(2008年9月8日、最高裁判所の審判委員会第1452回会議で採択)法釈[2008]第13号

 2008年11月3日に公布、 2009年1月1日より実施

 有効な法律文書を法により適時的に執行し、当事者の合法的な権益を守るために、2007年10月改正の『中華人民共和国民事訴訟法(以下、「民事訴訟法」という)』及び裁判所の執行実務に基づき、執行手続における法律の適用に関する若干の問題に対し、以下の通りに解釈する。

 第1条 執行申立人が被執行財産の所在地の裁判所に執行を申し立てる場合、当該裁判所の管轄区に財産執行があることを証明できる証拠を提出しなければならない。

 第2条 2つ以上の裁判所が何れも管轄権を有する事件に対し、裁判所は立件する前に、管轄権を有するその他の裁判所が既に立件したことを知りえた場合は、重複立件をしてはならない。

立件した後、管轄権を有するその他の裁判所が既に立件したことを知りえた場合は、立件を取り消さなければならない。既に、執行措置を取った場合には、執行された財産を先に立件した裁判所に移送しなければならない。

 第3条 裁判所が申立を受理した後、当事者が管轄権につき異議を有する場合には、執行通達書の受領日より10日以内に提出しなければならない。

裁判所は、当事者が申立てた異議に対し、審査を行わなければならない。異議申立が成立する場合には、事件執行を取り消し、且つ当事者に管轄権を有する裁判所に執行を申立てるよう告知すると共に、異議申立が成立しない場合には、却下裁定をする。当事者が裁定を不服とする場合には、上級裁判所に再審を請求することができる。

管轄権の異議申立に対する審査及び再審期間には、執行を停止しない。

 第4条 裁判所が財産保全措置を取る事件に対し、執行申立人が財産保全措置を取る裁判所以外の、管轄権を有するその他の裁判所に執行を申立てた場合、財産保全措置を取る裁判所は、保全する財産を執行裁判所に移送して処理する。

 第5条 執行過程において、当事者又は利害関係者は、執行裁判所の執行行為が法律規定に違反すると認めた場合、「民事訴訟法」第202条の規定に基づき、異議を申立てることができる。

執行裁判所は、執行異議申立を審査、処理する場合、書面による異議申立を受け取った後15日以内に裁定を行なわなければならない。

第6条 当事者又は利害関係者が「民事訴訟法」第202条の規定に基づき再審を請求する場合、書面による形式を取らなければならない。

第7条 当事者又は利害関係者の再審を請求する書面資料は、執行裁判所を通して提出ことができ、直接執行裁判所の上級裁判所に提出することもできる。

執行裁判所は、再審請求を受け取った後5日以内に再審に必要な事件書類を上級裁判所に提出しなければならない。上級裁判所は、再審請求を受け取った後、執行裁判所に5日以内に再審に必要な書類を提出するよう通達しなければならない。

第8条 上級裁判所は、当事者又は利害関係者の再審請求に対し、合議体を構成し、審査を行なわなければならない。

第9条 当事者又は利害関係者が「民事訴訟法」第202条の規定に基づいて再審を申立てた場合、上級裁判所は、再審請求を受け取った日より30日以内に審査を終了し、且つ裁定を下さなければならない。特別な理由により延長する必要がある場合、本裁判所官長の許可を経て延長することができるが、延長期間は30日を越えてはならない。

第10条 執行異議申立の審査及び再審期間には、執行を停止しない。

被執行人又は利害関係者が関連処分措置の停止を請求するために、十分で且つ有効な担保を提供した場合、裁判所は許可することができるが、執行申立人が十分で且つ有効な担保を提出し、引き続き執行を請求する場合には、引き続き執行しなければならない。

第11条 「民事訴訟法」第203条の規定に基づき、下記状況の何れかに当たる場合、上級裁判所は、執行申立人の申立に基づき、執行裁判所に指定期限内の執行、又は執行裁判所の変更を命じなければならない。

(1) 債権者の執行申立時において、被執行人が執行できる財産を有する場合、執行裁判所が執行申立書を受け取った日より六ヶ月を越えても、当該財産に対する執行を完了していない。

(2) 執行過程において、被執行人の執行できる財産を見つけたが、執行裁判所が同財産の発見日より六ヶ月を越えても、同財産に対し執行を完了していない。

(3) 法律文書に定められる行為義務の執行に対し、執行裁判所が執行申立書を受け取った日より六ヶ月を越えても、法による対応執行措置を取っていない。

(4) その他の執行条件を備えるのに、六ヶ月を越えても執行していない。

第12条 上級裁判所が「民事訴訟法」第203条の規定に基づき、執行裁判所に指定期限内での執行を命じる場合、督促執行命令を発し、且つ関連情報を執行申立人に書面による方式で通達しなければならない。

上級裁判所が自ら執行する、又は本管轄区のその他の裁判所に命じて執行する場合、裁定を下し、当事者に送達し、且つ関連裁判所に通達しなければならない。

第13条 上級裁判所が執行裁判所に指定期限内に執行するよう命じる場合、執行裁判所が指定期限内に正当な理由もなく依然として執行を完了しない場合、上級裁判所は自ら裁定を下すか、又は本管轄区のその他裁判所が執行するよう裁定しなければならない。

第14条 「民事訴訟法」の第203条に定められた六ヶ月の期間には、執行中の公告期間、鑑定評価期間、管轄争議処理期間、執行争議調停期間、暫定執行猶予期間及び執行中止期間を算入してはならない。

第15条 非当事者(事件当事者以外の者)が執行標的に対し所有権を主張したり、又は執行標的の譲渡、交付を十分に阻止できる実体権利を有する場合、「民事訴訟法」第204条の規定に基づき、執行裁判所に執行異議を申立てることができる。

第16条 非当事者の異議に対する審査期間において、裁判所は執行標的を処理することができない。

非当事者が裁判所に十分で且つ有効な担保を提供し、異議標的に対する封印、差押、凍結等の解除を請求する場合、裁判所は許可することができる。執行申立人が十分で且つ有効な担保を提供し、引き続き執行を請求する場合、引き続き執行しなければならない。

非当事者が担保を提供して、封印、差押、凍結を解除したことが誤りであって、当該標的を執行できない場合、裁判所は直接担保財産を執行することができる。執行申立人が担保を提供して、引き続き執行を請求することが誤りであって、相手側に損失をもたらした場合、賠償しなければならない。

第17条 非当事者は、民事訴訟法の第204条の規定に基づいて訴訟を提起し、執行標的に対し実体権利を主張し、且つ標的に対し執行停止を請求した場合、執行申立人を被告と見なさなければならず、被執行人が非当事者の執行目標物に対する実体権利の主張に反対する場合、執行申立人及び被執行人を共同被告とする

第18条 非当事者が「民事訴訟法」第204条の規定に基づき、訴訟を提起する場合、執行裁判所が管轄する。

第19条 非当事者が「民事訴訟法」第204条の規定に基づき、訴訟を提起する場合、執行裁判所は訴訟手続きに基づき審理を行う。審理を経て、理由が成立しない場合、その訴訟請求を却下する判決を下すが、理由が成立する場合には、非当事者の訴訟請求に基づき相応する判決を下す。

第20条 非当事者が「民事訴訟法」第204条の規定に基づき、訴訟を提起する場合、訴訟期間には執行を停止しない。

非当事者の訴訟請求が明らかな理由を有し、又は十分で且つ有効な担保を提供して執行停止を請求する場合、執行標的に対する処分を停止することができる。申立人が十分で且つ有効な担保を提供し、引き続き執行を請求する場合、引き続き執行しなければならない。

非当事者が執行停止、封印、差押、凍結を請求したこと、又は執行申立人が引き続き執行を請求したことが誤りであって、非当事者に損失をもたらした場合、賠償しなければならない。

第21条 執行申立人が「民事訴訟法」第204条の規定に基づき、訴訟を提起し、執行標的に対する執行許可を請求する場合、非当事者を被告としなければならない。被執行人が執行申立人の請求に異議がある場合、非当事者及び被執行人を共同被告としなければならない。

第22条 申立人が「民事訴訟法」第204条の規定に基づき訴訟を提起する場合、執行裁判所が管轄する。

第23条 裁判所が「民事訴訟法」第204条の規定に基づき、異議標的の執行を中止した後、申立者が裁定の送達日より15日以内に提訴しない場合、裁判所は既に取った執行措置への解除裁定を下さなければならない。

第24条 執行申立人が「民事訴訟法」第204条の規定に基づき訴訟を提起した場合、執行裁判所は訴訟手続きに基づき審理を行なわなければならない。審理を経て、理由が成立しない場合、その訴訟請求を却下する判決を下すが、理由が成立する場合には、執行申立人の訴訟請求に基づき相応する裁判を下す。

第25条 複数の債権者が同一被執行人に対し執行を申立てたり、又は執行財産に対する分配への参加を申立てた場合、執行裁判所は財産分配方案を作成し、各債権人及び被執行人に送達しなければならない。債権者又は被執行人は分配方案に対し異議を申し立てる場合、当該分配方案の受領日より15日以内に執行裁判所に書面による異議を提出しなければならない。

第26条 債権者又は被執行人が分配方案に対し書面による異議を申立てた場合、執行裁判所は異議を申立てていない債権者又は被執行人に通達しなければならない。

異議を申立てていない債権者、被執行人が通達を受け取った日より15日以内に反対意見を提出しない場合、執行裁判所は異議申立人の意見に基づき、当該分配方案を審査、修正した上で分配する。反対意見を提出した場合、異議申立人に通達しなければならない。異議申立人は、通達の受領日より15日以内に反対意見を提出した債権者、被執行人を被告として、執行裁判所に訴訟を提起することができる。異議申立人が期限を過ぎても訴訟を提起しない場合、執行裁判所は元の分配方案に基づき分配を行う。

訴訟期間において分配した場合、執行裁判所は争議債権金額に相当する金銭を供託しなければならない。

第27条 執行申立の時効期間の最後の六ヶ月以内に不可抗力又は其の他の障碍により請求権を行使できない場合、執行申立時効期間が停止する。時効中止の事由が解消された日より執行申立の時効期間は継続して計算される。

第28条 執行申立時効が執行申立、当事者双方が和解協議に達したこと、当事者の一方が履行要求を提出すること、又は履行義務に同意したことにより中断された場合、中断された時点より執行申立の時効期間が改めて起算される。

第29条 有効な法律文書の規定に基づき、債務者が不作為義務を負う場合、執行申立の時効期間は、債務者が不作為義務に違反した日より起算する。

第30条 執行人が「民事訴訟法」第216条の規定に基づき、直ちに強制執行措置を取った場合、同時に又は強制執行措置を取った日より3日以内に執行通達書を発行しなければならない。

第31条 裁判所が「民事訴訟法」第217条の規定に基づき、被執行人に財産状況に関する報告を命じる場合、財産報告命令を発しなければならない。財産報告命令には、財産報告の範囲、財産報告期間、報告拒否又は虚偽報告による法的結果などを記入しなければならない。

第32条 被執行者は、「民事訴訟法」第217条の規定に基づき、書面により下記の財産状況を報告しなければならない。

(1) 収入、銀行貯金、現金、有価証券

(2) 土地使用権、家屋などの不動産

(3) 交通運輸工具、機械設備、製品、原材料などの動産

(4) 債権、株主の権利、投資権益、基金、知的財産権などの財産化した権利

(5) その他の報告すべき財産

執行通達の受領日の1年前よりその時点までの間に、被執行人の財産状況に変動が発生した場合、変動状況について報告しなければならない。被執行人が財産報告期間に全部の債務を履行した場合、裁判所は報告手続きの終結を裁定しなければならない。

第33条 被執行者が財産状況を報告したあと、その財産状況に変動が生じて、執行申立人の債権履行に影響を与える場合、財産状況の変動日より10日以内に裁判所に補充報告しなければならない。

第34条 被執行人の報告した財産状況に対し、執行申立人が問合せ請求をした場合、裁判所は許可しなければならない。執行申立人は、問い合わせた被執行人の財産状況に対し秘密保持しなければならない。

第35条 被執行人が報告した財産状況に対し、執行裁判所は執行申立人の申立て、又は職権により調査·実証することができる。

第36条 「民事訴訟法」第231条の規定に基づき、被執行人に対し出国を制限する場合、執行申立人が執行裁判所に書面による申請書を提出しなければならない。執行裁判所は必要に応じて職権により決定することができる

第37条 被執行人が法人である場合、その法定代表者、主要責任者又は債務履行に影響を与える直接責任者に対し出国を制限するすることができる。

 被執行人が民事行為能力を有しない人、又は民事行為能力を制限された人である場合、その法定代表者に対し出国を制限することができる。

第38条 出国制限期間において、被執行人が法律文書に定められた全債務を履行した場合、執行裁判所は直ちに出国制限措置を解除しなければならない。被執行人が十分で且つ有効な担保を提供したり、又は執行申立人の同意を得た場合、出国制限措置を解除することができる。

第39条 「民事訴訟法」第231条の規定に基づき、執行裁判所は職権又は執行申立人の申立により、被執行人が法律文書に定められた義務を履行していない情報を新聞、放送、テレビ、インターネットなどのメディアを通して公布することができる。

メディアに公布する費用は、被執行人が負担する。執行申立人はメディアにおける公布を申請する場合、関連費用を立て替えなえればならない。

第40条 本解釈実施前に本院の公布した司法解釈が本解釈と一致しない場合、本解釈を基準とする。

 

配信時間:2008年11月10日

情報ソース:人民法院報より