法釈〔2025〕5号
最高人民法院 最高人民検察院
知的財産権侵害刑事事件の取扱における
法律適用の若干の問題に関する解釈
最高人民法院 最高人民検察院
知的財産権侵害刑事事件の取扱における
法律適用の若干の問題に関する解釈
(2025年4月7日最高人民法院審判委員会第1947回会議、2025年4月11日最高人民検察院第14次検察委員会第51回会議で可決。2025年4月26日から施行。)
知的財産権侵害に係る犯罪を法律に基づいて懲らしめ、社会主義市場経済の秩序を確保するために、中華人民共和国刑法、中華人民共和国刑事訴訟法等の法律の規定に基づき、司法実務に照らしながら、知的財産権侵害刑事事件の取扱における法律適用の若干の問題について以下のとおり解釈する。
第1条 登録商標所有者の許諾を得ずに、その登録商標と同一の商標を同一種類の商品、役務に使用し、以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第213条に掲げる「同一種類の商品、役務」に該当すると判断される。
(1)行為者が現に製造・販売する商品の名称、現に提供する役務の名称が、権利者の登録商標の指定商品、役務の名称と同一である場合。
(2)商品の名称が異なっても、その機能、用途、主要な原材料、消費対象、販売経路等が同一又は実質的に同一であり、関係公衆が一般に同一種類の商品であると認識する場合。
(3)役務の名称が異なっても、役務の目的、内容、形態、対象、場所等が同一又は実質的に同一であり、関係公衆が一般に同一種類の役務であると認識する場合。
「同一種類の商品、役務」に関する判断は、権利者の登録商標の指定商品、役務と、行為者が現に製造・販売する商品、現に提供する役務とを比較して行うものとする。
第2条 冒用される登録商標と完全に同一であるか、又は、冒用される登録商標と実質的に区別がつかず、関係公衆を誤認させる商標は、刑法第213条に掲げる「その登録商標と同一の商標」に該当すると判断される。以下の各号のいずれかに該当する場合、冒用される登録商標と実質的に区別がつかず、関係公衆を誤認させる商標として判断される。
(1)登録商標のフォント、大文字・小文字、文字の縦横の配列等を変更していても、登録商標と実質的に区別がつかないもの。
(2)登録商標の文字、アルファベット、数字等の間隔を変更していても、登録商標と実質的に区別がつかないもの。
(3)登録商標の顕著な特徴の反映に影響を与えない程度で、登録商標の色彩を変更したもの。
(4)登録商標の顕著な特徴の反映に影響を与えない程度で、商品の普通名称、型番等の、顕著な特徴を有しない要素のみを登録商標に追加したもの。
(5)立体登録商標の三次元的表示及び平面要素と実質的に区別がつかないもの。
(6)登録商標と実質的に区別がつかず、関係公衆を誤認させるその他のもの。
第3条 登録商標所有者の許諾を得ずに、その登録商標と同一の商標を同一種類の商品に使用し、以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第213条に掲げる「情状が重大な場合」に該当すると判断される。
(1)不法所得額が3万人民元以上、又は、不法営業額が5万人民元以上である場合。
(2)二以上の登録商標を冒用し、不法所得額が2万人民元以上、又は、不法営業額が3万人民元以上である場合。
(3)刑法第213条から第215条に掲げる行為を実施したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、2年以内に再度実施し、不法所得額が2万人民元以上、又は、不法営業額が3万人民元以上である場合。
(4)情状が重大であるその他の場合。
登録商標所有者の許諾を得ずに、その登録商標と同一の商標を同一種類の役務に使用し、以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第213条に掲げる「情状が重大な場合」に該当すると判断される。
(1)不法所得額が5万人民元以上である場合。
(2)二以上の登録商標を冒用し、不法所得額が3万人民元以上である場合。
(3)刑法第213条から第215条に掲げる行為を実施したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、2年以内に再度実施し、不法所得額が3万人民元以上である場合。
(4)情状が重大であるその他の場合。
商品の登録商標と役務の登録商標の両方を冒用し、商品の登録商標の冒用による不法所得額が本条第1項に掲げる基準を満たさなくても、役務の登録商標の冒用による不法所得額との合計が本条第2項に掲げる基準を満たした場合、刑法第213条に掲げる「情状が重大な場合」に該当すると判断される。
不法所得額、不法営業額が本条前3項に掲げるそれぞれの基準の10倍以上になった場合、刑法第213条に掲げる「情状が特に重大な場合」に該当すると判断される。
第4条 登録商標冒用商品を販売し、以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第214条に掲げる「知りながら」と判断することができる。ただし、真に知らなかったことを示す証拠がある場合は除く。
(1)自身が販売する商品に付された登録商標に変造、すり替え又は覆い被せが施されたことを知っている場合。
(2)商標登録者の許諾書類の偽造、変造を行ったか、又は当該書類が偽造・変造されたことを知っている場合。
(3)登録商標冒用商品を販売したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、同一種類の登録商標冒用商品を再度販売した場合。
(4)正当な理由なく市場価格より著しく低い価格で商品の購入又は販売を行った場合。
(5)登録商標冒用商品の販売を行政法執行機関、司法機関に発見された後、侵害商品や会計伝票等の証拠の移転や破棄、又は虚偽証明の提供を行った場合。
(6)登録商標冒用商品であることを知っていると判断できるその他の場合。
第5条 登録商標冒用商品であることを知りながらその販売を行い、不法所得額が3万人民元以上である場合、刑法第214条に掲げる「不法所得額が大きい場合」に該当すると判断される。以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第214条に掲げる「その他の重大な情状」に該当すると判断される。
(1)売上額が5万人民元以上である場合。
(2)刑法第213条から第215条に掲げる行為を実施したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、2年以内に再度実施し、不法所得額が2万人民元以上、又は、売上額が3万人民元以上である場合。
(3)登録商標冒用商品がまだ在庫中で、その価額が本項前2号に掲げる売上額基準の3倍以上になったか、又は、販売済商品の売上額が本項前2号に掲げる基準を満たさなくても、在庫商品の価額との合計が本項前2号に掲げる売上額基準の3倍以上になった場合。
不法所得額、売上額、価額、又は、売上額と価額との合計が、本条の上記各項に掲げるそれぞれの基準の10倍以上になった場合、刑法第214条に掲げる「不法所得額が莫大であるか、又はその他の特に重大な情状がある場合」に該当すると判断される。
第6条 他人の登録商標の標章を偽造・無断製造するか、又は、偽造・無断製造された登録商標の標章を販売し、以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第215条に掲げる「情状が重大な場合」に該当すると判断される。
(1)標章数が1万件以上、又は、不法所得額が2万人民元以上、又は、不法営業額が3万人民元以上である場合。
(2)二以上の登録商標の標章を偽造・無断製造するか、又は、偽造・無断製造された二以上の登録商標の標章を販売し、標章数が5000件以上、又は、不法所得額が1万人民元以上、又は、不法営業額が2万人民元以上である場合。
(3)刑法第213条から第215条に掲げる行為を実施したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、2年以内に再度実施し、標章数が5000件以上、又は、不法所得額が1万人民元以上、又は、不法営業額が2万人民元以上である場合。
(4)他人により不法に製造された登録商標の標章を販売し、在庫標章数が本項前3号に掲げる基準の3倍以上になったか、又は、販売済標章数が本項前3号の基準を満たさなくても、在庫標章数との合計が本項前3号に掲げる基準の3倍以上になった場合。
(5)情状が重大であるその他の場合。
標章数、不法所得額、不法営業額が本条前項に掲げるそれぞれの基準の5倍以上になった場合、刑法第215条に掲げる「情状が特に重大な場合」に該当すると判断される。
第7条 本解釈でいう「二以上の登録商標」とは、商品、役務の別々の出所を識別する二以上の登録商標を指す。登録商標が異なっても、同一種類の商品、役務に使用され、商品、役務の同一の出所を示す場合、「二以上の登録商標」として判断されない。
本解釈でいう登録商標の標章に係る「件」とは、完全な商標図案を表示した1件の標章を指す。一の有形媒体に、有形媒体から分離して単独で使用することができない複数の標章図案を印刷したものは、1件の標章として判断される。
第8条 刑法第213条に掲げる登録商標冒用の犯罪を行うとともに、当該登録商標冒用商品を販売して犯罪となった場合、刑法第213条の規定に基づき、登録商標冒用罪として罪責認定され、処罰される。
刑法第213条に掲げる登録商標冒用の犯罪を行うとともに、他人の登録商標冒用商品であることを知りながら、それを販売して犯罪となった場合、数罪として処罰される。
第9条 以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第216条に掲げる「他人の専利を詐称」する行為として判断される。
(1)他人の専利証書、専利書類又は専利出願書類の偽造又は変造を行った場合。
(2)許諾を得ずに、製造又は販売を行う製品や製品の包装に他人の専利番号を表示した場合。
(3)許諾を得ずに、契約、取扱説明書又は広告等の宣伝資料において他人の専利番号を使用し、他人の発明特許、実用新案又は意匠であると誤認させる場合。
第10条 他人の専利を詐称し、以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第216条に掲げる「情状が重大な場合」に該当すると判断される。
(1)不法所得額が10万人民元以上、又は、不法営業額が20万人民元以上である場合。
(2)専利権者に30万人民元以上の直接の経済的損失を与えた場合。
(3)二以上の他人の専利を詐称し、不法所得額が5万人民元以上、又は、不法営業額が10万人民元以上である場合。
(4)他人の専利を詐称する行為を実施したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、2年以内に再度実施し、不法所得額が5万人民元以上、又は、不法営業額が10万人民元以上である場合。
(5)情状が重大であるその他の場合。
第11条 著作権者、録音・録画製作者、実演者の許諾を得ずに、又は、許諾書類を偽造・変造して、又は、許諾の範囲を超えて、著作権又は著作隣接権を侵害する行為を実施した場合、刑法第217条に掲げる「著作権者の許諾を得ずに」、「録音・録画製作者の許諾を得ずに」、「実演者の許諾を得ずに」行った行為として判断される。
刑法第217条に掲げる著作物、録音・録画物に通常の方法で署名した自然人、法人又は非法人組織は、著作権者又は録音・録画製作者であると推定され、当該著作物、録音・録画物にはそれ相応の権利が存在すると推定される。ただし、反対の証拠がある場合は除く。
係争著作物、録音・録画物の種類が多く、権利者が分散している事件において、係争著作物、録音・録画物の出版、複製・頒布、情報ネットワークによる公衆送信が不法であることを示す証拠があり、かつ、出版者、複製・頒布者、情報ネットワーク送信者が、著作権者、録音・録画製作者、実演者の許諾を得たことに関する証拠資料を提示できない場合、刑法第217条に掲げる「著作権者の許諾を得ずに」、「録音・録画製作者の許諾を得ずに」、「実演者の許諾を得ずに」行った行為であると判断することができる。ただし、権利者が権利を放棄したこと、係争著作物の著作権又は録音・録画物、実演者の関係権利が中国著作権法により保護されないこと、権利の存続期間が満了したことなどを示す証拠がある場合は除く。
第12条 著作権者又は著作隣接権者の許諾を得ずに、著作物、録音・録画物の複製及び頒布の両方、又は、頒布のための複製を行うことは、刑法第217条に掲げる「複製・頒布」に該当すると判断される。
著作権者又は著作隣接権者の許諾を得ずに、著作物、録音・録画物、実演を、公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において利用が可能となるように、有線又は無線の方法により公衆に提供することは、刑法第217条に掲げる「情報ネットワークによる公衆送信」に該当すると判断される。
第13条 刑法第217条に掲げる著作権又は著作隣接権を侵害する行為を実施し、不法所得額が3万人民元以上である場合、刑法第217条に掲げる「不法所得額が大きい場合」に該当すると判断され、以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第217条に掲げる「その他の重大な情状」に該当すると判断される。
(1)不法営業額が5万人民元以上である場合。
(2)刑法第217条、第218条に掲げる行為を実施したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、2年以内に再度実施し、不法所得額が2万人民元以上、又は、不法営業額が3万人民元以上である場合。
(3)他人の著作物又は録音・録画物の複製・頒布を行い、複製物の数の合計が500件(枚)以上である場合。
(4)他人の著作物、録音・録画物又は実演を情報ネットワークにより公衆に送信し、数の合計が500件(部)以上、又は、ダウンロード数が1万回以上、又は、クリック数が10万回以上、又は、会員制配信で登録会員数が1000人以上になった場合。
(5)金額又は数が本項第1号~第4号に掲げる基準を満たさなくても、それぞれがそのうちの二以上の基準の半分以上になった場合。
他人が著作権侵害の犯罪を行うことを知りながら、主として技術的手段を回避・破壊するために使用される装置や部品、又は、技術的手段を回避・破壊するための技術的サービスを他人に提供し、不法所得額、不法営業額が前項に掲げる基準を満たした場合も、著作権侵害罪として刑事責任が問われる。
金額、数が本条前2項に掲げるそれぞれの基準の10倍以上になった場合、刑法第217条に掲げる「不法所得額が莫大であるか、又はその他の特に重大な情状がある場合」に該当すると判断される。
第14条 刑法第217条に掲げる侵害複製物であることを知りながらそれを販売し、不法所得額が5万人民元以上である場合、刑法第218条に掲げる「不法所得額が莫大である」場合に該当すると判断され、以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第218条に掲げる「その他の重大な情状」に該当すると判断される。
(1)売上額が10万人民元以上である場合。
(2)刑法第217条、第218条に掲げる行為を実施したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、2年以内に再度実施し、不法所得額が3万人民元以上、又は、売上額が5万人民元以上である場合。
(3)他人の著作物又は録音・録画物の複製物を合計1000件(枚)以上販売した場合。
(4)在庫の侵害複製物の価額又は数が本項前3号に掲げる基準の3倍以上、又は、販売済の侵害複製物の売上額、数が本項前3号の基準を満たさなくても、在庫の侵害複製物の価額、数との合計が本項前3号に掲げる基準の3倍以上になった場合。
第15条 刑法第217条に掲げる著作権侵害の犯罪を行うとともに、当該侵害複製物を販売して犯罪となった場合、刑法第217条の規定に基づき、著作権侵害罪として罪責認定され、処罰される。
刑法第217条に掲げる著作権侵害の犯罪を行うとともに、他人の侵害複製物であることを知りながら、それを販売して犯罪となった場合、数罪として処罰される。
第16条 不法な複製などの方法により営業秘密を取得する場合、刑法第219条第1項第1号に掲げる「窃盗」に該当すると判断される。許可なく、又は許可を超えてコンピュータ情報システム等を用いて営業秘密を取得する場合、刑法第219条第1項第1号に掲げる「電子侵入」に該当すると判断される。
第17条 営業秘密侵害が以下の各号のいずれかに該当する場合、刑法第219条に掲げる「情状が重大な場合」に該当すると判断される。
(1)営業秘密の権利者に30万人民元以上の損害を与えた場合。
(2)営業秘密侵害による不法所得額が30万人民元以上である場合。
(3)刑法第219条、第219条の一に掲げる行為を実施したために刑事処罰又は行政処罰を受けた後、2年以内に再度実施し、損害額又は不法所得額が10万人民元以上である場合。
(4)情状が重大であるその他の場合。
営業秘密侵害が、営業秘密権利者の高度の経営上の困難による破産や廃業に直接つながった場合、又は、その金額が本条前項に掲げるそれぞれの基準の10倍以上になった場合、刑法第219条に掲げる「情状が特に重大な場合」に該当すると判断される。
第18条 本解釈でいう営業秘密侵害の「損害額」は、以下の方法で算定される。
(1)権利者の営業秘密を不正な手段により取得していても、開示、使用又は他人への使用許諾を行っていない場合、損害額は、当該営業秘密の合理的な使用許諾料に基づいて算定することができる。
(2)権利者の営業秘密を不正な手段により取得し後、開示、使用又は他人への使用許諾を行った場合、損害額は、侵害による権利者の利益の損失に基づいて算定することができる。ただし、当該損害額が営業秘密の合理的な使用許諾料よりも低い場合、合理的な使用許諾料に基づいて算定する。
(3)把握した営業秘密を、秘密保持義務又は営業秘密の保持に関する権利者の要請に違反して、開示、使用又は他人への使用許諾を行った場合、損害額は侵害による権利者の利益の損失に基づいて算定することができる。
(4)営業秘密が、不正な手段により取得されたもの、又は、秘密保持義務、営業秘密の保持に関する権利者の要請に違反して開示、使用、使用許諾が行われたものであることを知りながら、その取得、開示、使用又は他人への使用許諾を行った場合、損害額は侵害による権利者の利益の損失に基づいて算定することができる。
(5)営業秘密侵害行為により、営業秘密が公知になったか、又は滅失した場合、損害額は当該営業秘密の商業的価値に基づいて算定することができる。営業秘密の商業的価値は、当該営業秘密の研究開発のコスト、当該営業秘密の実施による収益等に基づいて総合的に判断することができる。
前項第2号~第4号に掲げる侵害による権利者の利益の損失は、侵害による権利者の製品販売数の減少総数と、権利者の製品1件当たりの合理的な利益との乗算に基づいて算定することができる。製品販売数の減少総数が把握できない場合、侵害製品の販売数と、権利者の製品1件当たりの合理的な利益との乗算に基づいて算定することができる。営業秘密がサービス等の他の事業活動に使用されるものである場合、損害額は、侵害による権利者の合理的な利益の減少分に基づいて算定することができる。
営業秘密の権利者が事業運営や事業計画への損害を軽減するために、又は、コンピュータ情報システム等のセキュリティを回復するためにかけた救済費用も、営業秘密の権利者が被った損害に算入するものとする。
第19条 本解釈でいう営業秘密侵害の「不法所得額」とは、営業秘密の開示、他人への使用許諾により得られた財産若しくはその他の財産的利益の価値、又は、営業秘密の使用により得られた利益を指す。当該利益は、侵害製品の販売数と侵害製品1件当たりの合理的な利益との乗算に基づいて算定することができる。
第20条 外国の機関、組織、個人のために営業秘密の窃盗、覗き見、購入、不法提供を行い、本解釈第17条に掲げる事由に該当する場合、刑法第219条の一に掲げる「情状が重大な場合」に該当すると判断される。
第21条 刑事訴訟において、当事者、弁護人、訴訟代理人又は訴外者が、営業秘密又は秘密保持を要するその他の営業情報に関する証拠、資料について、秘密保持措置を取るよう求めた場合、事件の状況に応じて、訴訟参加者に秘密保持誓約書に署名させるなどの必要な秘密保持措置を講じるものとする。
前項の秘密保持措置の要請又は法律法規に定める秘密保持義務に違反した場合、法律に基づいてその責任を負う。刑事訴訟において接触・取得した営業秘密の無断な開示、使用、他人への使用許諾を行って犯罪となった場合、法律に基づいて刑事責任が問われる。
第22条 他人が知的財産権侵害の犯罪を行うことを知りながら、以下の各号のいずれかを行った場合、共同犯罪として判断される。ただし、法律や司法解釈には別段の定めがある場合は除く。
(1)侵害製品の生産・製造のための主原料、補助材料、半製品、包装材料、機械設備、ラベル・ロゴ、製造技術、配合などの支援の提供。
(2)融資、資金、口座、ライセンス、支払い決済などのサービスの提供。
(3)生産施設、営業施設の提供又は運送、倉庫、保管、宅配、郵送などのサービスの提供。
(4)インターネットアクセス、サーバーホスティング、ネットワークストレージ、通信伝送などの技術支援の提供。
(5)知的財産権侵害の犯罪を幇助するその他の行為。
第23条 知的財産権侵害の犯罪を行い、以下の各号のいずれかに該当する場合、通常、状況に応じて重く処罰される。
(1)知的財産権侵害を主な事業として行う場合。
(2)大規模な自然災害、事故、公衆衛生事件の発生時に、災害救援物資、防疫物資などの商品又は役務の登録商標を冒用する場合。
(3)不法所得の引き渡しを拒否する場合。
第24条 知的財産権侵害の犯罪を行い、以下の各号のいずれかに該当する場合、法律に基づいて軽く処罰することができる。
(1)罪責を認め、処罰を受け入れる場合。
(2)権利者の宥恕を得た場合。
(3)権利者の営業秘密を不正な手段により取得した後、開示、使用又は他人への使用許諾を行っていない場合。
犯罪の情状が軽微である場合、法律に基づいて起訴しないか、又は刑事処罰を免除することができる。情節が極めて軽微で影響が少ない場合、犯罪として扱わない。
第25条 知的財産権侵害の犯罪を行った者に対して、犯罪の不法所得額、不法営業額、権利者に与えた損害の額、侵害に係る模倣品の数及び社会的影響等を総合的に考慮し、法律に基づいて罰金を科すものとする。
罰金の額は通常、不法所得額の1倍以上10倍以下で算定する。不法所得額が確認できない場合、罰金額は通常、不法営業額の50%以上1倍以下で算定する。不法所得額及び不法営業額がいずれも確認できない場合、3年以下の有期懲役、拘留又は罰金のみに処する場合、通常、3万人民元以上100万人民元以下で罰金額を算定する。3年以上の有期懲役に処する場合、通常、15万人民元以上500万人民元以下で罰金額を算定する。
第26条 機関・組織が刑法第213条~第219条の一の行為を行った場合、機関・組織に罰金を科すとともに、直接責任を負う管理者及びその他の直接責任者に対して、本解釈に規定する罪責認定及び量刑の基準に基づいて処罰を与える。
第27条 特別な事情がある場合を除き、登録商標冒用商品、不法に製造された登録商標の標章、著作権侵害に係る複製物、主として登録商標冒用商品、登録商標の標章又は侵害複製物の製造に使用される材料及び道具は、法律に基づいて没収され、破棄される。
上記物品が民事、行政事件の証拠として使用される必要がある場合、権利者の申請に基づき、民事、行政事件の終了後、又は、サンプリング、撮影等の方法による証拠固定後に破棄することができる。
第28条 本解釈でいう「不法営業額」とは、行為者が知的財産権侵害行為の実施時に製造・保存・運送・販売した侵害製品の価値を指す。販売された侵害製品の価値は、実際の販売価格で計算される。在庫中の侵害製品の価値は、確認された侵害製品の実際の平均販売価格で計算される。実際の平均販売価格が確認できない場合、侵害製品の表示価格で計算される。実際の販売価格が確認できないか、又は侵害製品に表示価格がない場合、被侵害製品の市場中間価格で計算される。
本解釈でいう「価額」は、前項に掲げる在庫中の知的財産権侵害製品の価値に基づいて判断される。
本解釈でいう「売上額」とは、行為者の知的財産権侵害行為の実施における侵害製品の販売による取得済及び取得予定の不法な収入全体を指す。
本解釈でいう「不法所得額」とは、行為者の知的財産権侵害製品の販売による取得済及び取得予定の不法な収入全体から、原材料、販売された製品の購入費用を引いたものを指し、サービス提供の場合は、そのサービスに使用された製品の購入費用を引いたものを指す。サービス料、会員費や広告料を受け取ることで利益を得た場合、受け取った料金は「不法所得」として判断される。
第29条 知的財産権侵害行為を何回も行っていても、処理されておらず、かつ、法律に基づいて訴追の対象となる場合、罪責認定及び量刑に係る金額、数量等はそれぞれ累積計算される。
製造済で、登録商標冒用標章がまだ付されていないか又は一部しか付されていない製品について、当該製品が他人の登録商標の冒用を予定したものであることを示す証拠がある場合、その価値は不法営業額に算入される。
第30条 裁判所は、法律に基づいて、知的財産権侵害に係る刑事自訴事件を受理する。当事者が客観的な理由により証拠を取得することができず、自訴を提起する際に証拠に関する手がかりを提供でき、裁判所に証拠の取り寄せを申請する場合、裁判所は法律に基づいて証拠を取り寄せるものとする。
第31条 本解釈は2025年4月26日から施行される。
「最高人民法院、最高人民検察院:知的財産権侵害刑事事件の取扱における具体的な法律運用の若干の問題に関する解釈」(法釈〔2004〕19号)、「最高人民法院、最高人民検察院:知的財産権侵害刑事事件の取扱における具体的な法律運用の若干の問題に関する解釈(2)」(法釈〔2007〕6号)、「最高人民法院、最高人民検察院:知的財産権侵害刑事事件の取扱における具体的な法律運用の若干の問題に関する解釈(3)」(法釈〔2020〕10号)及び「最高人民法院、最高人民検察院:著作権侵害刑事事件における録音・録画物に関する問題点への回答」(法釈〔2005〕12号)は、本解釈の施行とともに廃止される。
本解釈の施行後、これまで公布された司法解釈及び規範性文書に本解釈との不一致がある場合は、本解釈に準じるものとする。