無効審判段階では、PCT出願の誤訳に関する補正が認められるべきか、この誤訳の存在で当該特許権は補正要件違反の理由により無効とされるべきかについて、見解が分かれています。翻訳文に誤訳が存在していることのみを理由に特許権者による技術的貢献を否定すると、不合理的と思われる一方で、条件なしで特許権者による補正をすべて認めると、登録特許の公表性が損なわれ、一般公衆の信頼や利益を害すると思われます。また、AI翻訳がPCT出願においてますます活用されるにつれ、誤訳に起因する問題も増加すると思われます。本件の二審判決はPCT出願の誤訳に起因する問題について裁判の指針を示し、出願人がPCT出願の翻訳文の正確性を重視すべきであり、さもなければ、権利化に成功しても無効とされるリスクが存在していることを示唆しました。
本件の登録クレーム1は、「炭酸セベラマーと塩化ナトリウムとを含む錠剤であって、塩化ナトリウムが、炭酸セベラマーと塩化ナトリウムとを合わせた重量の0.05重量%~2重量%を占める、錠剤。」です。しかし、本件特許当初のPCT出願書類の記載に基づいて確認できるのは、1価の陰イオン(つまり、塩化ナトリウムにおける塩素)が、炭酸セベラマーと塩化ナトリウムとを合わせた重量の0.05%~2%、0.05%~1%を占めるという内容です。
中国特許庁による審決では、上記の不備により補正要件違反を認定すべきではないと判断されていますが、審決取消訴訟では、一審裁判所も二審裁判所も当方の主張を認め、登録クレームの補正が当初の出願書類の範囲を超えて中国特許法第33条に違反したと判断し、且つこれを理由に被告である中国特許庁による無効審判請求の審決を取り消すとともに、被告に対して無効審判請求の審決を改めて下すよう命じました。
本件の審理では、当方はクレームの補正が新規事項の追加に該当する理由を詳細に陳述し、特許権者の主張に対して反論しました。具体的に、本件特許の明細書に記載された内容について詳細に説明し、クレーム範囲の解釈や中国の審査指南における数値範囲の補正に関する特別な規定について説明し、本件特許の審査経緯を再確認して上記の不備が生じた過程や原因を釈明し、さらに、中国特許法及び実施細則におけるPCT出願の誤訳に関する規定を如何に解釈すべきか、一般公衆の利益と特許権者の利益を如何にトランス良く図るべきかなどについても意見を述べました。
当方の主張は裁判所に認められ、最高裁判所による二審判決において、まず、特許権者が無効審判で提出した補正書は認められるべきではないという被疑審決における認定が正しいと判断されています。さらに、本件特許の登録クレームが中国特許法第33条の規定に合致しているかについて、二審判決において、「国際出願について、中国特許法第33条でいう当初の明細書及び特許請求の範囲とは、最初に提出された国際出願の明細書、特許請求の範囲及び図面を指す。本件特許の登録クレーム 1、2に記載された内容は、当初の明細書及び特許請求の範囲と比べて変わっており、当初の明細書及び特許請求の範囲に対して補正を行ったものに該当する。数値範囲の規定を含むクレームにおける数値範囲への補正は、補正後の数値範囲の2つの限界値が当初の明細書及び/又は特許請求の範囲に確実に記載されており、且つ補正後の数値範囲が当初の数値範囲内である場合にのみ認められる。一方、クレーム 1~2に規定する塩化ナトリウムの限界値はいずれも当初の出願書類に記載されていない。したがって、本件特許の登録クレーム 1、2 の補正は当初の国際出願書類の範囲を超えており、中国特許法第33条に規定する要件を満たしていない。同様の理由により、従属クレーム3~14にも同じ不備がが存在している。」と判断されています。
さらに、二審判決において、「本件特許は、登録された時点から一般公衆に対して公表性を有するものとなり、中国特許法の規定を厳格に遵守すべきである。被疑審決において、特許権者が一定の技術的貢献をしており、提出した中国語訳に確かに誤訳が存在していることを考慮して補正を認めたことは、合理性があるように思われるが、出願人は中国国家段階への移行後、特に出願公開後にクレームの補正を行ったにもかかわらず、最初から最後までこの誤訳を認識できなかったため、これによる結果を受け止めるべきである。」ということも判示されています。
最高裁判所は、上訴を棄却し、原審判決を維持する旨の判決を下しました。
本件の登録クレーム1は、「炭酸セベラマーと塩化ナトリウムとを含む錠剤であって、塩化ナトリウムが、炭酸セベラマーと塩化ナトリウムとを合わせた重量の0.05重量%~2重量%を占める、錠剤。」です。しかし、本件特許当初のPCT出願書類の記載に基づいて確認できるのは、1価の陰イオン(つまり、塩化ナトリウムにおける塩素)が、炭酸セベラマーと塩化ナトリウムとを合わせた重量の0.05%~2%、0.05%~1%を占めるという内容です。
中国特許庁による審決では、上記の不備により補正要件違反を認定すべきではないと判断されていますが、審決取消訴訟では、一審裁判所も二審裁判所も当方の主張を認め、登録クレームの補正が当初の出願書類の範囲を超えて中国特許法第33条に違反したと判断し、且つこれを理由に被告である中国特許庁による無効審判請求の審決を取り消すとともに、被告に対して無効審判請求の審決を改めて下すよう命じました。
本件の審理では、当方はクレームの補正が新規事項の追加に該当する理由を詳細に陳述し、特許権者の主張に対して反論しました。具体的に、本件特許の明細書に記載された内容について詳細に説明し、クレーム範囲の解釈や中国の審査指南における数値範囲の補正に関する特別な規定について説明し、本件特許の審査経緯を再確認して上記の不備が生じた過程や原因を釈明し、さらに、中国特許法及び実施細則におけるPCT出願の誤訳に関する規定を如何に解釈すべきか、一般公衆の利益と特許権者の利益を如何にトランス良く図るべきかなどについても意見を述べました。
当方の主張は裁判所に認められ、最高裁判所による二審判決において、まず、特許権者が無効審判で提出した補正書は認められるべきではないという被疑審決における認定が正しいと判断されています。さらに、本件特許の登録クレームが中国特許法第33条の規定に合致しているかについて、二審判決において、「国際出願について、中国特許法第33条でいう当初の明細書及び特許請求の範囲とは、最初に提出された国際出願の明細書、特許請求の範囲及び図面を指す。本件特許の登録クレーム 1、2に記載された内容は、当初の明細書及び特許請求の範囲と比べて変わっており、当初の明細書及び特許請求の範囲に対して補正を行ったものに該当する。数値範囲の規定を含むクレームにおける数値範囲への補正は、補正後の数値範囲の2つの限界値が当初の明細書及び/又は特許請求の範囲に確実に記載されており、且つ補正後の数値範囲が当初の数値範囲内である場合にのみ認められる。一方、クレーム 1~2に規定する塩化ナトリウムの限界値はいずれも当初の出願書類に記載されていない。したがって、本件特許の登録クレーム 1、2 の補正は当初の国際出願書類の範囲を超えており、中国特許法第33条に規定する要件を満たしていない。同様の理由により、従属クレーム3~14にも同じ不備がが存在している。」と判断されています。
さらに、二審判決において、「本件特許は、登録された時点から一般公衆に対して公表性を有するものとなり、中国特許法の規定を厳格に遵守すべきである。被疑審決において、特許権者が一定の技術的貢献をしており、提出した中国語訳に確かに誤訳が存在していることを考慮して補正を認めたことは、合理性があるように思われるが、出願人は中国国家段階への移行後、特に出願公開後にクレームの補正を行ったにもかかわらず、最初から最後までこの誤訳を認識できなかったため、これによる結果を受け止めるべきである。」ということも判示されています。
最高裁判所は、上訴を棄却し、原審判決を維持する旨の判決を下しました。
