中国弁護士 王 国秀
北京魏啓学法律事務所
 
本稿は、商業用店舗の装飾デザインが法的保護を得られるのか否かについて、また、「剽窃」された際の権利救済の在り方について、現行の法律規定及び関連する訴訟事例から考察するものである。

I. 店舗装飾に対する保護の根拠となる法律規定

『商標法』

商業用店舗における商標標識、ロゴマークなどは当然のことながら、商標法の保護対象となるが、複数の要素が組み合わされて一体となった装飾デザインは、商標法の関連法律に基づいて保護するのが難しいのが現状である。しかし、実務においては、権利侵害者が権利者の商標などの店舗の装飾デザインを複製・模倣するケースが多く見られる。このような場合、権利者は商標権侵害と不正競争を併せて主張して権利侵害訴訟を提起することが多くなっている。

『特許法』

店舗の装飾デザインは、独立した製品に付されているわけではないので、その全体を意匠特許に基づいて保護するのは難しいが、店舗の看板などに意匠特許を取得させることで、類似デザインを使用している店舗の看板に対して、権利を保護する措置を講じることができる。

『著作権法』

商業用店舗の装飾デザイン、すなわち空間レイアウト、色彩、ライン、造形、陳列、装飾などの組み合わせに独創性があり、美術著作物に該当する場合、著作権法による保護を受けることができる。ただし、いかなる装飾も一律に著作権法の保護対象となるわけではなく、商業用店舗の装飾デザインが著作権法における美術著作物に該当するには、少なくとも以下の3つの要件を満たさなければならない。まず、美感に富み、且つ.その装飾の美感と実用的機能が分離できなければならない。次に、美術著作物として求められる高い独創性を備えていなければならない。さらに、これらの要件を満たした上で、著作権侵害に該当するか否かは、「接触」と「実質的類似」の基準に基づき、具体的に判断しなければならない。

中国では著作権の「無方式主義(審査が不要で、自動的に発生すること)」が採用されており、著作物の創作が完了した時点で、自動的に著作権を享受できる。それでも、筆者は、店舗装飾のデザインの創作が完了した段階で、積極的に著作権登録を申請することを推奨する。その理由としては、まず、著作権登録手続きに要する費用や時間的コストがさほど高くないからである。弊所が代理した案件では、通常、申請を提出して1ヶ月程度で登録証を取得できている。さらに、権利保護の局面において、著作権登録証明書は、権利の帰属を証明する有力な「初歩的証拠」となり得るからである。

実際に、著作権登録照会プラットフォームを通じて検索してみたところ、例えば著作物名称が「店舗」、著作物の種類が「美術著作物」として登録・公告されている情報が確認された。このことからも、店舗装飾のデザインのレンダリングなどを著作権登録することは、実務において、十分に実行可能であると言える。

『不正競争防止法』

実務において、「不正競争防止法」第7条に基づき保護が主張されているのは、通常、商品の名称、包装・装飾、ひいては製品の形状・構造であった。しかし、2022年に施行された司法解釈により、商業用店舗の全体的な営業イメージ(経営者の営業場所の装飾、営業用具のスタイル、従業員のユニフォームなどによって構成される独特のスタイルを持つ全体的な営業イメージ)も「装飾」の範囲に含まれることが明確にされた。つまり、店舗の装飾によって形成された全体的な営業イメージが「一定の影響力を有する装飾」を構成する場合、不正競争防止法によって保護される合法的な権益と見なされることになる。

II. 商業用店舗の装飾に関する訴訟事件

筆者は、権利者がその店舗装飾のデザインを「剽窃」、「模倣」している権利侵害者に対して著作権侵害や不正競争で提訴した判例を検索し、その中から一般消費者に対して、大衆化された店舗の事例をいくつか選択した。

1. ある宝石店の装飾デザインが著作権法で保護された事件1

                                   原告店舗                                                                             被告店舗

 

本件において、原告はジュエリーショップのオープンに際して、第三者のデザイン会社にインテリアデザインを依頼し、そのデザイン著作物に基づき内装工事をして開業した。さらに、原告は店舗イメージの美術著作物について著作権登録をした。その後、原告は、被告がジュエリーショップを同様に開設し、原告と類似しているインテリアデザインを使用し、且つ、被告がその前に原告のデザイン著作物に実際に接触しているという事実を発見した。そのため、原告は被告のジュエリーショップが使用しているインテリアデザインがその著作権を侵害しているとして、被告を提訴した。被告は、原告の著作物には独創性がなく、且つ被告のデザインは、原告の著作物と実質的類似に該当しないと反論した。

これに対して、北京知的財産権裁判所は以下のように認定した。

作者によって、パブリックドメインでよく見られる赤、黒、多重のアーチ型ドアといった要素が採用されているものの、それらが重層的に配置されたアーチ門の仕切りによって廊下が形成され、その縁に白いライトが埋め込まれ、空間の突き当たりに反射鏡が設置されている。さらに、全体に赤い壁と天井、黒い反射性の床を採用することで、渾然一体となった視覚効果が生み出され、空間のレイアウトや奥行きが強調されている。こうした設計には作者の取捨選択、配置、レイアウトが含まれており、一定の独創性が認められる。したがって、本件係争著作物は、著作権法が定める著作物の独創性に関する要件を満たしており、著作権法による保護が受けられるべきである。

本件係争著作物と係争店舗のイメージを対比したところ、両者の相違点は主に、係争店舗のアーチ門の仕切りの間に「花形」の窓口がある点、カウンターの形状や材質が同一でない点、係争店舗の黒い床に白い紋様がある点などであった。しかし、両者の視覚的な効果を全体的に観察すると、一般大衆の視点からは、上記の相違点は両者の視覚効果における実質的な差異を構成するには不十分である。したがって、両者は実質的類似に該当する。 

すなわち、たとえ著作物の中にパブリックドメインに属する要素などが含まれていたとしても、作者のレイアウトや配置などによって生み出された独創的な表現については、著作権法の保護が与えられるべきである。また、実質的類似に該当するか否かについては、侵害を訴えられたデザインが原告著作物の独創的な表現を使用しているか否かという点を重点的に考察し、一般大衆の視点から全体の視覚的効果に基づいて判断されるべきである。

2. デカトロンが福建省のある会社を訴えた不正競争事件2
 
 
                                                                        (デカトロン店舗)
 
デカトロンは自社が展開するスポーツ用品量販店の店舗装飾が、不正競争防止法に定める「一定の影響力を有する装飾」に該当すると主張し、同様のスポーツ用品店を経営し、且つ類似の店舗装飾を使用している被告に対して、不正競争を理由に訴訟を提訴した。本件の主な争点は、デカトロンが保護を求めている店舗装飾が特有性を有しているか否か、及び被告が使用している装飾が消費者の混同を招きやすいか否かいう点であった。これに対して、一審裁判所は混同を招くことにはならないと認定したが、二審裁判所は、一審の認定を取消して、デカトロンの装飾は、サービス提供者を識別する機能を果たしており、不正競争防止法が保護する特有の包装・装飾に該当すると認定した。さらに、汎用的な装飾要素については、経営者は十分に利用し、互いに参考にし、学び合うことができるが、他者が先に使用している商品出所の識別機能を有する特有の包装・装飾については、市場の混同や誤認を招くに足るような全面的な模倣を行うことは許されないと特に指摘した。二審判決では、被告に対して、デカトロンの経済的損失及び合理的な費用として、計200万元の賠償を命じた(本案は被告による虚偽宣伝などの行為も含んでおり、この金額はそれらを合算した賠償額である)。

ニ審裁判所の認定は以下の通りである。

デカトロンが保護を求めた店舗装飾は、顕著な全体的なイメージを形成しており、且つサービスの機能性とは無関係なものである。当該装飾は、長期間の使用と大量の宣伝活動を経て、関連公衆がその包装・装飾の全体的なイメージとデカトロンの店舗とを結びつけるのに十分である。すなわち、そのサービスの出所を識別する機能を果たしており、不正競争防止法が保護する特有の包装・装飾に該当する。

原告と被告双方の装飾を比較すると、全体的なスタイルのみならず、壁面の広告写真、ポスター及びスポーツをする人物のアイコンといった細部要素の選択においても多くの類似点が存在する。関連公衆が通常の注意力で接した場合、両者の差異を認識することは困難であり、両者の装飾は類似に該当すると認定すべきである。

また、再審裁判所は二審判決を維持した上で、被告が混同を招くような宣伝行為を行っていた点についても次のように指摘した。

被告が度重なる宣伝活動において、スポーツアウトドアブランドのフランチャイズ分野における「デカトロン」であると自らを称していた状況に鑑みれば、デカトロンと類似する店舗装飾を使用する行為は、関連公衆に容易に混同を生じさせ、両者の間にライセンス契約や関連企業などの密接な関係があると誤認させるおそれが極めて高い。
 
3. デカトロンが北京某社・広東某社を提訴した不正競争事件3

デカトロンが同様の主張に基づき提起した訴訟でありながら、本案は先の事例とは正反対の判決結果となった。その敗訴の原因について判決文から見ると、デカトロンが保護を主張した22種類の装飾要素は、安定的且つ統一的に使用されておらず、安定的で統一的な全体的な営業イメージを形成しているとは認められなかった点にある。言い換えれば、デカトロンが主張した22種類の装飾要素は、異なる時期や異なる地域の複数の店舗から抽出されたものに過ぎず、現実にはこれら22種類の要素をすべて一貫して使用している店舗は存在していなかった。

III. まとめ

商業用店舗の装飾デザインにおいて、著作権法による保護を受けるためは、それが著作権法の意義における独創性の高さに達しているか否かということがポイントになる。経営者は、初期のデザイン創作段階から権利帰属に関する証拠を確実に保存しておくべきであり、著作権登録などによって、著作権登録証明書を取得しておくことが、後日になってからの権利保護活動を円滑に進める上で肝要である。

一方、不正競争防止法による保護を求める際に明確にしておくべき点は、同法が保護する「一定の影響力を有する装飾」とは、個別の要素のことを言うのではなく、各装飾要素の選択、配列、組み合わせによって構成される全体的な営業イメージのことを言うということである。たとえその中にパブリックドメインに属する汎用的な要素が含まれていたとしても、それらが商品やサービスの出所を識別し得る特有性を形成している限り、不正競争防止法による保護対象となり、第三者によって類似する装飾デザインを模倣したり使用を差し止めたりする権利が生じる。

さらに、チェーン展開を行う経営者が異なる地域で複数の店舗を運営している場合、各店舗に共通する装飾要素を継続的・安定的・統一的に使用するように留意しなければならない。訴訟において関連要素を主張・抽出する際にも、各店舗で統一して使用されている共通要素に重点を置いて選択することが、法廷において認定を得やすくするために、極めて重要な戦略となる。 

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1一審:(2023) 京 0105 民初 35342 号、二審:(2024) 京 73 民終 1868 号
2一審:(2020) 皖02民初110号、二審:(2021) 皖 民終1478号、再審:(2023) 皖 民申6586号
3一審:(2021)京0107民初15817号、二審:(2023)京73民終994号