【事件番号】(2023)最高法知行終913号(「組織閉塞剤」に係る特許出願事件)
【裁判要旨】
拒絶審決に引用されたいわゆる「参考文献」は、拒絶査定に記載された引用文献の開示内容や技術常識を裏付けるものではなく、引用文献や技術常識に示されていない技術的示唆の存在を証明するためのものである。これは実質的に、技術常識以外の新たな証拠及び新たな証拠の組合せを導入することとなり、手続き違反に該当する。
本件出願は、止血剤の調製に用いられる組織閉塞剤に関する発明であり、組織閉塞剤の主成分が13個のアミノ酸からなるIEIKIEIKIEIKI(略称:IEIK-13)で構成されるペプチドであることを規定している。拒絶査定通知では、引用文献1のRADA及びEAKAの繰り返し単位からなる16個のアミノ酸で構成されるペプチド(即ち、RADA-16及びEAKA-16)と技術常識1に基づき、本願のIEIK-13は容易に想到できるものであると判断された。不服審判において、合議体は拒絶査定の引用文献に加えて参考文献1、2をさらに引用し、先行技術文献にはIEIKの繰り返し単位に関する記載があり、しかも奇数個のIEIK-9が開示されているとして、引用文献1と技術常識からIEIK-13に容易に想到できるという結論に至った。
審決取消訴訟において、当方は、①実体審査段階で引用されなかった新たな参考文献を不服審判段階で導入して進歩性判断を行った本件拒絶審決が、新たな証拠の導入による手続き違反に該当する点、②進歩性欠如という判断が妥当ではない点を主張した。しかし、残念ながら、一審裁判所は当方の主張を認めず、「参考文献は拒絶査定に引用された引用文献の開示内容を裏付けるものにすぎない」とした審判官側の主張を採用した。
そこで、控訴状及び二審の開廷審理において、当方は、本件審決、一審判決の不合理な判断について反論をした上で、不服審判で引用された「参考文献」についてさらに詳細な解読を行い、「参考文献にはIEIK-9が開示されている」とした審判官の事実認定が誤りであると指摘した。
二審裁判所は、当方の請求をすべて認容し、不服審判で引用された「参考文献」は引用文献と技術常識に示されていない技術的示唆の存在を証明するためのものであり、実質的には技術常識以外の新たな証拠及び新たな証拠の組合せの導入となるため、手続き違反に該当すると判断した。さらに、二審裁判所は、引用文献1と技術常識のみでは、本願発明に至ることはできないとして、本願は進歩性を有すると認めた。その結果、一審判決及び拒絶審決を破棄して中国特許庁に差し戻す旨の二審判決が言い渡された。
【裁判要旨】
拒絶審決に引用されたいわゆる「参考文献」は、拒絶査定に記載された引用文献の開示内容や技術常識を裏付けるものではなく、引用文献や技術常識に示されていない技術的示唆の存在を証明するためのものである。これは実質的に、技術常識以外の新たな証拠及び新たな証拠の組合せを導入することとなり、手続き違反に該当する。
本件出願は、止血剤の調製に用いられる組織閉塞剤に関する発明であり、組織閉塞剤の主成分が13個のアミノ酸からなるIEIKIEIKIEIKI(略称:IEIK-13)で構成されるペプチドであることを規定している。拒絶査定通知では、引用文献1のRADA及びEAKAの繰り返し単位からなる16個のアミノ酸で構成されるペプチド(即ち、RADA-16及びEAKA-16)と技術常識1に基づき、本願のIEIK-13は容易に想到できるものであると判断された。不服審判において、合議体は拒絶査定の引用文献に加えて参考文献1、2をさらに引用し、先行技術文献にはIEIKの繰り返し単位に関する記載があり、しかも奇数個のIEIK-9が開示されているとして、引用文献1と技術常識からIEIK-13に容易に想到できるという結論に至った。
審決取消訴訟において、当方は、①実体審査段階で引用されなかった新たな参考文献を不服審判段階で導入して進歩性判断を行った本件拒絶審決が、新たな証拠の導入による手続き違反に該当する点、②進歩性欠如という判断が妥当ではない点を主張した。しかし、残念ながら、一審裁判所は当方の主張を認めず、「参考文献は拒絶査定に引用された引用文献の開示内容を裏付けるものにすぎない」とした審判官側の主張を採用した。
そこで、控訴状及び二審の開廷審理において、当方は、本件審決、一審判決の不合理な判断について反論をした上で、不服審判で引用された「参考文献」についてさらに詳細な解読を行い、「参考文献にはIEIK-9が開示されている」とした審判官の事実認定が誤りであると指摘した。
二審裁判所は、当方の請求をすべて認容し、不服審判で引用された「参考文献」は引用文献と技術常識に示されていない技術的示唆の存在を証明するためのものであり、実質的には技術常識以外の新たな証拠及び新たな証拠の組合せの導入となるため、手続き違反に該当すると判断した。さらに、二審裁判所は、引用文献1と技術常識のみでは、本願発明に至ることはできないとして、本願は進歩性を有すると認めた。その結果、一審判決及び拒絶審決を破棄して中国特許庁に差し戻す旨の二審判決が言い渡された。
