2020年1月6日、日本当事者株式会社ブリヂストン(以下「ブリヂストン社」という)の受託弁護士は、上海知識産権法院(以下「上海知産法院」という)に赴き、担当裁判官商建剛にペナントと感謝状を贈り、法院が公正に案件を審理したことについて、衷心より感謝の意を表した。

同感謝状では「原告ブリヂストン社と被告華盛公司、宏盛公司との間の意匠権紛争案件において、上海知産法院が法律規定と立法主旨の徹底的な理解及び事実に対する正確な分析に基づき、権利侵害に該当するか否かについて公正でかつ公平な判断を行い、更に損害賠償金額の確定において、科学的な計算方法を採納し、合理的に立証責任を割り当てることにより、権利者の合法的な権益を保護したが、同案件の判決は中国の知的財産権保護に対する決心と効果を体現している。」と記載されている。

原告は有名なタイヤ製造企業として、名称が「自動車タイヤ」という意匠権(以下「本件意匠」という)の権利者であり、意匠番号はZL200830004694.1で、出願日は2008年2月14日で、権利付与公告日は2009年4月29日であるが、同意匠権は2018年2月14日に満期となっている。

2015年、原告は両被告が原告の許諾を得ずに、自社の意匠に類似するIceMax RW501型番タイヤ(以下「被疑侵害製品」という)を製造し、販売していることを見つけた。

そのうち、2016年、原告が公証付で購入した被疑侵害製品のラベルには、被告宏盛公司が製造者で、被告宏盛公司のDOTコード、商標などの情報が印刷されていた。しかも、両被告は自社の公式サイトに被疑侵害製品の宣伝資料を掲載し、かつ展示会に参加し、被疑侵害製品を宣伝することにより、販売の申し出の行為を実施していた。原告は両被告が原告の許諾を得ずに、共同で原告の意匠権に類似する製品に係る製造、販売、販売の申し出の行為を実施した行為が原告の意匠権に対する侵害に該当すると主張し、法院に訴訟を提起し、法院に両被告に対して、原告の経済損失RMB300万元及び原告が両被告の権利侵害行為を調査、制止するために支払った合理的費用RMB30万元を賠償することを命じるよう請求した。
 
被告華盛公司は次のとおり弁解した。

実際に被疑侵害製品を製造、販売したことがなく、被告宏盛公司に授権された範囲内で今後製造予定のタイヤ製品に対する宣伝活動を行っていたに過ぎない。

被告宏盛公司は次のとおり抗弁した。

原告が主張した被疑侵害製品と自社の意匠権との間の共通点は、先行設計であり、決して原告の新設計ではなく、被疑侵害製品は自社の独立的な新設計であり、かつ本件意匠の保護範囲に入らず、原告の本件意匠を侵害していない。
 


 
被告側が帳簿提供の拒否、法院側が賠償額増大の判決

上海知産法院は審理を経て、次のとおり判定した。原告の意匠権の設計特徴は、全体的に登録意匠の独特な設計風格を確定し、当該設計特徴のいずれも被疑侵害の設計にが基本的に具備している。被疑侵害設計と登録意匠との間の幾つか相違点は、製品全体の視覚的効果に実質的な影響を与えない。原告の登録意匠の中の一部の設計要素が被告宏盛公司の提出した先行意匠の中ですでに出現されているものの、意匠権では関連公知意匠を組み合わせることにより新規性を得ることを排斥せず、権利侵害の対比と認定時には、当該元素の組み合わせが公知意匠の中で現れたことを除き、個別的元素が公知意匠の中で出現されていたことを理由に、それを排除することはできない。

本案件において、被疑侵害設計では登録意匠の設計要素の組み合わせを使用しており、かつ被告宏盛公司が登録意匠に採用した公知意匠の組み合わせがすでに先行意匠の中で出現されていることを証明できる証拠を提供していないため、法院は被疑侵害設計と本件意匠が全体の視覚的効果において、実質的な差異がなく、両者が類似意匠に該当し、被疑侵害設計が原告の意匠権の保護範囲に入っていると判定した。本案件の証拠状況によれば、被告華盛公司と被告宏盛公司は、共同に被疑侵害製品に対する製造、販売行為を実施していたのである。

本件意匠はすでに2018年2月14日に期限満了となり、侵害者は法により本件意匠の保護期間における侵害行為について、損害賠償の民事責任を負うべきである。本案件において、権利者が被告の権利侵害により被った実際損失を確定しかねたが、両被告が意匠権侵害に係る帳簿、資料を所有していたのに、法院が第三者機構を集めて、被疑侵害製品を製造、販売した被告の財務帳簿に対する会計検査を行っていたとき、正当な理由なしに会計検査機構に関連帳簿を提供することを拒んでいたので、結局、法院は権利者の主張及び本案件の証拠をまとめた上、両被告に対して原告の経済損失及び合理的費用、計99万元を賠償することを命じた。
 
双方が判決服従、被告が自ら判決履行

一審判決後、双方当事者はいずれも上訴を放棄し、両被告は自ら賠償金の支払い義務を履行した。

本案件の審理過程において、双方当事者は、権利侵害の対比及び両被告が被疑侵害行為を実施したか否かについての争議が比較的多かった。判決が確定された後、被告は判決に服従し、自ら賠償金を支払ったが、その一つは本案件の公正な判決が双方当事者に信服され、もう一つは、当事者が法律・知的財産権を尊重する意識が増強し、知的財産権保護に対する司法信頼度が徐々に高まっていることを表明している。
 
期日 2020年1月14日
出所 陳穎穎 商建剛(上海知識産権法院)
注:本案件において、当所弁護士は、原告ブリヂストン社の訴訟弁護士を担当し、判決が確定され、執行された後、ブリヂストン社の依頼を受け、2020年1月6日付で上海知識産権法院へ赴き、主審裁判官にバナーと感謝状を贈った。上海知識産権法院はウィーチャットの公式アカウントを通じて、本案件を掲載した。