの構成と適用場面との結びつけに関するものであり、場合②はアルゴリズムの構成とコンピュータシステムの内部構造との結びつけに関するものである。これら2つの場合のいずれかに該当する場合には、技術的な構成と密接に関連するアルゴリズムの構成を通常の技術的な構成とみなし、「3ステップ法」に従って請求項の進歩性を判断すべきである。
2.事例解説
事例6の請求項1は以下のとおりである。
「ダム水力発電量推定システムであって、
情報プロセッサを利用して構築されたニューラルネットワークであって、入力層及び出力層を有し、前記入力層の入力データは、基準時刻及びそれ以前の期間における、河川上流の降水量、河川上流の水流量、及びダムへの流入量を含み、前記出力層の出力データは、基準時刻以降の将来の水力発電量を含む、ニューラルネットワークと、
入力データ及び出力データの実際の値に対応するトレーニングデータを用いてニューラルネットワークをトレーニングする機械学習ユニットと、
機械学習ユニットによりトレーニングされたニューラルネットワークに入力データを入力し、現在時刻を基準時刻として設定した上で、基準時刻が現在時刻である場合の出力データに基づいて将来の水力発電量の推定値を算出する推定ユニットと、
を備えることを特徴とするダム水力発電量推定システム。」
引例1には、水力発電量推定システムが開示されており、当該システムも「河川上流の降水量、河川上流の水流量、及びダムへの流入量」という3つのパラメータに基づいて将来の水力発電量を推定するものである。相違点は、請求項1がニューラルネットワークを採用するのに対し、引例1が回帰方程式モデルを採用する点にある。
請求項1において、ニューラルネットワークを用いて水力発電量の推定を行っており、アルゴリズムの構成と技術的な構成が機能上支え合い、相互作用関係にある。しかし、ニューラルネットワークモデルを用いて将来の出力の推定プロセスを実行することは当業界の技術常識であるため、請求項1は引例1及び技術常識に対して進歩性を有しない。
事例6の従属項2の付加要件は、「入力層の入力データは、基準時刻及びそれ以前の期間における河川上流の気温をさらに含む」というものであり、当該付加要件は引例に開示されていない。当該従属項2が進歩性を有するか否かは、「河川上流の気温の変化は降水量の変化及び氷雪の融解による水流量の変化をもたらし、それによりダムの水力発電量の変化を引き起こす」ことが技術常識であるか否かに依存する。
審査指南において、AI特許出願に関するいくつかの特殊なケースについて、指針となる事例が示されている。以下に具体的に説明する。
事例7は、AIアルゴリズムを異なる適用場面に適用する場合に進歩性をどのように判断すべきかに関するものであり、その請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】
船舶数を識別する方法であって、
船舶画像データセットを取得し、データセット中の画像情報に対して前処理を行い、画像情報中の船舶の位置及び境界情報をマーキングし、前記データセットをトレーニングデータセットとテストデータセットに分割することと、
前記トレーニングデータセットを用いて深層学習を行い、トレーニングモデルを構築することと、
前記テストデータを前記トレーニングモデルに入力してトレーニングすることにより、船舶テスト結果データを取得することと、
前記船舶テスト結果データと所定の誤差パラメータとを乗算することにより、実際の船舶数を特定することと、
を含むことを特徴とする方法。」
引例1には、木上の果実の数を識別する方法が開示されている。請求項1と引例1との相違点は、識別対象が異なるという点のみにある。船舶と果実は、外観、大きさ、所在環境に差異があるが、画像における船舶のデータをマーキングすることは、画像における果実のデータをマーキングして訓練に用いられるデータセットを取得してモデルを訓練することに比べて、深層学習、モデル構築又は訓練プロセスなどを調整又は改善することがない。したがって、請求項1は進歩性を有しない。
事例7から得られる教示は以下のとおりである。ソリューションの改良がアルゴリズムを既存の場面から異なる場面に適用することにある場合、進歩性の判断において、適用場面の共通性、示唆の有無、異なる場面への適用の難しさ、技術的な困難を克服する必要性、予想外の技術的効果の有無等を総合的に考慮すべきである。アルゴリズム又はモデルを異なる場面に適用する際、技術的な困難を克服することによりアルゴリズム又はモデルのトレーニング方法、パラメータ、設定等の要素に対する調整を実現しておらず、かつ予想外の技術的効果も取得しない場合には、当該ソリューションは進歩性を有しない。
事例8は、AIアルゴリズムを同一又は類似の技術場面に適用する場合の進歩性の判断方法に関するものであり、その請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】
鉄スクラップの等級分け用ニューラルネットワークモデルの構築方法であって、
・・・畳み込みニューラルネットワーク学習を行って、等級分け出力を有する等級分けニューラルネットワークモデルを構築するステップと、を含み、
・・・、畳み込み層、または畳み込み層とプーリング層により構成された複数ラインの出力の集合により画像における物体の色、エッジ及びテクスチャを抽出することと、画像における物体のエッジ、テクスチャ間の関連特徴を抽出することを含み、
前記画像における物体の色、エッジの抽出は、畳み込み層とプーリング層により構成された三つのラインの出力の集合で実現されており、前記三つのラインは、左から順次に一層のプーリング層による第一ラインと、二層の畳み込み層による第二ラインと、四層の畳み込み層による第三ラインであり、前記画像におけるテクスチャの抽出は、前記画像における物体の色、エッジの抽出結果を集合して、畳み込み層により構成された三つのラインの出力の集合で実現されており、当該三つのラインは、左から順次に0層の畳み込み層による第一ラインと、二層の畳み込み層による第二ラインと、三層の畳み込み層による第三ラインであり、
前記エッジ、テクスチャとの間の関連特徴を抽出するために畳み込み層によって計算されるラインは、画像における物体の色、エッジ及びテクスチャを抽出するために畳み込み層によって計算されるラインよりも多い、
ことを特徴とする鉄スクラップの等級分け用ニューラルネットワークモデルの構築方法。」
引例1には畳み込みニューラルネットワークモデルに基づいて鉄スクラップの種類を識別する方法が開示されている。請求項1と引例1の相違点は、訓練されるデータ及び抽出される特徴が異なり、畳み込み層とプーリング層によるラインの数及び層設定も異なることにある。
請求項1において、画像における鉄スクラップの色、エッジ、テクスチャを抽出するために、モデル訓練において、畳み込み層及びプーリング層のライン数及び層設定をすべて調整した。アルゴリズムの構成と技術的な構成は、機能上互いに支え合い、相互作用関係にあり、鉄スクラップ等級分けの正確性を向上させることができる。上記相違点は他の引例に開示されておらず、当業界の技術常識でもない。したがって、請求項1は進歩性を有する。
事例8から以下のことを学ぶことができる。請求項は先行技術と比較して、適用場面が同一または類似しているとしても、アルゴリズムの流れ、モデルパラメータまたはその他の点において実質的な調整が行われており、かつ先行技術には当該調整を行う示唆がなく、同時に当該出願が異なる技術的課題を解決し、有利な技術的効果を奏している場合には、当該ソリューションは進歩性を有する。
五. 中国特許法第5条第1項
1.審査指南の規定
審査指南第2部第9章第6.1.1節は次のように規定している。
「アルゴリズムの構成又はビジネスルール・方法の構成を含む発明特許出願は、データ収集、タグ管理、ルール設定及び推奨方針等には、法律、社会道徳に違反するか、又は公共の利益を害する内容が含まれている場合、中国特許法第5条第1項に基づき、特許を受けることができない。」
2.事例解説
事例9は法律違反に該当するケースであり、その請求項1は以下の通りである。
「【請求項1】
ビッグデータに基づくショッピングモールにおけるマットレス販売支援システムであって、
マットレス製品を表示してマットレス製品の販売を支援するとともに、顧客データを収集するマットレス表示デバイスであって、制御モジュールおよび情報収集モジュールを有するマットレス表示デバイスと、
管理サーバー及び分析支援システムとを有する管理センターと、を備え、・・・
前記情報収集モジュールは、撮像モジュールと顔認識モジュールとを含み、顧客の顔特徴情報を収集し、・・・顧客の身分認識情報を取得し、
前記管理サーバーは、複数のマットレス表示デバイスを管理し、
前記分析支援システムは、顧客の身分認識情報に基づいて、マットレス表示デバイスにより収集されたデータを分析して顧客の実際の好みを取得し、分析結果を管理センターにフィードバックする、
ことを特徴とするビッグデータに基づくショッピングモールにおけるマットレス販売支援システム。」
中国の法律の規定によれば、公共の場所に画像収集装置や身分認識装置を設ける場合、公共安全の維持に不可欠で、国の法律法規を遵守することを条件とする。個人画像、身分認識情報の取得は、公共安全を維持するために用いられなければならず、他の目的への利用が禁止される。個人の同意を別途得た場合は例外である。
当該出願の目的は、公共安全の維持ではなく、マットレスの販売支援である。また、顔情報の収集や身分情報の認識は、顧客が気づかない状態で行われるものである。明細書において、データの取得又は情報の収集が法律の規定に従って行われたものであるとの記載もない。よって、当該出願は、法律に違反したものに該当するため、特許を受けることができない。
事例9から以下のことを学ぶことができる。出願時には、明細書においてデータの出所、データの内容、データ管理、訓練目標と計画、訓練の流れ、訓練環境及びツール、訓練結果の倫理的検証等について、合法性に関する声明を記載することが望ましい。
事例10は無人運転車両の緊急時意思決定モデルの構築方法に関するものである。歩行者の性別と年齢とを障害物データとして意思決定モデルを訓練して、緊急時の意思決定が行われる際、歩行者の性別と年齢に基づいて保護対象と衝突対象が区別される。しかし、人間は、年齢や性別に関わらず同等の価値と尊厳を有する。歩行者の性別と年齢に基づいて保護対象と衝突対象を決定することは、社会道徳に反する。従って、当該出願は、社会道徳に反するものに該当し、特許を受けることができない。
事例10から学ぶこととして、公序良俗違反の事項を含まないように留意すべきである。
六. 実施可能要件の審査
1.審査指南の規定
審査指南第2部第9章第6.3.1節は次のように規定している。
「当業者が明細書の記載に基づいて発明を実施できるように、人工知能モデルの構築又は訓練に関する場合、通常、モデル構築に必要なモジュール、層別又は接続関係、モデル訓練に必要な具体的な手順、パラメータなどを明細書に明記する必要があり、特定の分野又は場面への人工知能モデル又はアルゴリズムの適用に関する場合、通常、モデル又はアルゴリズムがどのように特定の分野又は場面に適用されるか、アルゴリズム又はモデルの入出力データの内的関連性を示す構成などを明細書に明記する必要がある。」
以上の規定によれば、人工知能モデルの構築又は訓練に関する出願と、特定の分野又は場面への人工知能モデル又はアルゴリズムの適用に関する出願とでは、明細書の実施可能要件に関して、重点が異なる。
2.事例解説
事例11は、顔特徴の生成方法に関するものであり、空間変換ネットワークが配置されている第1の畳み込みニューラルネットワークによって生成された特徴領域画像の集合を、各第2の畳み込みニューラルネットワーク間で情報を共有することにより、メモリ占有率を抑えるとともに、顔画像生成結果の精度向上を図ることができる。
請求項1には第1の畳み込みニューラルネットワーク及び第2の畳み込みニューラルネットワーク及び「前記第1の畳み込みニューラルネットワークに、顔画像の特徴領域を特定する空間変換ネットワークが配置される」ことが規定されている。また、明細書には、空間変換ネットワークについて「第1の畳み込みニューラルネットワークにおける空間変換ネットワークの配置位置は、限定されない」旨が記載されている。
当業者であれば、空間変換ネットワークは、全体として、第1の畳み込みニューラルネットワークの任意の位置に設けられても良いことが理解される。その配置位置は、画像の特徴領域の認識に影響を与えない。畳み込みニューラルネットワークと空間変換ネットワークはいずれも公知アルゴリズムであるため、当業者はそのモデルを構築することができる。したがって、権利化を求める発明は明細書に十分に記載されている。
事例11によれば、人工知能等のアルゴリズム又はモデルを利用してある分野の課題を解決する場合、そのソリューションに採用される技術的手段が出願書類に明確に記載されていなくても、当該技術的手段が当業界において当該課題を解決するための技術常識に該当するものであれば、明細書に当該技術的手段が記載されていなくても、明細書の実施可能要件違反に該当しないと考えられる。
事例12は生体情報に基づくがんの予測方法に関する。明細書には、訓練済み悪性腫瘍スクリーニングモデルに対して、スクリーニングモデルの入力データとして血液検査値、顔画像特徴などを入力し、悪性腫瘍の罹患率予測値の出力データを得ることにより、悪性腫瘍予測の正確性を向上させること記載されている。請求項1には、モデルの訓練及び当該モデルを用いて予測を行うプロセスが規定されている。
しかし、血液検査値のうちどの指標が悪性腫瘍の判断に用いることができるのかについては、明細書に記載されておらず、当業者がそれを特定することもできない。また、現在の科学研究に基づけば、顔皮膚癌などの少数の腫瘍を除き、顔の特徴と悪性腫瘍罹患との間に関連性が存在するかどうかは未だ不明であり、明細書にも「判断の根拠となる要素」と「判断の結果」との間の因果関係が記載または証明されていない。さらに、明細書には、検証データも一切提供されていない。当業者は、明細書に記載された内容に基づいて、本願発明がどのようにその課題を解決するかを把握することはできない。したがって、本願発明は、明細書において十分に記載されていない。
事例12からすれば、人工知能等のアルゴリズム又はモデルを利用して特定の分野の課題を解決する場合、解決手段(入出力間の内在的な相関関係を含む)が明細書に明確に記載されておらず、技術常識でもなく、明細書の記載に基づいてその発明を実施してその課題を解決することができない場合、実施可能要件違反と判断される。
3. よく見られる実施可能要件違反の理由
(1)技術常識に反する明細書記載
拒絶査定不服審決第1853778号において、「上記パラメータの定義によれば、式中のX+Zは、『ノイズデータ』を『元の画像データ』に重ね合わせることを意味し、これは明らかにノイズ低減アルゴリズムにより画像ノイズ低減を実現するという目的に反する」と指摘されている。
発明の目的は画像のノイズを低減することであるが、明細書に記載された手段はノイズデータを元の画像データに重ね合わせるものである。当該技術的手段は明らかに技術常識に反するものである。そのため、どのように当該アルゴリズムによりノイズが低減された画像を得るかが当業者には不明確である。したがって、明細書に記載された技術的手段は曖昧で不明確である。
(2)出力データと入力データとの間における自然法則に適合する相関関係の欠如
拒絶査定不服審決第2077737号に係る事例において、解決しようとする課題は、従来のがんスクリーニングは特定の診療機器を必要とし、特定の場面に依存するため、検査が煩雑であり、その結果、がんスクリーニング率が低いということである。
明細書に記載された技術的手段は、被験者の頭頸部の画素点の運動振幅及び振動周波数に基づいて、腫瘍リスクの補助的評価を行うというものである。しかし、本願には、予測される腫瘍と頭頸部の運動振幅及び振動周波数との間に、どのような自然法則に適合する相関関係が存在するかについて記載はない。また、従来技術においても、頭頸部の運動振幅及び振動周波数と腫瘍の罹患との間に、明確かつ合理的で安定した相関関係があることを裏付ける証拠はない。当業者は、明細書の記載に基づいて当該発明を実施することはできない。
(3)重要なパラメータや技術用語の意味の不明確さ
拒絶査定不服審決第2390267号に係る事例において、本願は、織物製品の図柄とサンプルの図柄とのマッチング度合いの検出精度が低いという問題を解決するため、織物向けの図柄インテリジェントマッチング方法を提案した。
しかし、明細書に記載された重要な数式及び技術用語の意味は不明確である。具体的には、Pjの数式の意味は、意図された物理的意味と矛盾しており、Qjの数式が表す物理的意味は不明確であり、「類似性」の意味も不明確であるため、当業者は当該発明を実施することができない。
(4)重要なデータソースの不足
拒絶査定不服審決第1842287号に係る事例において、再燃予測ネットワークモデルを構築することを目的としており、そのデータソースは全国の過去の石油化学貯蔵タンク事故に関するデータである。
しかし、明細書の背景技術には「従来の方法では、貯蔵タンク事故現場における煙の温度と濃度の高さ、環境要因に起因して貯蔵タンクが再燃する可能性が考慮されていない」と明記されている。当業者は、過去の石油化学貯蔵タンク事故において、現場の煙の温度と濃度、環境要因が測定され、これらのデータと貯蔵タンクの再燃との関連性が記録されているか否かを確認することはできない。
全国の過去の石油化学貯蔵タンク事故に関する事故現場における煙の温度と濃度、環境要因に関するデータを入手できないため、再燃予測ネットワークモデルの構築は不可能であり、本願発明は実施不可能である。
(5)明らかに無効な数式
拒絶査定不服審決第2003748号に係る事例において、従来の安全保護システムの保護タイプが単一であるため、保護効果が低いという課題に対して、無人機器用のAI視覚認識システムが提案された。
しかし、明細書に記載された重要な数式「Y2/Y1-Y1*G=Yg」において、「Y2/Y1」は無人設備の残存電力量で実際に走行可能な距離を表し、「Y1*G」は任務出発点から任務実行点までに要する消費電力量情報を表す。当業者は、距離と電力量は全く異なる次元のデータであり、その両者の減算に物理的な意味が一切ないことを知っている。したがって、明細書に記載された発明は曖昧で不明確である。
(6)アルゴリズムの詳細な技術的手段の説明不足
拒絶査定不服審決第2104712号に係る事例において、エネルギー消費量計算に基づくスピーチトレーニング方法が提案されており、スピーチトレーニングにおける総合的なエネルギー損失、スピーチスキルパワー及び複合的な感情指標を確認し、ニューラルネットワークモデルを用いて総合的なエネルギー損失、スピーチスキルパワー及び複合的な感情指標を分析し、スピーチを行う者に対応するトレーニングの推奨事項を生成する。
しかし、明細書の記載に基づき、当業者は、どのように各検出装置のパワーに基づいて、パワー式を用いて発話速度、声調、感情状態といった様々な次元のパワーを算出するかを把握できず、そのため、総合的なエネルギー損失を求める方法を把握できず、ましてや、ニューラルネットワークモデルを用いて総合的なエネルギー損失、スピーチスキルパワー及び複合的な感情指標などを分析し、スピーチを行う者に対応するトレーニングの推奨事項を生成する方法も把握できない。したがって、技術的手段は不明確である。
(7)アルゴリズムモデルと適用場面の乖離
拒絶査定不服審決第2091283号に係る事例において、合議体は「アルゴリズムモデルを構築することにより産業用ロボットの場面における制御等の課題を解決しようとする場合、アルゴリズムモデルの処理ステップ及び出力結果と産業用ロボットの場面との具体的な結びつけを明確かつ完全に記載することが不可欠な技術的手段となる。言い換えれば、サンプルベースの効率的な世界モデルを構築する上記のステップS1~S5の各ステップにおける処理対象、プロセス、及び結果と、産業用ロボットの場面における過去のインタラクションデータ、生状態データとがどのように関係しているのか、すなわち、ステップS2~S5が適用場面におけるデータに対してどのように処理を実行し、産業用ロボットの場面に関連するどのような結果を導き出すのかに関する記載が不可欠である。しかし、本願明細書において、上記モデルアルゴリズムのステップを当該産業用ロボットの場面に適用することに関する適応性補正に係る技術的手段についての記載は不明瞭である。」と指摘している。
(8)アルゴリズムが課題解決につながらないことは一目瞭然
拒絶査定不服審決第2036982号の事例において、本願の目的は、従来技術において高精度な文字盤変形検出ソリューションが欠如しており、微細な文字盤の変形に対して効果的な検出メカニズムがないという課題を解決することである。
しかし、当業者であれば、明細書の記載に基づき、実際の運用において、本願における変形なしの判定条件、すなわち「多段階変換画像における文字盤の画像をブロック分割した各ブロックの境界画素数と、文字盤に対応する標準輪郭画像の各標準輪郭境界画素数との大きい値と小さい値との間は、整数倍の関係を満たす」ことを達成することが極めて困難であることを理解できる。これは、文字盤が変形なしと判定することはほぼ不可能であることを意味し、電気メーターの部品が正常であるかどうかを正確に識別することは明らかに不可能である。
したがって、本願の明細書には、本願が解決しようとする課題を解決するための技術的手段が記載されているが、当業者であれば、そのような手段を用いて解決しようとする課題を解決することはできない。
七. 終わりに
近年、AI特許出願がますます多くなるに伴い、中国におけるAI特許出願の審査基準も徐々に整備され、中国特許庁も審査指南の改訂を通じてその基準を公開している。本稿では、AI特許出願に関する審査指南の規定及び審判例を紹介することにより、AI特許出願における発明適格性、進歩性、実施可能要件違反及び中国特許法第5条第1項に関する中国特許庁の判断基準について説明した。中国におけるAI関連発明の審査動向や運用を把握し、中国での権利化を円滑に進める上で、少しでも参考になればと思う。
