北京魏啓学法律事務所
 
はじめに
 
中国の経済発展につれて、関連する展示会産業の成長も目覚ましい。「中国コンベンション経済青書」によれば、2011年に中国で開催された展示会は7333回に達し、展示会数は上昇趨勢を見せている。
 
展示会は通常、製品の販売と企業誘致と資金導入、企業イメージの向上、企業の知名度のアップを図るためのルート及び手段として、益々多くの企業に重視されている。
 
展示会が盛んに開催されるにつれて、諸展示会における知的財産権の保護問題が日増しに浮き彫りにされてきている。
 
“中国輸出入商品交易会”(以下「広州交易会」という)を例にすると、ここ数年、数多くの企業が展示会における知的財産権の保護をますます重視するようになったので、知的財産権に係る苦情事件数は減少傾向にあるものの、事件は依然として多数発生している。
 
「広州交易会」における過去の知的財産権苦情事件の中で、特許(発明特許、実用新案、意匠)に係る苦情事件はここ数年圧倒的な多数を占めている。
 
 
 
 
 
2013年に入り、様々なタイプの展示会が開催されている。企業は、積極的に展示会に出展すると同時に、知的財産権の保護に細心の注意を払わなくてはならない。本稿では展示会における知的財産権の保護について、筆者の見解及び提案を紹介する。ご参考になれば幸いである。
 
Ⅰ 展示会と知的財産権との関係
 
企業の展示会におけるさまざまな行為は、知的財産権と緊密な関係を有する。そのため、企業の不注意によって、自社の知的財産権に損害が及ぼされたり、他人の知的財産権を侵害したりすることにもなる。
 
1.公開行為である出展の新規性への影響
 
展示会は通常、企業が本業界・本分野における新技術・新製品を展示する絶好の機会である。多くの企業は、展示会において自社の最新科学技術の成果又は製品を展示することで、大きな宣伝効果を達成することができる。しかし、当該行為は、「諸刃の剣」となることもあり、特許に対するマイナスの影響も鮮明になっている。
 
なぜならば、新製品・新技術について、特許出願前に展示会に出展した場合は、特許出願時に欠かせない新規性に影響を与えることになる可能性があるからである。一旦、新規性が喪失された場合、特許出願の要件を満たさないので、出展製品は特許出願の機会を失ってしまうことになる。
 
「特許法」には特許出願した発明が新規性を喪失しないためのいくつかの公開範囲を規定している。その一つには、「中国政府が主催又は認可した国際展覧会において初めて出展した場合」との規定がある。しかし、実際には、新規性喪失の例外を主張する際には、特許庁の審査基準がより厳しくなる。
 
まず、当該新規性を喪失せずに出展する展示会の級別に対する審査基準は非常に厳しい。中国政府が主催する国際展覧会とは、国務院・各部委員会が主催し、又は国務院の許可によって他の機関又は地方政府が開催する国際展覧会及び中国政府が承認した国際展覧会、国務院・各部委員会の承認を得て海外で開催する展覧会を指す(上記の国際展覧会では主催国の製品を展示するだけでなく、海外からの展示品も出展しなければならない)。上述の展覧会とは異なり政府が主催せず、又は政府の許可を得ていない国際展覧会での展示は、新規性喪失の例外を主張することができない。
 
次に、さらに重要なことは、新規性喪失の例外を主張する場合、展示会の主催者、すなわち、関連政府部門が発行した証明資料を取得しなければならないことである。しかし、政府部門が証明資料を発行する手続きはきわめて繁雑で、通常、展示会の引受側が先に証明資料を発行してから、政府部門に証明資料の発行を請求しなければならない。政府部門が発行する証明資料を取得することは実際には非常に困難である。
 
したがって、「特許法」には、展覧会での公開に関する新規性喪失の例外についての規定はあるものの、実際に取扱う際には、企業が出願日前に展覧会での公開で新規性喪失の例外を主張することは非常に難しいと言える。
 
2. 商業使用と販売の申出行為に該当する製品出展は、関連知的財産権に対する侵害と成り得る
 
通常、展示会では、さまざまな知的財産権侵害事件の問題が絡んでくる。出展企業が係る知的財産権侵害行為には次に挙げるいくつかの類型がある。

類型 表現
(1)商標権侵害 出展企業が展示製品に他人の商標と同一又は類似する商標を使用し、若しくは、他人の商標を偽って使用し、又は商標権帰属が不明である場合は、商標権侵害で訴えられる可能性がある。
(2)特許権侵害 出展企業の展示製品と他人の特許製品とが同一又は類似する場合は、出展過程で同業者に特許侵害で訴えられる可能性がある。
(3)著作権侵害 出展企業が展示会におけるブースデザイン、パンフレット、キャッチフレーズ、製品説明書、写真等及び現場で使用するソフトウェアとバックミュージック等の処理が妥当ではない場合、他人の著作権を侵害する可能性がある。
(4)不正競争 出展企業が展示会で製品機能、用途、技術的特徴等に対する宣伝が実際とかけ離れていたり、あまりに誇大だったりする場合、虚偽宣伝、欺瞞的販売、不正競争行為を構成すると疑われる可能性がある。
 
 
(1)商標権侵害 出展企業が展示製品に他人の商標と同一又は類似する商標を使用し、若しくは、他人の商標を偽って使用し、又は商標権帰属が不明である場合は、商標権侵害で訴えられる可能性がある。
 
(2)特許権侵害 出展企業の展示製品と他人の特許製品とが同一又は類似する場合は、出展過程で同業者に特許侵害で訴えられる可能性がある。
 
(3)著作権侵害 出展企業が展示会におけるブースデザイン、パンフレット、キャッチフレーズ、製品説明書、写真等及び現場で使用するソフトウェアとバックミュージック等の処理が妥当ではない場合、他人の著作権を侵害する可能性がある。
 
(4)不正競争 出展企業が展示会で製品機能、用途、技術的特徴等に対する宣伝が実際とかけ離れていたり、あまりに誇大だったりする場合、虚偽宣伝、欺瞞的販売、不正競争行為を構成すると疑われる可能性がある。
 
それぞれの具体的な説明は次のとおりである。
 
(1)商標権侵害
 
「商標法」、「商標法実施条例」及び「商標民事紛争事件の審理における適用法律の若干の問題に関する最高裁判所の解釈」の規定に基づき、商標登録権者の許諾を得ずに、①同一商品又は類似商品にその登録商標と同一又は類似する商標を使用した場合、②登録商標専用権を侵害した商品を販売した場合、③同一又は類似する商品に他人の登録商標と同一又は類似する標章を商品名称又は商品包装として使用し、関連公衆に容易に誤認をも生じさせる場合、④他人の登録商標と同一又は類似する文字を企業の商号として同一又は類似する商品に際立って使用し、関連公衆に容易に誤認を生じさせる行為は、いずれも商標権侵害の行為に該当する。
 
展示会ではここ数年、直接他人の登録商標を自社製品に使用する侵害事件は、徐々に減少傾向にあるが、隠蔽性の高い商標権侵害事件は増加傾向にある。たとえば、他人の周知商標を商品名称及び包装として使用する等である。一部の企業は商標権侵害サンプルを非公開に展示し、商標権侵害内容を記載した商品マニュアルのみでクライアントと商談していることもある。当該出展企業は、商品の実物をブースに展示していなかったが、商品取引を目的とする特定環境である展示会では、商品マニュアルは、事実上宣伝手段に該当し、かつ、他人の商標に対する「使用」行為に該当する。すなわち、他人の登録商標を商品包装、容器に使用し、若しくは商品取引又は広告宣伝(上記の宣伝用バンフレット)及び営業活動に使用する行為は、いずれも商標権侵害行為に該当する。
 
(2)特許権侵害
 
中国「特許法」第11条には「発明特許権及び実用新案特許権が付与された後、本法に別段の定めがある場合を除き、いかなる機関又は組織又は個人も特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施してはならない。すなわち、生産経営を目的とするその特許製品の製造、使用、販売の申出、販売、輸入、又はその特許方法の使用、及びその特許方法により直接得られた製品の使用、販売の申出、販売、輸入はしてはならない」と規定している。ここに言う販売の申出の権利は通常、特許権者に与えられている。
 
しかも、最高裁判所による「特許紛争案件の審理における適用法律問題に関する若干の規定」の第24条には「特許第11条、第63条にいう販売の申出とは、広告、店舗のショーウインドー内における陳列又は展示会での展示等の方式により商品販売の意思表示を行うことを指す」と規定している。
 
したがって、企業が展示会で製品を展示する行為は販売の申出とみなされるべきである。
 
出展企業が展示会で展示した製品に他人の特許権侵害の疑いが有る場合、出展行為による販売申出は、他人の特許権に対する侵害を構成するおそれがある。
 
(3)著作権侵害
 
中国「著作権法」第46条と47条では各種の民事責任を負わなくてはならない著作権侵害行為の詳細について規定している。
 
展示会における著作権侵害紛争事件が、展示会における知的財産権紛争事件の総数に占める比率は、さほど大きくない。通常、出展企業が展示会でブースデザイン、宣伝パンフレット、キャッチフレーズ、製品説明書、写真等、及び現場で使用するソフトウェアやバックミュージック等の処理が妥当でない場合、他人の著作権を侵害するおそれがある。たとえば、出展企業が宣伝用パンフレットに自社の製品を掲載する際に、著作権者の許諾を得ずに、当該者の図・写真を利用して宣伝活動を行った場合、当該行為は他人の著作物に対する盗用行為に該当し、その著作権に対する侵害行為を構成する。
 
また、一部の特殊業界について、たとえば、玩具の場合、製品そのものが著作権法により保護される著作物であるので、他人のデザインを模倣して創作した玩具を展示会で展示する行為も、著作権侵害を構成するおそれがある。
 
(4)不正競争
 
中国「不正競争禁止法」には、11種類の不正競争行為を規定している。そのうち、知的財産権に係る行為は、第5条に規定されている欺瞞性のある標章を使用して取引に従事する行為、第9条に規定されている虚偽宣伝行為、第10条に規定されている営業秘密侵害行為及び第14条に規定されている商業名誉毀損行為がある。
 
展示会における多くの知的財産権侵害事件は不正競争行為に関連している。たとえば、出展企業の展示会における製品の機能、用途、技術的特徴等の宣伝が、実際とかけ離れていたり、あまりにも誇大であったりする場合、虚偽宣伝行為とみなされ、「不正競争禁止法」第9条に違反するおそれがある。また、出展企業が他人の周知製品の名称、包装、装飾を無断に使用することにより、関連公衆に当該商品の出所に対する誤認をもたらす場合は、「不正競争禁止法」第5条2項に違反する可能性がある。その他、出展企業が展示した情報に他人の営業秘密に対する侵害の疑いがある場合は、「不正競争防止法」第10条に、出展企業が展示会で虚偽の事実を捏造・散布して、競争相手の商業名誉、商品信用を侵害する場合は、「不正競争防止法」第14条に違反するおそれがある。
 
Ⅱ 出展企業の展示会での知的財産権保護における注意点
 
1. 出展前の注意事項
 
(1)新製品に対する早期特許出願
 
これまで述べてきた通り、新製品が展示会で公開された場合は、その新規性を喪失してしまうおそれがある。また、展示会は、通常業界ごとに開催され、参観者はいずれも同業者であるので、それぞれの企業の新技術・新製品はいずれも注目を集め、いかなる新技術・新製品でも同業者に容易に模倣されているのが現状である。製品・技術のイノベーションには莫大なコストと長い研究開発期間を要するのに、極めて簡単に模倣されてしまうことは問題である。仮に企業が特許出願していない新技術又は新製品を展示した場合、他人に至極簡単に模倣されたとしても、出展企業はいかなる権利も主張することができず、出展企業にとっては、大きな打撃となると思われる。したがって、出展企業は、予防措置を講じると同時に、新製品・新技術を積極的に特許出願することで、潜在する侵害事件の発生に未然に対応する必要がある。
 
(2)競争相手の出展情況の調査
 
企業としては、常に業界の発展動向に留意し、特に競争相手の出展製品及び技術等に対して注意を払わなければならない。同業界で相互間の競争が激しい企業にとっては、特に細心の注意を払わなければならない。一旦、相手側の出展情況を把握することができたら、その製品・技術の研究開発動向を知ることができると同時、展示会で知的財産権侵害に遭遇するおそれがあるか否かについても事前に判断することができるので、早期に準備し、適時に対応することができる。
 
(3)製品展示前の関連する知的財産権に対する検索を通して、他人の権利侵害を未然に防止する
 
出展企業にとって、関連措置を取ることにより、自社の知的財産権を保護するだけでなく、他人の知的財産権に対する侵害を未然に防止することも重要である。展示製品は、展示会を参観する多くの企業及び個人の目にさらされる。そのため、少しでも疎かにした場合は、自社製品が他人に権利侵害として訴えられるおそれもある。順調な出展、紛争防止を保証するためには、できるだけ事前の検索作業を行うのが望ましい。
 
展示される「新製品」について特許検索を行い、使用する各種の標章については商標検索を行わなければならない。また、知的財産権製品及び標章については、できるだけ当該製品・標章に係る権利証明書及び関連証明資料を持参するのが望ましい。
 
(4)侵害製品出展に対する対応
 
通常、展示会の開催期間は短いので、展示された侵害製品を発見してから、それに応じた関連行動を取っていては時間的に間に合わない。たとえば、下記のとおり、外国企業が展示された侵害製品について現場で苦情を申し立てる場合、公証・認証を経た主体資格証明書類と授権委任状を提出しなければならない。公証・認証の手続きには、通常2週間以上かかり、侵害製品を発見してから上記の準備を行った場合、展示会はすでに閉幕してしまう。
 
したがって、出展企業、特に常に自社の知的財産権が模倣されている企業は、出展前に必要な準備作業を済ませることをお勧めする。そして、展示会で侵害製品を見つけたら、迅速に行動を取ることができるようにすべきである。具体的な準備資料については下記の内容を参照ください。
 
2.被疑侵害展示製品に対する現場での苦情
 
企業は、展示会で自社の知的財産権侵害製品を発見した場合、「展示会における知的財産権保護弁法」の規定に基づいて、苦情を提出することができる。
 
1)苦情機構
 
「展示会における知的財産権保護弁法」には、「展示会が3日間以上(3日を含む)にわたる場合、若しくは展示会管理部門が必要と認める場合、展示会主催者は、展示期間中に知的財産権の苦情処理機構を設置しなければならない。当該苦情処理機構は、展示会主催者、展示会管理部門、特許・商標・著作権等の知的財産権行政管理部門の人員によって構成される。苦情処理機関機構が設立されていない場合は、展示会開催地にある知的財産権行政管理部門が展示会における知的財産権事件の苦情を直接受理することができる。」と規定されている。
 
展示会における知的財産権の苦情処理機構の主な職責は下記のとおりである。
 
(1)知的財産権利者からの苦情を受け付け、展示会開催期間において知的財産権侵害の疑いがある展示品の出展を暫定的に停止する。
(2)苦情に係る資料を知的財産権行政管理部門に移送する。
(3)苦情の処理を協調、督促する。
(4)展示会の知的財産権の保護に関する情報を統計、分析を行う。
(5)その他の関係事項
 
2)苦情に必要な書類
 
「展示会における知的財産権保護弁法」の規定に基づき、権利者が展示会で苦情処理機構に苦情を申し立てる際には下記の書類を提出しなければならない。
 
①合法的でかつ有効な知的財産権の権利帰属証明
 
特許に係る場合は、特許証書、特許公報、特許権者の身分証明書、特許のステータス状態証明を提出しなければならない。商標に係る場合は、苦情申立者が署名・押印により確認した商標の登録証明文書、商標権者の身分証明書を提出しなければならない。著作権に係る場合は、著作権の権利証明、著作権者の身分証明書を提出しなければならない。
 
②被疑侵害当事者の基本情報
 
展示会の会場で、被疑侵害品を見つけた場合、出展者の身分情報を確認することができる。もし、ある出展者が被疑侵害品を展示する可能性が高いと判断した場合、事前に当該出展者の情報を工商局サイトで調査することができる。
 
③権利侵害が疑われる理由と証拠
 
④代理人に委託して苦情を申立てる場合は、授権委任状を提出しなければならない。
 
上記の書類について、苦情申立人が海外企業の場合、企業の身分証明と授権委任状は、いずれも所在国で公証・認証手続きを経なければならない。
 
3)苦情申立フローチャート
 
苦情申立フローチャートは次のとおりである:
 
 
 
        
 
 
 
①展示会で苦情処理機構を設立した場合、権利者は、展示会で権利侵害製品を発見したら、苦情処理機構に直接苦情を申し立てることができる。苦情処理機構は、苦情申立者が提出した書類の完備性を確認した後、24時間以内に知的財産権行政管理部門に移送しなければならない。知的財産権行政管理部門は、苦情書類を受け取った後、遅滞なく被疑侵害企業に通知しなければならない。通知すると同時に、即時に調査及び証拠収集を行い、事件に係る書類を調査・閲読・複製し、当事者への尋問を行い、撮影・録画等の方式を採用して現場検証を行い、サンプリングによる証拠収集を行うことができる。被疑侵害者は、答弁を行うことができるものの、答弁するか否かは、知的財産権行政管理部門が下す決定には影響を与えない。苦情処理機構は、苦情申立書類を知的財産権行政管理部門に移送する前に、権利侵害が確認できる事件について調停を行うことができるが、調停がうまくいかない場合は知的財産権管理部門に移送する。知的財産権行政管理部門は、調査を経て権利侵害と認めた件について知的財産権事件の類型に応じた処罰決定を下し、権利侵害と認めない件については、終止処理をする。
 
②展示会で苦情処理機構を設立していない場合、権利者は、展示会で被疑侵害製品を発見したとき、直接展示会主催地にある知的財産権行政管理部門に苦情を申し立てることができる。そのフロチャートは①と同様である。
 
4)苦情処理措置
 
知的財産権行政管理部門は、権利侵害を確認した場合は、通常、下記のとおりに処理する。
 
①被疑特許侵害事件について、地方知識産権局は、その権利侵害が成立すると認めた場合、「特許法」第11条第1項における販売申出行為の禁止に関する規定及び「特許法」第57条における権利侵害者の権利侵害行為を直ちに終了させる規定に基づき、被申立人に対して展示会場から権利侵害品を撤収し、侵害製品の宣伝資料を廃棄し、さらに侵害項目を紹介する展示パネルを交換することを命じる処理決定を下さなければならない。
 
②商標権侵害事件について、地方工商行政管理部門は、権利侵害が成立すると認めた場合、「商標法」及び「商標法実施条例」等の関係規定に基づいて処罰しなければならない。
 
③著作権侵害事件について、地方著作権行政管理部門は、権利侵害が成立すると認めた場合、「著作権法」第47条の規定に基づいて処罰し、侵害展示品及び侵害展示品の宣伝資料を没収・廃棄し、展示項目を紹介する展示パネルを交換しなければならない。
 
④展示会で他人の特許を詐称し、若しくは、非特許商品を特許製品と詐称し、非特許方法を特許方法と詐称した事件について、地方知的財産権局は、「特許法」第58条と第59条の規定に基づいて処罰しなければならない。
 
知的財産権行政管理部門は、調査を経て、苦情の申立が成り立たず、被申立人の侵害が成立しないと認めた場合、直ちに関連処理措置を中止しなければならない。たとえば、一部の展示会主催者が被申立企業に対して、調査結果が出る前に、同社ブースにある関連製品をカバーで被ったり又は撤収させたりすること等である。同企業が権利侵害とならない場合は、直ちに正常出展を回復させ、企業の合法的な権益を守らなければならない。
 
3. 出展被疑侵害行為に対する証拠保全
 
展示会で被疑侵害製品を発見した場合、権利者は、現場で当該製品が侵害品であるか否かを確認することができず、若しくは、通常、展示会の期間が短いので、知的財産権侵害行為に対する認定には長い時間を要することを考慮すると、多くの事件は、展示会の期間内に解決することができない。また、一部の権利侵害紛争は、さらに司法ルートを通じて解決する必要がある場合もあるので、権利者は、侵害行為又は侵害製品を発見した場合、遅滞なく証拠保全を行う必要がある。通常、証拠保全は、権利者又は弁護士が公証役場に委託して、各種の展示会で被疑侵害品の製造者又は販売者に対して証拠保全を行っている。
 
展示会という特定の場合において、権利者が証拠保全を行うとき、周到な計画に基づいて行動を取らなければならない。通常、次のステップに基づいて行っている。
 
①被疑侵害者が知らない者に委託して事前に展示会ブースの位置を正確に調査・確認する。
②公証役場への委託手続きの完璧性を確保しなければならない。通常、法律事務所から委託する。
③公証役場の公証人又は公証人員に対して、保全必要事項を詳細に説明しなければならない。公証人の正確な理解を図るために、権利者の製品及び写真、被疑侵害者の製品及び写真を開示するのが望ましい。
④弁護士が公証人と共に被疑侵害者のブースへ赴く。
⑤展示会の入口の写真、本展示会標章の写真、被疑侵害者ブースの写真、被疑侵害製品の写真を撮影する。写真に、被疑侵害者の主要責任者の姿が写っていればなおさらよい。
⑥名刺及びその他の被疑侵害製品又は侵害者の各種情報を明示する資料を入手する。
⑦被疑侵害者が同時に被疑侵害製品を販売している場合は、被疑侵害製品に対して公証購入を行える。
 
証拠保全を行った後、公証役場で上記の資料を封印・保存する前に、同行した弁護士と共に詳細に確認し、かつ、書面リストを作成し、公証書に添付し、若しくは公証書に記載し、バックアップリストと共に封印し、弁護士に渡して適切に保管する。
 
証拠保全を行った後、権利者は、展示会で侵害者に対して苦情を申し立てたり、若しくは、権利者所在地の知的財産権行政管理部門に苦情を申し立てたり又は展示会が閉幕した後、裁判所に提訴したりすることができる。
 
4. その他の証拠保全
 
上記のとおりに、展示会で製品を展示する行為は、公開行為の一種に該当する。特許出願していない新製品は、新規性を喪失するおそれがあり、かつ、展示過程で他人に模倣されるおそれもある。しかも、多くの企業は、展示会で入手したその他の出展企業の新製品・新技術の情報に基づいて特許出願している。理論的に言えば、かかる特許出願には新規性が欠如するので、権利付与されるべきではない。しかし、実際には、特許庁審査員は、通常検索して得た公開出版文献のみに基づいて特許性を判断しているが、かかる検索は関連技術が展示により公開されたか否かを把握することができないので、当該特許出願は権利化される可能性が高い。独自で開発した製品及び技術が他人により特許出願され、権利化された場合、当該特許は今後、開発者が継続的に関連製品を生産・販売する際の障害となる。
 
したがって、弊所は、新製品・新技術を展示する前に是非特許出願することを提案する。仮にさまざまな原因を考慮したうえ、製品の特許出願をしない場合においても、他人による模倣出願を阻止するためには、公証方式を通じて、展示行為に対する証拠保全を行う必要がある。
 
新製品・新技術だけではなく、展示会の公開性及び同時に多くの製品が展示されることに鑑み、公知・公用証拠を保全できる絶好の機会となる。すなわち、展示会で展示されるすべての製品と情報に対して公証を行うことができる。仮に、それ以降で他人に模倣出願されたとしても、すでに保全された証拠は、無効審判手続きにおいて有力な公知・公用証拠としてその役割を果たすことができる。