中国弁護士  方  善姫
北京魏啓学法律事務所
 
はじめに

特許権の保護を強化させ、「周期が長い、立証が難しい、賠償が低い」などの問題をできるだけ解決するために、特許権侵害紛争において、立証妨害規則を適用する事例が徐々に増えている。立証妨害規則は権利者の立証責任を軽減するのに有利であるが、「(ある権利を)主張する者は、立証責任を負う」という民事訴訟の基本的な立証原則の下、立証妨害規則を濫用してはいけない。本文は司法実務と結びつけて、特許権侵害事件における立証妨害規則の適用条件、結果などを分析し、立証が難しい権利者に対して実務上のアドバイスをいくつか提案する。

I. 立証妨害規則の法的根拠

立証妨害規則は、通常、「最高人民法院による民事訴訟の証拠に関する若干の規定」第95条を指し、つまり、一方当事者が証拠を管理しているにもかかわらず正当な理由なくその提出を拒否し、かつ要証事実について立証責任を負う当事者が、当該証拠の内容が管理者に不利であると主張した場合、裁判所は当該主張が成立すると認定することができる。

知的財産権にかかる訴訟において、「証拠開示制度」に関する規定の実施を保障するため、法釈(2020)12号「最高人民法院による知的財産権に係る民事訴訟の証拠に関する若干の規定」(以下、「『知的財産証拠規定』」という)第25条にも立証妨害に対して相応の規定が定められている。すなわち、裁判所は法により当事者に関連証拠を提出するよう要求した場合、正当な理由なく提出を拒否したり、虚偽の証拠を提出したり、証拠を隠滅したり、または証拠を使用不能にしたその他の行為を実施した場合、裁判所は、当該証拠に係る証明事項に関する他方の当事者の主張が成立すると推定することができる。当事者が前項でいう行為を実施し、民事訴訟法第111条で規定されている情状に該当する場合、裁判所は法により処理する。

特許権侵害訴訟において、立証妨害規則は、侵害の判定及び損害賠償の認定に利用される可能性がある。現在の司法実務では、損害賠償の認定においてより多く利用されている。

II. 特許権侵害事件の損害賠償の認定における立証妨害規則の適用

特許権侵害訴訟の実務において、損害賠償を確定するとき、立証妨害規則が適用されるのは主に、権利者が自発的に裁判所に被疑侵害者に対して証拠の提供を命じるための申請を提出するか、裁判所は事件の審理過程において、職権により侵害者に証拠の提供を命じることからである。
1.適用の条件

(1)証明事実及び裁判の結果にとって重要であるか否か

周知のように、中国において、民事訴訟の立証に関する基本原則は「主張する者は、立証責任を負う」ことである。そのため、裁判所は損害賠償額を確定する際に、「主張する者は、立証責任を負う」という一般的な証拠規則を十分に利用し、必要に応じて「書証提出命令、証拠妨害制度」などの特別規則を適用する。つまり、裁判所は事件における証拠を通じて賠償額を十分に確定することができ、被告が侵害行為により得た利益に関する資料を提出する必要がない場合、直接に一般的な立証規則に基づいて賠償額を判定することができる。しかし、事件における証拠を通じて被告の侵害行為により得た利益を確定することが困難な場合、または原告の賠償請求額が合法的で、合理的であるかを判断し難しく、かつ被告より把握されている資料が証明事実及び裁判の結果に重要な影響がある場合、裁判所は被告に対して侵害行為により得た利益に関する証拠の提出を命じる。

弊所が代理した(2020)粤03民初5611号事件では、原告が2018年のクレーム申立て記録に基づいて計算した被告の権利侵害により得た利益は、裁判所がアリババから取り寄せたこの3年間の販売記録に示されたその侵害により得た利益との差が大きい状況において、裁判所は被告が関連書証を提出しなければ、被疑侵害製品の販売量と利益の状況を明らかにすることが難しい、侵害により得た利益が法定賠償の上限額を超えているかどうかは確定し難しいと判断した。よって、裁判所は被告が侵害により得た利益に関する証拠を提出することは、関連事実の証明及び裁判の結果にとって、とても重要であると判断した。

(2)権利者がすでに立証に尽力したか

立証妨害制度は権利者の立証負担を軽減するために制定されたが、権利者の立証義務が直接侵害者側に転換されることを意味するのではない。立証妨害規則の適用の前提は依然として権利者が「主張する者は、立証責任を負う」という民事訴訟の立証基本原則に従い、初歩的な立証を行わなければならない。筆者は多くの事例において、権利者が「立証に尽力する」義務を履行していなかったため、裁判所が立証妨害規則を適用しなかったケースが多いことに気づいた。

現在の司法実務によれば、権利者の「立証に尽力」は「高度の蓋然性」の証明基準に達しなくてもよいが、権利者は少なくとも、侵害者の年報、ホームページ、電子商取引プラットフォームにおける販売データ、業界誌やニュースにおける宣伝内容などのあらゆるルートを通じて立証し、侵害者が権利侵害により得た利益を計算し、必要な場合、客観的な原因で侵害行為により得た利益に関する重要な証拠を収集できない事由をさらに裁判所に説明する必要がある。

前記弊所が代理した(2020)粤03民初5611号事件では、弊所は権利者の依頼を受けて、訴訟手続きの前半に権利侵害により得た利益の状況を尽力して立証した。すなわち、権利者が2018年にクレームを申立ていた際の記録に示された月間販売量に基づいて、侵害者の権利侵害により得た利益が請求額を上回ると推算できると主張した。また、複数の侵害リンクが権利者のクレーム申立てによって閉鎖されたので、権利者は客観的に関連証拠を収取できない状況を裁判所に説明した。さらに、裁判所に電子商取引プラットフォームへの販売データの取り寄せを申請したが、電子商取引プラットフォームは2年近くの店舗販売データしか保留しなかったため、侵害製品のすべての販売履歴を提供することはできないものの、当該販売履歴は、被告の店舗のバックグラウンドで完全に表示することができる。最終的に、裁判所は上記の状況を総合的に考慮し、当方の申請を支持し、被告に対して権利侵害により得た利益に関する財務帳簿などの証拠を提出するよう要求した。

(3)侵害行為に関連する帳簿、資料が主に侵害者により把握されている場合、侵害者が正当な理由なく、提出しないか、又は虚偽の帳簿や資料を提出した。

当該条件について、通常権利侵害事件において、被疑侵害製品の侵害行為者が確定され、侵害者が十分に反論できる他の証拠がない限り、権利侵害により得た利益に関する証拠も侵害者に把握されていると思われる。侵害者が権利侵害により得た利益に関する証拠を把握している状況において、提出拒否に該当するかどうかについて、主には提出しない正当な理由があるか否かによる。司法実務において、侵害行為に関する帳簿、資料などは通常侵害者により把握されている。侵害者は侵害紛争が発生する前に既に侵害行為に関する帳簿、資料を廃棄した、または企業内部の保管不届きなどの理由で提出できないと主張しても、裁判所はこれらが「正当な理由があって提出しない」状況に該当するとは通常認めない。

電子商取引プラットフォームでネット販売を行っている被疑侵害製品について、店舗のバックグラウンドにおける販売履歴は削除または編集ができないため、侵害者は必然的に当該証拠を把握しており、既に削除された、または製品が既に撤去されたなどの理由で提供できないとの主張はすべて「正当な理由がなく提出しない」状況に該当する。弊所が代理した(2020)粤民終682号事件では、二審裁判所は当方の立証が、被告の被疑侵害製品を販売することにより得た利益を初歩的に証明できたと認定し、証拠開示裁定を下して被告に対して被疑侵害製品のオンライン販売データ、帳簿及び資料の提供を要求した。しかし、被告は当該裁定を受けた後、裁判所に「ネット販売電子データ及び帳簿の開示に関する状況説明」を提出し、被疑侵害製品はクレームの申立てや売れ行きがよくないなどの原因で、販売リンクは既に撤去、削除されて回復することができず、関連リンクの販売記録も見つけることができないため、関連記録を提供することができないと主張した。また、被告は微小企業であり、完全な財務制度を構築する能力がなく、被疑侵害製品を記録する帳簿などが存在しないなどを説明した。当方はリンクが撤去、削除されてもバックグラウンドからすべての取引記録とデータを調べることができることを証明するために、電子商取引プラットフォームの関連規則を提出した。裁判所は調査を行った上、被告が主張した理由が検証を経て、事実ではないと判断し、それに基づいて、被告の行為は立証妨害に該当すると認定した。

2. 立証妨害の適用結果

「最高人民法院による特許権侵害紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈(二)」第27条によれば、裁判所は損害賠償額を確定するとき、立証妨害を適用する結果は、「権利者の主張及びその証拠に基づいて、侵害者が侵害により得た利益を認定することができる。」。しかし、2021年から施行された改正後の特許法第71条に「権利者の主張及び提出した証拠を参考にして賠償額を判定することができる」と規定されている。

実務において、上記の2つの状況とも存在している。例えば弊所が代理した上記2つの事件では、被告が正当な理由なく侵害により得た利益に関する証拠を拒んで提出しなかったため、裁判所は当方が主張する数百万の賠償額を全額支持した。弊所が代理した(2017)沪73民初56号事件では、当方は証拠開示を申請するとともに、被告が証拠提出を拒否した場合、当方が主張する300万元の損害賠償を全額支持するよう請求した。裁判所は審理を経て、以下のように認定した。本件では、原告が提出した証拠を通じて、被告が権利侵害により得た利益はその請求する賠償額と同じであるか、またはそれより上回るかを確定することができないため、原告の損害賠償に関する主張を全額支持すべきではない。しかし、本件の重要な事実として被告が開廷審理の前の会議では財務帳簿を提供したものの、監査の過程においてその提出を拒否したので、立証妨害に該当する。また、被告は財務帳簿を提出しなければ、原告の証拠をもって100万元以下の賠償額が認定される可能性が高いことを知りながら、証拠を提出して反論しなかった。そのため、裁判所は証拠及び客観的な事実を尊重して、被告に対する不利な推定を行い、100万元の法定賠償の上限額以内に、比較的に高い賠償額を認定し、本件の損害賠償額が99万元だと最終的に判決した。

まとめると、裁判所が立証妨害規則を適用した結果、権利者が主張する賠償額を全額支持するか、権利者の計算方法を参考にするかについては、事件の具体的な状況による。その中、権利者が主張する侵害により得た利益の根拠が十分であるか否かは最も重要である。しかし、いずれにしても、立証妨害行為がある被告に不利な結果を負わせる。

III. 特許権侵害判定における立証妨害規則の適用

特許権侵害紛争において、特に製造設備、B to B分野の侵害事件は、特許権侵害行為に対する権利者の立証が難しい問題がよくあり、このような事件では、権利者は公開ルートを通じて侵害証拠を保全し難しい。そのため、多くの権利者は裁判所に証拠保全を申請することを検討する。実務上、特許権侵害判定における立証妨害規則の適用が主に、権利者による証拠保全の申請から由来する。

1. 適用要件

(1)裁判所は侵害行為に係る証拠に対して証拠保全を実施した

「中華人民共和国民事訴訟法」第81条によると、証拠が滅失、又はその後に取得することが困難となるおそれのある場合は、当事者は訴訟手続中に裁判所に証拠保全を申請することができ、裁判所も自発的に保全措置を講ずることができる。

知的財産権にかかる民事裁判の実務において、証拠保全は証拠を取得する非常に重要な方法の一つである。「知的財産証拠規定」では、知的財産権民事事件の特徴と結びつけて、証拠保全申請に対する審査、保全措置、証拠保全を妨害した結果、保全された証拠を破壊する法的責任、証拠保全参加人、証拠保全調書の作成、被申請者の異議申立などに対して、相応の規定が定められている。

    特許権侵害裁判実務において、裁判所は通常当事者の申請に基づいて証拠保全を実施する。特許権侵害紛争事件の権利者として、公開ルートを通じて侵害証拠を保全し難しい場合、裁判所に証拠保全を申請することができるが、権利者が侵害行為の存在に対して、初歩的に立証することが前提となる。被疑侵害製品の実物を公証手続きを通じて保全できなくても、公証手続きを経ていない被疑侵害製品の実物を提出し、被疑侵害者の宣伝資料、ホームページまたは展示会の宣伝資料などの証拠における侵害製品と係争特許の技術的特徴に対応する部分と合わせて、一連の証拠をもって被疑侵害製品が係争特許の保護範囲に入る可能性が高いことを証明し、さらにこれらの証拠の間に完全な証拠チェーンを形成しなければならない。また、権利者は被疑侵害製品の業界取引習慣または流通方式に対する説明を通じて、公開ルートを通じて証拠を収集し難しいという客観的な事実を裁判所に説明することができる。裁判所は権利者の証拠を総合的に考慮した上で証拠保全を実施するかどうかを判断する。裁判所が証拠保全手続きを起動してこそ、特許権侵害行為に対して、証拠妨害規則を適用することができる。

(2)被疑侵害者は裁判所の侵害行為調査に対して妨害行為を行った

司法実務において、被疑侵害者が裁判所による侵害行為の調査に対して実施する妨害行為は、通常消極的不作為と作為行為がある。消極的不作為行為は裁判所が被疑侵害者に証明事実に関する証拠の提出を命じたが、被疑侵害者が正当な理由なく提供を拒否した状況である。作為行為は主に被疑侵害者が裁判所の証拠保全を拒んで協力せず、裁判所が侵害行為に関わる証拠に接触できないようにすること、または裁判所が既に保全措置を講じた証拠に対して破壊、不法移転、廃棄をすることなどが含まれる。

2. 立証妨害の適用結果

(1)侵害行為に関する権利者の主張の成立を直接に推定する

裁判所が既に保全手段を講じた証拠について、被疑侵害者より上記妨害行為を実施したことで、被疑侵害製品と係争特許との技術対比ができず、侵害判定ができない場合、裁判所は侵害行為に関する権利者の主張が成立すると推定する。

例えば、(2019)蘇05知初1122号事件では、裁判所は訴訟を提起する前の権利者の保全申請に基づいて保全措置を講じて、被疑侵害製品に対して、現場での撮影を実施し、調書を作成し、保全した証拠を破壊または移転してはならないことを被疑侵害者に明確に通知した。しかし、一審において、裁判所は訴訟前に保全された被疑侵害製品に対して現場検証を行ったところ、被疑侵害者より保全場所を移転されたことを発見し、被疑侵害製品と係争特許との技術対比を行うことができず、被疑侵害製品が係争特許の保護範囲に入るか否かという重要な事実は究明できなかった。そのため、一審判決では証拠妨害規則を適用し、被疑侵害製品が係争特許の保護範囲に入ると推定した。

上記の事例から見れば、裁判所が証拠妨害規則を適用して、侵害行為の成立に関わる権利者の主張を直接推定するポイントは、裁判所より保全された被疑侵害製品における係争特許の技術的特徴に対応する部分が、被疑侵害者の妨害行為によって完全に破壊または除去され、保全したときの証拠に基づいて侵害行為が成立するかどうかを判定することはできないものの、権利者より提出した初歩的な証拠及び事件におけるその他の証拠に基づいて、侵害行為が成立する蓋然性が高いことにある。

(2)被疑侵害者の立証妨害行為が侵害判定に影響を与えない場合、依然として事件における証拠に基づいて侵害判定を行う

被疑侵害者は裁判所が保全した証拠に対して破壊、移転などの妨害行為を行ったが、その立証妨害行為は被疑侵害製品における係争特許の関連技術的特徴と対応する部分を破壊していない場合、または裁判所が証拠保全した写真や動画に基づいて、または事件における他の証拠と合わせて、侵害判定することができる場合、裁判所は侵害行為の成立を直接推定しなく、事件における証拠及び保全した証拠と合わせて、係争特許との対比を行った上で侵害判定を行う。

例えば、(2018)沪民終438号事件において、裁判所は、被疑侵害者の保管不届きで証拠物が毀損されたが、保全した動画と写真に基づいて技術対比を実施できるため、客観的な事実を尊重すべき、立証妨害規則を適用しないと判断した。

したがって、すべての立証妨害行為に対して立証妨害規則を適用できるわけではなく、裁判所の保全した証拠が汚染、破壊されたが、裁判所は事件における証拠及び客観的事実に基づいて侵害行為を判定できる場合、依然として事件における証拠及び客観的事実に基づいて判断する。

(3)司法懲戒

民事訴訟法第114条の規定によれば、訴訟参加人またはその他の者に次のいずれかの行為がある場合に、裁判所は情状の軽重に応じて過料、拘留に処することができる。犯罪に構成する場合、法により刑事責任を追及する。(一)重要な証拠を偽造し、又は隠滅し、裁判所による事件の審理を妨害する行為。

上記の規定に基づいて、民事事件におけるすべての立証妨害行為に対して司法懲戒を処することができる。特許権侵害紛争事件において、特許権侵害行為を判定する際の立証妨害行為に対して司法懲戒を与えた事例が比較的に多い。裁判所は被疑侵害者の立証妨害行為に対して、侵害行為が成立するかを推定する根拠とするだけでなく、その行為に対して司法懲戒を与え、罰金を科する。

例えば(2019)蘇05知初1122号、(2020)蘇05司懲1号事件において、裁判所は被疑侵害者が侵害行為に関する証拠を移転し、証拠の滅失を招いた行為に対して、被疑侵害行為が特許権侵害に該当すると認定し、原告が主張した賠償額を全額支持しただけではなく、同時に、被疑侵害者が無断で訴訟前に保全した証拠を移転し、証拠の滅失を招いた民事訴訟を深刻に妨害する行為に対して司法懲戒を与え、罰金20万元を科した。一方、最高裁判所による(2021)最高法知司懲罰1号事件では、被疑侵害者は最終的に侵害行為に該当しないと判断されたが、一審の経過に実施した立証妨害行為について、最高裁判所は依然として司法懲戒を与え、20万元の高額罰金を科したと判決した。

(4)懲罰的賠償

「民法典」の施行と第4次「特許法」改正に伴い、特許権侵害行為についても懲罰的賠償制度が導入された。「特許法」及び法釈(2021)4号「最高人民法院による知的財産権侵害民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈」(以下「懲罰的賠償司法解釈」という)の関連規定によると、懲罰的賠償の2つの適用条件は侵害の故意と侵害の情状深刻である。

そのうち、「懲罰的賠償司法解釈」第4条によれば、知的財産権侵害の情状が深刻であることの認定について、裁判所は侵害の手段、回数、侵害行為の継続期間、地理的範囲、規模、結果、訴訟における権利侵害者の行為等の要素を総合的に考慮しなければならない。

被告が次の事由のいずれかに該当する場合は、裁判所は情状が深刻であると認定することができる。

(三)権利侵害に係る証拠を偽造、毀損又は隠蔽した場合。

(四)保全裁定の履行を拒否した場合。

よって、被告が証拠保全の裁定を拒んで履行せず、権利侵害に関する証拠を偽造、破壊または隠匿した場合、権利侵害の情状が深刻であると認定される可能性があり、同時に侵害の故意がある場合、懲罰的賠償と判定される。

IV.まとめ

特許権侵害紛争事件において、特許権者は特許権侵害行為及び賠償に対する立証が難しいことに直面した場合、積極的に証拠保全又は証拠開示等を申請することができる。しかし、「主張する者は、立証責任を負う」は依然として民事紛争事件の基本原則であり、立証責任を負う権利者としてまずあらゆる立証手段を尽くし、少なくとも主張する事実の可能性を初歩的に証明することができ、裁判所が証拠保全または証拠開示を判断する際に権利者と被疑侵害者の立証責任の相当性及び利益のバランスを実現することができるようにしなければならない。権利者が如何に立証に尽力するかについて、具体的な事件で状況が異なるため、さまざまな方法やルートがある。弊所は各技術分野における権利侵害行為の調査及び権利侵害行為、侵害により得た利益の立証について、豊かな経験があるため、力添えできることがあれば、お問い合わせください被疑侵害者として、特許権侵害紛争事件において、裁判所からの証拠開示命令を受けた場合、または裁判所に証拠保全措置を取られた場合、立証を怠ったり、立証妨害したりするなどの行為を通じて非侵害判定または賠償責任を軽減する目的を達成しようとするのではなく、係争特許に対する無効審判請求、非侵害抗弁、権利者との和解交渉などの方法を通じて自分の利益の最大化を図るべきである。立証妨害行為を実施した場合、最終的な結果は、侵害行為が成立したと推定され、高額の賠償額が判決されるだけでなく、さらに司法懲戒まで与えられる恐れがあることをご注意いただきたい。